高校生の妊娠、命との向き合い方という重いテーマのドラマ。回が進むにつれて、ドキドキが止まらない。第4話では妊娠判定薬で陽性まで出てしまった。さて、今回は?
福、一人で差婦人科を受診
福は産婦人科へ行くことを決めた。最初に受付まで行って引き返した、あのクリニックだ。あの時は、親に連絡が行くのではないかと不安になって、どうしても受診することができなかった。
だが、もう迷っている時間はない。行くしかないのだ。
受付で、前回と同じ用紙を渡され、記入するように言われた。受付の女性はとても親切だった。
福は記入を始めた。
職業:高校生
初潮年齢:わかりません
最終月経:わかりません
月経周期:わかりません
月経期間:わかりません
自分のことなのに、自分の身体のことを何も分かっていなかったことに、福は愕然とした。
受診理由:妊娠しているかどうかの確認
妊娠している場合、出産を希望していますか?:出産希望 中絶希望 未定
福は迷ったあげく、「中絶」に〇をつけた。
初めての妊娠検査
名前を呼ばれ、病室に入る福。担当の先生は女性。病院長の野田(板谷由夏)は淡々と検査を進める。事実を事実としてだけ伝える、プロフェッショナルだ。
野田は余計なことは一切言わない。だが、おびえている福の気持ちは、誰よりもよく分かっていた。仕事柄、福のような高校生の突然の妊娠は数多く見てきたからだろう。
妊娠しているかどうかを病院で見極めるのは、今も昔も同じだ。まず、尿検査。これは陽性だ。次に、内診。これは初めてだとかなり恥ずかしいし、不安なものだ。
福は隣の部屋へ案内され、内診を受けた。エコー(超音波)での診断になる。
野田:川上さん、妊娠、してますね。
ほぼ覚悟はしていたが、やっぱりか、と深いため息をつく福。宝、そして母の顔が目の前に浮かんだ。
野田:ご覧になりますか?右にモニターがあります。
福がそっと右側を向くと、何かが写っている。
野田:大きさは、1.7ミリ。
福:あの、この、ピクピクしてるのって?
野田:心臓です。
1.7ミリしかないのに、心臓の鼓動が見えるのだ。
胎芽(たいが)って何?
診察を終えた福は、また野田と向き合って座った。
野田:胎芽の大きさからみると、妊娠5週の後半から6週になります。
福:あの…タイガって?
野田:現段階ではまだ胎児ではなく、胎芽と呼びます。
そうなんですね。それは知りませんでした。まだずいぶん小さいですもんね。
野田は、以前福が来院して途中まで書いた受診表を取りだした。「来てくださってたんですね」
福は、避妊に失敗したこと、彼と調べてアフターピルをもらいに来院したが、親にばれるのが怖くて帰ってしまったことなどを正直に話した。
手術の説明
板谷は、丁寧に福の話を最後まで聞いた。さっそく手術の説明に入った。手術の内容、日帰りで行う、麻酔をするので痛みはない、など。
ただ、手術を行えるのは11週6日まで。福の場合はあと6週間と1日がタイムリミットだ。とは言え、早ければ早いほど母体へのリスクは少ない。
次に、手術費用についての説明があった。13万。
結構するんですね!
野田:手術には、パートナーと、川上さんは未成年ですから、保護者の同意と、サインが必要になります。親に話しづらいようであれば、生理不順などの理由をつけて、親をここへ連れてきてください。私から話します。
先生から保護者へ連絡する?しない?
野田はさらに続けた。
野田:私やクリニックから、川上さんに無断で保護者は学校に連絡するということは、ありませんのでご安心ください。
福:もしかして、アフターピルのときも…?
野田:もちろんです。こちらから連絡することは、絶対にありません。
福は後悔していた。あのとき、親に連絡されるのが怖くて引き返したのだ。あのとき、ちゃんと受診して、アフターピルをもらっておけば…時はすでに遅すぎた。
これも知りませんでした。私も知らないことばかりだということに今気づきました。これはすごいドラマだ…
泣きそうになっている福に、野田は優しく告げた。
野田:川上さん、これだけは覚えておいてください。あなたがどんな選択をしようとも、誰にもあなたを責める権利はありません。
なんという心強い言葉でしょう。こんな言葉をかけてくれる先生がいるとは…すべての産婦人科医にこのドラマを観てほしいです。
あふれ出る涙
福は、アフターピルをもらいに来たとき、親に知らされると思って帰ってしまったことを心か悔いていた。自分を責める福に、野田が言葉を紡ぐ。
野田:あなたが帰ってしまったのは、こちらの責任です。親や学校に知られないということを、もっとHPや受付で周知しておくべきでした。あなたは避妊したが失敗し、アフターピルのことを調べ、来院した。こちらの不備により受診せず、自分で妊娠検査薬を買って検査した。その後、病院に来て妊娠検査をした。あなたのやったことは、完璧です。
野田の優しさにあふれた、しかし的確な言葉は、福の心に深く染み入っていった。福の目から大粒の涙がこぼれた。これまで一人で我慢してきたものが、一気にあふれ出した。優しい言葉とともに。
お寺の境内にて
福は一人、お寺の境内に座っていた。福が昔から好きな場所だ。今日は学校も休んだ。病院に行くということは、宝にも言っていなかった。
スマホには宝からの着信履歴がずらっと並んでいる。
すると、宝がこちらに走ってくるのが見えた。福がいそうな場所を探していたのだと言う。
宝は、福のために飲み物やおやつなどを買い込んでいた。自分には何もできないが、せめて考えられること、できることは何でもする覚悟だった。
宝は、これからのことをシミュレーションしてノートに書きこんでいた。
さすが宝。いろいろ調べてる!頼りになる男だ。
宝の計画ノート
最初のページは妊娠の期間について。妊娠初期の変化や、日数の割り出し方。
次のページはつわりの内容。期間や、つわりの時の生活のコツまで書いてある。
次のページは手術について。初期と中期があるらしい。すべて調べて書き込んである。かかる費用まで調べてある。
費用は多くて20万くらいかかるが、これは自分が払うと言う。今までお年玉などを貯めたものがあるから。
次のページは、「出産」だ。宝は、産む場合も選択肢に入れていた。出産予定日は1月13日。宝、そんなことまでわかるの?
