【海のはじまり】「つまらない」「つらい」けど最後まで観る心理:やっぱりすごいドラマ

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2024年7月スタート、目黒蓮主演「海のはじまり」は、初回終了直後から「ホラー」「無理」などのワードがネット上に飛び交っていた。声を出したのは主に女性だ。

回を追うごとに「つまらない」「つらい」などの新しいワードもどんどん生まれ、「海のはじまり」を表す形容詞はネガティブワードで埋め尽くされた。

でも、なぜかやっぱり次の回は観てしまう。そんな不思議な魅力を持つ「海のはじまり」について、「なぜ人は観続けるのか」を解説する。

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目次

「海のはじまり」は、なぜ「ホラー」と言われるのか

海のはじまりの初回終了直後から、SNSには「ホラー」「怖すぎる」などの声が数多く上がった。

海のはじまりは決してホラーではないし、殺人鬼もゾンビも出てこない。なのに、なぜホラーと言われたのか。その理由をまとめると:

  • いないと思っていた自分の子どもが存在した
  • その子供が一人で突然自分のアパートに来た

この二つの理由が「ホラー」と言われる理由だ。確かに、いかにドラマとは言え、この設定は無理すぎるし、実際にこんな事が起こったら、男性からしたら怖いだろうし、女性から見ても不自然なので、「なぜ?」という気持ちで頭がいっぱいになる。

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「つらい」「しんどい」気持ちはなぜ?

ドラマは毎回、つらく、しんどい場面がてんこ盛りである。これでもか、というほど次から次へと問題が起こったり、誰かの厳しいセリフがあったり、そもそも人の死をきっかけにしているドラマ。葬式から始まり、お骨、四十九日、納骨など、葬儀関連のセレモニーが続き、同時に家族の悲しみが胸を打つ。

それを観ているだけでも辛い気持ちになるし、月岡夏(目黒蓮)の恋人弥生(有村架純)が突然の子ども(海)の登場に驚き、悲しみ、振り回される状況を見ているだけで、こちらまで苦しくなる。

これが、単なる恋人同士の別れならば、よくある話で感動する場面も多いだろうが、このドラマは出てくる人がすべて悲しみを抱えているし、表面的には社会生活をうまく行っているが、立ち直れない部分も芯として存在する。

それが分かるからこそ、視聴者は彼らの苦しみを自分のこととしてとらえてしまい、つらい、しんどい気持ちになるのだ。

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誰もが誰かの身になって考えるドラマ

海のはじまりは、不思議なドラマだ。毎回心を揺さぶられるのだが、揺さぶられる部分やセリフが、人によって異なる。

月9(げつく)とは、昔から恋愛ドラマを放映してきた時間帯である。月曜日の9時から。誰が月9と言い出したのか分からないが、なかなか良いネーミングだ。

最近の視聴者は、特にSNSが普及してからはすぐに批判するので、ドラマ制作者もなかなか困難な時期を迎えたなあと思う。

この月9を観ているターゲット層は、おそらく20代、30代、40代の女性を想定しているのだろうが、必ずしも当てはまってはいない。50代から70代までは普通に観ているし、それでも全く問題はないだろう。前年に放映されていた「真夏のシンデレラ」なんか、近所のおばさん、おばあさん連中はみんな観ていて「面白い」と言っていた。(ドラマが地元に近いということもあるだろうが)

いろいろな年代の人が視聴するということは、ドラマの中のどの人物に一番近いかが重要だ。

海のはじまりの場合、7歳の海に近い視聴者はいないと思うが(いたりして!)、弥生や水希の年齢、その親の年齢(朱音)、いずれに近いかによって受け取り方が異なる。

また、子供の有無や病気、親との関係や仕事の状況など、みんなどこか共通している部分を見つけ、ああでもない、こうでもないと考えているはずだ。

このドラマは、「他者」を観ている感覚がなく、「自分」を観ている感覚が大きい。そんなドラマなのだ。

だからこそ、感情が大きく揺さぶられ、辛い、哀しい、しんどい気持ちになり、ドラマ終了後に気持ちを吐き出す場として、SNSを選ぶことになる。

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文句言いながらもなぜ観るの?

