鳴り物入りで始まりました、ドラマ「新宿野戦病院」。ご多分に漏れず、クドカンドラマは最初のうちは賛否両論別れます。でも、回が進むごとに面白さが倍増し、最後まで見た人は「さすがクドカン」と納得する。今回もそんなドラマになりそうです。
ドラマのW主役のうちの一人、小池栄子の英語についてネットでちょっとした騒ぎ(というほどでもないですが)になっているようなので、今回はこの件について掘り下げます。
小池栄子の英語は別に悪くない
最初に私のことを話しますが、私は以前通訳の仕事をしていたことがあります。英語とフランス語ですが、もうめちゃうちゃ大変な仕事で、もらうお給料が割に合わないのでやめました。
そんなわけで、いろいろな国の人の英語を聞いてきましたが、もうね、全然聞き取れない英語の人なんて珍しくありません。
インド人の英語なんて一番聞き取りにくくて、通訳者泣かせでした。
通訳の訓練では、いろいろな講演や会議の生の英語を録音した教材を使うのですが、マザーテレサの講演で訓練したときはひどかったです。マザーテレサはインド人ではないのですが、若い頃からインドに住んでいたせいでしょうか、インド訛りがひどくて、聞き取るのに大変苦労しました。
言っていることは簡単な単語ばかりなのですが、いかんせん、聞き取れない。この訓練が何週間も続いたので、最後はみんなで嫌気がさして「マザーテレサはこのへんでやめませんか」と先生に直訴しました。
怒られるかと思ったのですが、先生は大笑いして「自分もそう思っていたので、もうやめましょう」と言ってくれたのを覚えています。
話を元に戻します。小池栄子の英語はヘタで聞いていられない、というネットの意見が多いようですが、英語は様々なので、それほど言わなくてもいいのにね、というのが本音です。
不思議なもので、人はその人らしい英語を話します。塚地も英語を話していますが、あの人の英語は、いかにも塚地っぽいなあと思います。柔らかく、どこかぎこちなさはありますが、心地よい響きがあります。塚地の人柄を表しているのでしょう。
小池栄子の英語は、小池栄子っぽいなあと思いながら聞いています。荒っぽく、がさつだけれども、正直で、まっすぐな英語です。不思議なものですね、塚地も小池栄子もネイティブではないのに、あそこまで英語を訓練して自分なりの英語にしたのだと思うと、俳優さんの努力には頭が下がります。
なぜ、小池栄子の英語は嫌がられるのか?
先ほどの話とかぶるかもしれませんが、ドラマでは小池も塚地も英語を話します。なぜ、小池栄子の英語だけあんなに批判されるのでしょうか?塚地の英語は、逆にほめられています。
それは、役に英語の会話をあわせているからです。ご存じのとおり、小池栄子の役柄は荒っぽく、がさつで、男まさりで、ガシガシきます。役柄がああだと、英語もああなります。
だから、ああいう英語は嫌いっていう人は多いのでしょう。もしも、小池栄子がおとなしくて上品なお嬢様の役をやるとしたら(彼女に限ってそういう役は回ってこないと思いますが)、おそらくは英語もおとなしくて上品な英語になるでしょう。
彼女はアメリカ帰りという設定ですから、日本人のように、当たり障りのない、グレーな部分で生きればいいじゃんという発想の人間ではありません。悪いことは悪い、いいことはいい、おかしいと思ったらとことんおかしいと言う、という白黒つける人間です。
もしかしたら、視聴者の側は、まだそういう小池栄子の役柄に慣れていないのかもしれません。ですが、これから彼女のまっすぐな人がらが、多くの人間を巻き込んでいくでしょう。
下の画像を見てください。彼女はいつも、英語も岡山弁もこんな表情でしゃべっています。もちろん演技なのですが、この大げさな演技プラス英語がどうもしっくりとこない視聴者が多いのだと思います。(実は私もそうです。ちょっと苦手かな)
聞き取りにくさの正体
たぶん、ですが、あのドラマは医療系なので、小池栄子の話す英語は医学用語だらけです。医学の英語っていうのは、一般的な会話とは全然違うもので、何しろ専門用語が難しすぎて、たとえアメリカ人の流ちょうな英語だったとしても、聞き取れません。
日本人も、日本語の医学用語を並べられてもチンプンカンプンですよね。英語ならなおさらです。アメリカの医療ドラマを英語で見たことがありますか?私はよく見ますが、本当にわからないですね。医学的な知識が皆無なので、仕方がないでしょう。