宝:福は高校が県立だから、退学にはならない。2018年に文科省から通達があり、妊娠した生徒に対して、安易に退学などの処置はとらないと決まった。だから、福は安心して学校に通えるし、無理になったら通信制もある。
確かに、そのような通達はあります。
公立の高等学校における妊娠を理由とした退学等に係る実態把握の結果等を踏まえた妊娠した生徒への対応等について(通知)
そう考えると、公立のほうが人権が守られてる感じですね。文科省ってそこまで決めてるんですね。
次のページでは、出産費用についてまとめてある。出産費用は平均で50万かかるが、国からの補助金があり…と、細かいお金の計算まで書いてある。
通院費用についても調べてある。さらに、自分がどれくらい稼ぐことができるかも調べてある。高校生は週40時間までしかバイトできないが、その場合、一か月で…と、福に延々と説明している。
宝の決心
ここまで聞いて、福はハッとしたように宝を見た。
福:宝、部活は?
宝:辞める。
福は大きく首を振った。
宝:だから、福はお金の心配しなくて大丈夫だから。
「福のお父さんとお母さんにも、オレから話す。なんも心配いらない。とにかく明日、一緒に病院行こう」
福は、一枚の写真を見せた。エコー写真だ。
病院に行ったことを知った宝。心臓が動いていたことを福は伝えた。二人は、しがみつくように抱き合って泣いた。
自分たちの命が宿った何とも言えない気持ち。これからのこと。家族や友達のこと。様々な感情がぐちゃぐちゃになって、二人の心をぐるぐる回っていた。
宝のノート、次のページは「親に話す」。
あの子の子ども・第5話の感想
今回は、野田先生(板谷由夏)の、プロフェッショナルでありながら、女性として女性の心に寄り添う暖かな言葉が胸にジンときました。すべての産婦人科医に見習ってもらいたい言葉であり、気持ちです。こんな先生ばかりなら、どれほど女性は心強いことでしょう。
宝も、高校生ながら男性として理想の人間だと思います。別のドラマですが、「海のはじまり」というドラマも並行して放映されています。同じく、女性の妊娠と出産、家族のあり方がテーマですが、ドラマの中で有村架純が妊娠する場面があります。そのときの恋人が本当にクズ男で、金は払うからいいでしょ的な物言いで、最初から産まない前提で話をしていました。
あれを見た女性は全員「この男、どうしてくれよう」と思ったに違いありません。その男は列記とした会社員です。
宝は高校生でありますが、福と適当に付き合っているわけではなく、ちゃんと将来を見越してのつきあいです。思いがけない妊娠ですが、決して逃げることなく(おそらく逃げ腰の男が圧倒的に多い)、自分のできること、自分が果たすべき責任を、しっかりと考え、行動しています。
今回、この記事を書くにあたって、宝のノートは非常に重要な位置づけにあると思ったので、あえて全ページ載せていただきました。
正直な気持ちとして、このノートのコピーと、宝が調べた文科省の通達のページは、すべてコピーを取って日本のすべての高校生に配布してもらいたいほどです。
高校生たちも真剣になって読み、自分のこととして考えることでしょう。いざとなったら、このノートが役に立つに決まっているからです。というか、ここまで丁寧にまとめてある文書なりサイトはないのではないでしょうか。
ドラマとは言え、これらの事を調べた人に頭が下がります。ドラマだけで流れてしまうシーンとしてはあまりにももったいないので、記事の中に記載しました。
困っている高校生の誰かひとりでも、このブログにたどりついてくれたら嬉しいと思います。
私は二人の子どもの母親ですが、そんな私でも知らないことばかりでした。ましてや、高校生ならばすべて知らないと言っても過言ではないでしょう。
あなたの幸せを祈ります。