ついに最終回を迎えてしまった。私の大好きなドラマ「パーセント」。前回の最後、ゲーセンのUFOキャッチャー(今はクレーンゲームって言うんですね)で仲直りした二人。もう一度やる気になったハル。さて、ハルと未来のドラマはどんな仕上がりになっていくのか。
劇団Sのみんなとともに作り上げていくドラマ
未来もハルも、劇団Sのみんながいたからこそドラマを仕上げていけたのだと思います。個性派ぞろいの面々は、私たちを飽きさせず、あきらめない気持ちを教えてくれました。
きれいごとばかりではないこの世の中。とくに障がいを持っているというだけで、計り知れない苦労を抱えているだろう彼らは、自分たちの苦労を笑い話に替える、魔法のような力を持っています。
未来とともに自分も成長できた
最終回(第4回)の最初の場面。第1回で登場した、障がい者の女性に未来が会いに行く場面。
「あのときはすみませんでした。『映らないようにするから』って。デリカシーがなくて、どんなに人を傷つけるのか、自分ではわかっていませんでした。」
映らないようにするから大丈夫ですと、未来が言った状況は下の場面。
この指をね、未来は画面に映らないようにしますね、と言ったのでした。まだ未来がバラエティのADを務めていたときです。
女性は、温かく謝罪を受け止めました。というか、そんなの気にしてなかったんです。
障がい者のことをよく知らなかった未来は、ハルや劇団Sのみんなとドラマを作っていく過程で、自分がいかに無意識に傷つけていたかを知ったのでした。それがこの謝罪につながります。
劇団Sのみんなが、ドラマで本領発揮!
最初はエキストラで十分だと言われていた劇団Sのスタッフでしたが、未来の熱意にほだされた監督がOKし、出番が増えたのでした。
それだけではありません。監督や他のスタッフに知らせずに、アドリブで「ハッピーバースデー!」と歌う劇団員たち。その楽しそうなこと!思わず監督は「OK」を出したのでした。見ている私も顔がほころんできたのは当然です。「やったね!」と心の中で叫んでいました。
監督「いやー、最高だった!今までで一番いい顔してたやんか」
「めっちゃ楽しかった!」と喜んで帰るハルを見送る未来や監督たち。この場面はジーンときました。
未来の憧れの脚本家がドラマに協力
町田龍太郎(岡山天音)が脚本を降りたことから、未来がかねてから憧れていた「学園サンデー」の脚本家、宇佐美のどか(余貴美子)が脚本の続きを書いてくれることになった。
嬉しすぎる未来。嬉しすぎてまわりが見えていない。幸福の絶頂にいる未来。そのことが、周りを少しずつ傷つけていることに気が付かないのでした。
ドラマのスタッフとしていつも未来と働いているスタッフが、龍太郎を訪ねてくる。
「吉澤って無邪気に人をキズつけるでしょ。ドラマが好きだって才能が、まわりを傷つけてることもあるんだって。どっかで自覚してほしいんですけどね。」
ドラマ作りに苦悩する未来:壁を乗り越えられるか?
順調に運んでいたと思っていたドラマ制作ですが、思っていなかったほうへ進んでいくドラマの方向性に、未来は少しずつ違和感を覚えてきます。
龍太郎からの言葉の意味に、未来は気がつくか?
