東京・新宿にある定時制高校が舞台のドラマ「宙わたる教室」。そこにはさまざまな事情を抱えた生徒たちが通っています。
- 負のスパイラルから抜け出せない不良の柳田岳人(小林虎之介)
- 授業についていくことを諦めかけた、フィリピン人の母と日本人の父を持つ越川アンジェラ(ガウ)
- 起立性調節障害を抱え、保健室登校を続ける名取佳純(伊東蒼)
- 青年時代、高校に通えず働くしかなかった長嶺省造(イッセー尾形)
年齢もバックグラウンドもバラバラな彼らの元に、謎めいた理科教師の藤竹(窪田正孝)が赴任してきました。藤竹の導きにより、彼らは教室に「火星のクレーター」を再現する実験で学会発表を目指しますが、自身が抱える障害、家庭内の問題、断ち切れない人間関係など様々な困難が立ちはだかります。
プロローグ:JAXAにて
藤竹叶(窪田正孝)はJAXAに勤めている、大学の同期相澤努(中村 蒼)を訪ねます。相澤は、成績も優秀で准教授という職を得ながら突然アメリカに留学してしまった藤竹の行動が理解できませんでした。
JAXAに来ないか、と問いかける相澤に、「やりたい研究があるんだ」と藤竹は答えます。さて、その研究とは。
東新宿高校の定時制に通うガックン(小林虎之介)
藤竹は、東新宿高校の定時制に教師として赴任します。2年生のクラスを受け持ちますが、生徒は年齢も職業もバラバラです。
中でも、不良代表のような柳田岳人(がくと)はお世辞にも勉強に身が入っているとは言えない状況です。学校には不良友達がバイクを乗り回して暴れまわるし、岳人はよく遅刻もします。出席状況は思わしくありません。
そんな岳人は、数学のテストを返されたとき、計算のテストは満点だが、文章問題は0点です。間違えているわけではなく、問こうとしてもいません。
岳人はディスレクシア障害だった
岳人は小さいころから、文字を読むのが苦手でした。小学校になるとその傾向が露骨に現れ、教科書を音読することがあまりにも苦手で、クラスメイトから笑われる始末でした。
両親も岳人を家庭で教育しますが、「ちゃんとできるはずだ」「もうちょっとがんばれ」と言われ、岳人は落ち込むばかりでした。
そんな岳人は20歳になってから、読み書きをマスターするために定時制高校に入りましたが、1年経っても一向に文字を判読できず、もう学校を辞めようかと思っていました。
なぜ文字が苦手なのかを岳人から聞き出した藤竹は、「おそらく君はディスレクシア障害だ」と告げます。
ディスレクシアとは、文字の読み書きのみが難解な障害です。文字を文字として認識できない特殊な障害ですが、近年わかってきた障害のため、岳人は小さい頃は誰もその障害が分かっていなかったのです。
岳人は、自分の努力やがんばりの不足が原因でなかったと知り、悔しさと共にある種の安堵感があり、号泣します。
小林虎之介の演技力に感服
岳人は不良に至るこれまでの半生を背負って定時制に通っています。小林虎之介は、岳人の半生を自分の半生に照らして、まるでこれが自分の半生であるような演技をします。
小林虎之介のひとつひとつのセリフに、岳人の苦しみと悲しみが生き写しのように私たちの心に刺さります。
今回一番の見どころは、藤竹により自分の読み書きの苦手なことが「ディスレクシア障害」であることを初めて知ったときですね。これまで、読み書きができないのは自分の努力やがんばりが足りなかったからだと思ってきましたし、親や教師からも責められてきましたが、それは間違っていたのです。
それを知ったときの小林虎之介の迫真の演技がこちらの気持ちに直接伝わり、心の中で一緒に泣きました。
現在はディスレクシアの人のために、音声での読み上げもありますし、まわりの理解も以前よりは深まっています。現に、岳人はテストの文章問題は解けなかったのですが、その文章問題を藤竹が読み上げると、いとも簡単に答えを出すことができました。
私にとって、岳人は小林虎之介以外に考えられないほど、岳人役は彼にとっての適役です。
次回からは、自分のディスレクシアという障害に向き合い、適合しながら少しずつ心を開いていくことでしょう。おそらくは、科学部第一号として。