シャ乱Qでの活動、モーニング娘。などのプロデュースで、数々の大ヒットを飛ばしてきたつんく♂さん。
今も音楽プロヂューサーとして活動中ですが、「つんく♂さんはなぜ声が出ないの?」とたまに聞かれるので、この記事でお伝えします。
つんく♂さんは下咽頭がんで声帯摘出

喉頭がんは「いんとうがん」と読みます。なかなか聞きなれない言葉ですが、大まかにいうと「喉のあたりにできるがん」です。
大病院では「咽頭科」があり、咽頭がんの患者さんが大勢病室の前で自分の名前が呼ばれるのを待っています。
咽頭がんには「上・中・下」があり、つんくさんは「下咽頭(かいんとう)がん」です。上中下は、がんのできる場所を指し、下咽頭は「のどの一番下」にできるがんで、これが咽頭がんでは一番やっかいです。
声帯や食道に直結するからです。
つんく♂さんの場合、声帯までがんにやられていましたから、声帯をすべて切除するしか選択肢はありませんでした。
子供が泣いて頼んだ声帯摘出
2006年に結婚したつんく♂さんは、プライベートでは1男2女のパパです。
2014年に咽頭がが発覚したとき、子供はまだ幼かったのです。ですが、つんく♂さんは隠すことなく自分の病気のことを、子供たちにわかるように説明しました。
「声を出し続ければ、今のように音楽の生活ができる。声帯を取ると声が出なくなる。だが、声帯を取らなければ死ぬかもしれない」
子供たちは、泣いて「生きてほしい」と訴えました。声が出なくても、お父さんには生きていてほしい。それが切実な彼らの気持ちでした。
声帯摘出を決意したつんく♂さん
つんく♂さん自身も悩んでいました。
彼にとって、声帯を取るということは、シンガーとしての人生が終了するということです。仕事を続けていけるのか。
つんく♂さんにとって、「声を失う」ことは「死んだも同然」だと考えるのも当然だと言えるでしょう。
ですが、子供たちの「生きてほしい」という涙を見たとき、つんく♂さんの気持ちは固まりました。
「手術しよう。手術して、声帯を摘出しよう。声が出なくても、生きていればなんとかなるさ」
かくして、つんく♂さんの声帯はガンとともに摘出されました。がんは取り除かれましたが、声帯も失い、つんく♂さんの声は永久に失われました。
声帯を取るとどうなるか

咽頭がん(特に下咽頭がん)で声帯を含む喉頭を全摘出すると、声を出す機能が失われます。
さらに、首に呼吸のための「永久気管孔」という穴を作ることになります。つんく♂さんがいつも首にスカーフを巻いているのはこのためです。
声帯を取ると、これまでのような会話はできなくなりますが、特別な訓練をして、「食道発声」「シャント発声」などの手法で会話ができます。
ですが、これがなかなか難しく、会話できたとしても非常に違和感があり、スムーズな会話を行うことは相手もあることなので厳しいものがあります。
つんく♂さんも、声帯摘出後はなんとか会話をするように訓練しましたが、今は主に「キーボード」を使って自分の言葉で書き、相手に伝えています。
今はスマホもタブレットもありますし、テキストで書くことは何の造作もありません。さらに、言葉を書いて相手に渡すことで、誤解も生まれず、適格に自分の意志を相手に伝えることができるという素晴らしい側面があります。
新生timeleszのドキュメンタリー動画をNetflixで見ていたら、なんとつんく♂さんが出てきたので驚きました。菊池風磨と寺西拓人が「自分たちの曲を自分たちで作りたい」とつんく♂さんにアドバイスを求めに行ったのです。
そこでもつんく♂さんは、小さなノートパソコンで非常にスムーズな会話を繰り広げていました。見ているほうも全く違和感がありませんし、むしろ感動すら覚えました。
普通に口から会話する菊池風磨よりも、つんく♂さんのほうが言語能力が高いことに驚きます。もはや、口からしゃべれなくてもよいのではないか?とすら思いましたね。言葉に重みがあるのです。
咽頭がん経験者の声

実は、筆者の主人も咽頭がんになりました。2024年の末でした。喉に何かグリグリしたものができ、違和感を覚えて検診を受けたのが始まりでした。
すぐに大病院を紹介され、「中咽頭がん」と診断されました。つんく♂さんの場合は「下咽頭がん」でしたが、主人は「中咽頭がん」で、場所としては舌の奥のあたりになります。
幸い、それからすぐに始まった放射線と抗がん剤の両方の治療でがんはほぼ無くなりました。ですが、がん細胞が肺などに転移する場合もあるので、治療が終わっても5年間は検査を受けなけらばなりません。
芸人のワッキーさんも中咽頭がんにかかり、壮絶な治療経験や予後もSNSで発信されています。彼のインスタグラムをご覧ください。
ワッキーさんはサッカー大好き人間で、Jリーガーにも知り合いが大勢いるほど。「体育会芸能人」として知られ、健康体そのものでした。
そんなワッキーさんも中咽頭がんになるのです。「自分は健康だから」と過信してはいけません。誰でも、咽頭がんになる危険性は潜んでいます。
特に喫煙と飲酒は先生が「絶対にダメ」と言いますね。「酒は百薬の長」なんて全部ウソです、と先生ははっきりおっしゃいました。
主人はお酒は飲みませんが、たばこは若い頃吸っていましたし、「タバコはやめたほうがいい」と家族に言われてからは「パイプ」に変えていましたが、パイプは肺に吸い込まないかわりに、のどで味わうようです。私はそれがいけなかったのではないかと素人ながら考えてしまいますが、今となっては何を言ってもどうしようもありません。
中咽頭がんも恐ろしく、がんが消滅したとしても、のどのあたりにあてた放射線の影響で、患部がひどいやけどを負った状態になります。
その影響で、のどに痛みが残り(だんだん無くなります)、唾液が出なくなります。唾液が出ないのは一生続きます。唾液を出す栓がやられてしまうと、回復の余地はないということ。
唾液が出ないとご飯を水分とともに流し込むしかなくなり、お味噌汁やお茶などと一緒にご飯を食べています。
普段も唾液が出ないと口の中がカラカラになるので、いつもガムを噛んでいます。日本人は「ガムを噛むのは失礼で下品なこと」と思う人が多いので、よく「失礼な人」だと誤解を受けているようです。そのために「実は自分は中咽頭がんの治療で・・・」と延々と説明しなければならない事態になります。
人にはそれぞれの歴史があり、その人の行動には何らかの理由があります。
誰かがいつもスカーフを巻いていても、誰かがいつもガムを噛んでいても、そこには何らかの理由があります。
当事者になって初めて気づくことばかりです。
私も、人のことを簡単に理由付けすることなく、静かに見つめるようになりました。
皆さんも、のどに異常がある、違和感がある、声がかすれる、など少しでも感じたら、一刻も早く近くの耳鼻咽喉科に駆け込んだほうがいいです。
何もなければそれでよしですが、駆け込んでもまだ違和感が収まらないようでしたら、別の耳鼻科に行くことをお勧めします。ダメな耳鼻科もたくさんありますから。