小池栄子は、よくあれだけの英語を暗記してますね。マジで感心します。どれだけ大変なのか。俳優さんって大変だなあと、見ていて胸が痛くなるほどです。
「でも、小池栄子の英語はアメリカ人ぽくないよね?」と言う声が聞こえてきそうですが、長い間アメリカに住んでいた日本人が、すべて流ちょうなアメリカンイングリッシュを話すと思ったら大間違いです。その人なりの、日本人ぽい英語を話す人も多いものです。小さい頃から米国に住んでいる日本人は別ですが、おそらくその人は日本語のほうが少しばかり苦手だと思いますよ。
そんな感じで、完璧なバイリンガルっていうのは、今まで一人くらいしか見たことがないです。その人は、アポロ11号の同時通訳者の西山千さんですが、彼はアメリカ生活が長かったので、流れるような英語を話していました。
あ、どんどん脱線してすみません。
やっぱり、日本のドラマは日本語で見たい
では、私はあのドラマをなんの違和感もなく見ているかと言うと、そうではありません。違和感ありまくりです。なぜかというと、日本のドラマは日本語だけで見たいからです。
どうしても、外国語が入ってくるとそこで頭が混乱してくるというか、それまで没頭していたドラマから、一度離れてしまうんですね。言葉の問題ってそういうものです。
小池栄子はアメリカ帰りですが、岡山弁が堪能ではないですか。なら、全部岡山弁でしゃべってくれないかなといつも思っています。そうすれば、すんなりとドラマのストーリーが混乱なくすっと入ってくるのに。
視聴者が「小池栄子の英語が下手すぎて無理」というのは、突き詰めて言えばそういうことなのかもしれません。クドカンさんのせいかもしれないですね。歌舞伎町の多国籍感を表したいのかもしれないですが、別に、オール日本語でもグローバル感はいくらでも出せるのではないでしょうか。
最後は、小池栄子は日本語のみになるのでは?
おそらく、なんですが、小池栄子は今はアメリカの医者の免許しかもっていないので、ヤミ医者として働いていますよね。バレたら大変です。
ですから、第2話でも海外の医者が日本の医師免許を取るには、というカタログのようなものを見ていました。時間はかかると思いますが、小池栄子はいつか日本の医師免許を取ることになるでしょう。そうしたら、さすがに日本語のみで会話するのではないかと思われます。
つまり、英語がだんだんフェイドアウトしていくのではないかな?そんなふうに感じています。
クドカンさんがそこまで英語の会話について突き詰めて考えているかは分かりませんが、小池栄子がこのまま英語のみで突っ走って、突然岡山弁になり、また英語に戻る、という混乱した状態から脱してくれることを切に望みます。
小池栄子の英語について:まとめ
ネット民はヒマなのかなんなのか分かりませんが、小池栄子の英語についてあれこれ言っても仕方がないと思います。あれは役柄っぽい英語だし、世の中いろいろな英語を話す人が山ほどいます。逆に、アメリカの映画やドラマ、アンカー(ニュースキャスター)のようなきれいな英語を話す人は、一般的にまれです。
小池英語が話す英語は医学用語が多いので、聞き取りにくいのは確かです。確かに彼女の発音が分かりにくいので、さらに専門用語の難解さが加わって、見ていてイラつく気持ちはわかります。
だんだんと、日本の医師免許の勉強をするうちに、英語の占める時間が少なくなり、最後は日本語オンリーになるような、そんなシナリオではないかと思いますし、そう願います。
Netflixの「地面師たち」の小池栄子も最高!
このドラマには関係ないですけど、ドラマ「地面師たち」観ましたか?私は、このドラマ見たさにNetflix登録しました。地面師たちで、小池栄子が驚くほどヤバい役をやっています。見ていてヒリヒリしますよ。
私はNetflixの回し者ではありませんが、地面師たちだけ見て、1か月で解約してもいいと思います。一番安いので月額790円。広告つきなので、どれくらい広告がつくのかと思いましたが、ほとんどないですね。地面師たちは7話まであるんですが、最後まで広告は出てきませんでした。
男勝りという点では「新宿野戦病院」の小池栄子と似ていますが、まあ、演じてる役柄が「地面師」のうちの一人なんですよね。
超おススメです、地面師たち。