このドラマに文句を言っている人は大勢いる。そんなに嫌なら、なぜ観るのかと首をかしげたくなるが、理由は簡単。

「次がどうなるか絶対に知りたい」からだ。

前回では、自分はこういうところが嫌だった、辛かった、そんな気持ちを引きずったまま終わらせることはできない。あれがどうなったのか、結果を知ることによって、自分の気持ちが落ち着くかもしれない。そう、みんな「自分の気持ちの落ち着きどころ」を探っているのだ。

だが、残念ながら次の回でも自分の気持ちは解消されず、さらに複雑な場面が絡みあい、次回へと持ち越される。そして、次回も、さらに次回も…最終回まで持ち越しだ。

みんな、結局このドラマに文句を言いながらも、このドラマが好きなのだ。だが、楽しいから好きなのではないことは明白だから、文句を言っているだけだ。

このドラマに救いはあるのか?あるとしたら最終回に持ち越しだが、どう考えても、みんなすべてがハッピーになることもなく(だってすでに大事な人がひとり死んでいるから)、全員が少しずつ悲しみを分かち合い、海という母を失った女の子のまわりで、海をサポートしながら自分たちもサポートされる、そういう状況になっていくのだろう。

だって、それが本来の生活だから。生きていくとはそういうこと。

不完全な人間の集まりが「海のはじまり」の魅力

たとえば、「真夏のシンデレラ」を挙げると、主人公の女の子は明るくて活発、人のことを悪く言わない、ちょっとドジだけど一生懸命、家族も大好き、友達も大好き、派手な生活は知らない、庶民的な誰からも愛される女の子。

NHKの朝ドラのヒロインもいつもこんな感じだ。

男が主役でも、人物像は似たようなもので、彼の孤軍奮闘ぶりが、笑いや涙を誘う物語だ。

だが、このドラマの主人公月岡夏は、どうも煮え切らない。昔から自分というものを持たず、人に流され、人に合わせる性格。見ていて「しっかりしろ」と声をかけたくなるし、「おい、なんとかしろ!」とも思ってしまう。

そんな夏が主人公なのだから、観ていて心が安定するわけがない。ここが、このドラマの面白いところだ。

「海のはじまり」のテーマはいっぱいあるのだ!

ドラマを制作するにあたって、「テーマ」っていうものがあるのだろうが、このドラマはテーマがいろいろありすぎて、ひとつにはまとまらない。

・避妊・妊娠・中絶・出産:女性にはどれをとっても非常に思いテーマ。

・病気:これは、水希が子宮頸がんで亡くなったことから、病気で死ぬことは誰にでも起こりうるのだとあらためて感じる。

・がん検診:病気に関連するが、検診やワクチンなど、時代的にもタイムリーかもしれない。ただ、検診やワクチンは100%の予防になるわけでもなく、副反応の心配など、いろいろ考える問題がある。

・いきなり子供の親になる:女性にとっても、男性にとっても、いきなり親になることは難しいし、ほぼ無理。

・ステップファーザー・ステップマザー:その子供が自分の子か、相手の子かにより、状況は大きく異なる。現実的に受け入れるのは困難だ。

・子どもが先に亡くなる:まさに水希の両親は、最愛の娘の死を経験し、胸がつぶれそうな毎日を送っている。朱音の発する言葉に厳しさがあるのは、哀しさと愛ゆえである。

あげればまだまだあるが、一概に「このドラマのテーマは、家族の関係にもいろいろある、ということです」なんて簡単なものではない。

だからこそ、海のはじまりは誰にでも受け入れられるし、誰にでも視聴後の感情が長く尾を引く。

ちょっとないだろう、こういうドラマは。このドラマで語ることは山ほどあるので、いくら書いてもキリがないほどだ。

逆に、「ブラックペアン2」のような「謎解き」系のドラマのほうが、書くことがなくて困る。考察や感想は、書いたら終わりなので、登場人物の感情や背景を深掘りするドラマではないからだ。

海のはじまりは、弟の大和のスピンオフドラマが同時並行して放映されている。弟だけでなく、それぞれの人物が主人公になったドラマを観たいと思わせる何かがある。

水希が主人公だったら?弥生が主人公だったら?朱音が主人公だったら?

それぞれ面白いドラマになりそうだ。

海のはじまりは、不思議なドラマ。あなたもどんどん惹きつけられているのでは?

最終回に期待しよう。

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