今、「怪しげな役」をやらせたら吉村界人を他にいないのではないかと思うほど、吉村の演技は常軌を逸している。
2024年10月から始まった「全領域異常解決室」、略して「ゼンケツ」で、吉村はまたも「はまり役」の元地下アイドルでを演じている。
この記事では、ゼンケツの怪しい地下アイドル松宮瑠偉(まつみや るい)、そして演者の吉村界人について述べる。
「全領域異常解決室」とは何か?
なんだか漢字が多く並んで難解そうなドラマかと思いきや、「科学では証明できないよね、オカルトでは?」といった事案を解決するための、内閣府直属の列記とした機関である。
もちろん、このような機関が政府に存在するかは知らないが、日本では古来から「陰陽師」が確かに存在して、幕府に直結して、主に病気や怪奇現象に対して祈祷や呪術を用いたり、天文学の知識から暦を作ったりしていたことは有名である。
You Tuberに「リアル陰陽師」を名乗る男がいろいろな場所で依頼を受けて祈ったり呪術をほどこしたりしているが、彼が本物の陰陽師の末裔であるかどうかは定かでない。
ドラマ「ゼンケツ」では、科学的にどうにも解決できない事件を、オカルト的な視点から解決に導くという、かなり変わった分野である。
元地下アイドル松宮瑠偉(まつみや るい)
松宮瑠偉(まつみや るい)は、元男性地下アイドルのグループの一員だったが、現在は解散し、ソロで活動している。それなりに濃いファンがついており、ファンとの交流の中で、複数の女性たちとも深い関係になっている。
だが、松宮には妻(ひより)がいる。ひよりを演じるのは志田未来。ひよりは松宮と他の女性たちの関係に気づいてはいたが、松宮の職業を応援するために黙認していた(という設定)。
松宮のつきあっていた3人の女性たちが、次々と変死する。死体はなく、服と大量の血が残っているだけ。死体はどこへ行ってしまったのか、警察の捜査も頭打ちとなっていたところへ、ゼンケツに捜査協力の依頼が来たというわけだ。
第一発見者の松宮が容疑者として浮かぶが、松宮には確固としたアリバイがあった。さらに、松宮は「ヒルコ」のせいだと言い張る。松宮には何か不気味なものが見えていた。ドラマでは「ヒルコ」の正体は分かっていない。
「オレにはヒルコが見えるんだよ」
吉村に見えるヒルコとは、このようなもの。
果たして、吉村の見ているものは、彼の思いこみなのか。あるいは、本当に不可思議なものが存在するのか。その存在はまだ謎に包まれている。
松宮瑠偉を演じる「吉村界人」
吉村界人(よしむらかいと)は「地面師たち」でホストの「楓(かえで)」を演じている。堂々たるホストぶりで、本当にホストなのかと思うほどの演技力だ。
今回、元地下アイドルという役を演じている吉村界人は、「どことなく不気味」「まともではない」「常軌を逸している」という意味では、ホストと共通している部分がある。
「ゼンケツ」の松宮は、ヒルコをテーマにしてYouTuberとなり、人気を博している。彼がまともにヒルコを信じているのか、あるいはヒルコをネタにして儲けようとしているのか、あるいはそのどちらもか?
吉村界人が演じる松宮は、リアルの世界と空想の世界、あるいはオカルトの世界を行ったり来たりしているようだ。松宮はすでに狂気の世界に住んでいる。吉村が演じることで、観ている私たちも、オカルトなのか現実なのかの判断がつかなくなる。
吉村は、「果たしてこの人物はまともな人なのか、あるいはちょっとおかしい人なのか」のギリギリの線を生きる人物を描くのが天才的にうまい。
吉村が出てくる時点で「ゾクっ」とするのは私だけだろうか。まだまだ続く「ゼンケツ」はこれからも見逃せないドラマとなる。吉村の怪演に期待したい。