しかし、憧れの宇佐美さんに自分の意見を言うこともできず、いや、このままでよいとさえ思ってしまうのでした。そんなとき、未来は龍太郎に「またドラマの制作に戻ってきて、ちょっと調整してくれたら嬉しいな」と持ち掛けたのでした。
自分を都合よく利用している未来を、龍太郎はあえて突き放します。
「あんま人のこと、便利に使おうとすんなよ。それ、結局、俺のこと利用してるやろ。お前自分が必死やからって、人傷つけてええと思ってんの?」
ついに言った、この言葉。未来が無意識に人をキズつけていることを分からせるのは、自分しかいないと龍太郎は思っていたのだろう。龍太郎の最後の優しさだ。
彼の優しさを、未来は分かるときがくるのだろうか。
自信を無くしていく未来
ネットでも、ドラマに対して心ないコメントを目にする未来は、次第にドラマ作りの自信を無くしていった。撮影に遅刻もするし、現場に入る気にもなれない。
あー、やっぱりこういうの、気にしちゃうんですね。私たち部外者は「そんなこと、気にしなくていいのに。匿名の心ない人たちの言うことなんて、見ないほうがいい。」と思うのですが、当事者はやっぱりキズつくのでしょう。
未来も知らず知らずのうちに人を傷つけていましたが、彼女もまた、SNSに傷つけられていたのでした。
龍太郎から届いたDVD
未来に、龍太郎から一枚のDVDが届いた。それは、龍太郎が未来のために一人で制作した、渾身のドキュメンタリーだった。未来がドラマ作りに苦悩し、成長する姿が描かれていた。
下の画像は、未来に光が見えてきたときの映像。龍太郎からの最後のプレゼントだ。このシーンを思い出すと、心に涙がじわっとあふれ出す。切なくも優しい、愛にあふれたシーンだ。「生きる希望」とでも言うのだろうか。
未来のために脚本を書く龍太郎。短いシーンだが、役者岡山天音の神髄を観た気がした。
ようやくスタジオ入りしたどん底の未来
ボロボロの身体を引きずるように、スタジオ入りした未来。
そんなとき、声をかけてきたのがハルだった。
未来「私、人の気持ちが分からない。ドラマ作るの自信がなくなった。」
ハル「分からないから、ドラマ作るんちゃうの?
またしてもハルに助けられた未来だった。この時点で、気持ちはハルのほうが大人でした。
元気を取り戻した未来は、ハルたちとともにまたドラマ制作に励み、まさに「全員がひとつになった瞬間」にドラマは幕を閉じたのでした。
パーセント:最終回を見終えて
毎週土曜日の10時になるのが楽しみでした。パーセントをワクワクしながら待っていました。
最終回を見終わって、なんだろう、心の中にブワーっと温かいものが満ち溢れてきました。楽しかった。切なかった。苦しかった。何が正解なのか分からなかった。人を傷つけた自分が嫌になった。ドラマを作る怖さを知った。
私も、まるでドラマを制作している一員のように、「中の人」になっていたのです。
今、一区切りついて思うこと。
ドラマのみんなに会えなくなるのが寂しい!また同じメンバーでドラマを作ってほしい!
きっと、未来やハルたちも同じことを思っているのでしょうね。
また会いたいです。私も一緒に成長させてくれて、ありがとう。
最後に: 訃報 福角宣弘さん
ドラマ「パーセント」のプロデゥーサー南野さんの執筆があったので、こちらに抜粋します。
このドラマの放送の少し前に、本作を一緒に作ってくれた大切な仲間である福角宣弘さんが亡くなられました。車いすユーザーのパフォーマーとして、障害のある人達が表現の世界で活躍するための道を切り開いてきた方です。未来が第1回で喫茶店に訪れるシーンで、店主を演じていただきました。「目線の高さを合わせて相手と向き合うこと」の大切さを教えてくださいました。放送をお見せできなかったことが非常に残念ですが、「こんな未来になるといいよね」と話してくださったあの思いが、このドラマの中に残せていたらいいなと感じています。
福角宣弘さんの出演場面は、第一話に「障がい者夫婦で喫茶店を経営している」設定でした。とても面白いおじさんだな、と思っていたのです。
この時未来が「いいですね!今、私も奥様も旦那様も、目線が一緒です。」と言うと、奥さんがふざけて「すぐにチューもできるわね!」と。
すると旦那さんが「照れるやろ!」と一言。それが可愛かったです。
思えば、天国に行かれる直前まで、現役でお仕事をされていたのですね。なかなかそんな人生はないです。「人は生きてきたように死ぬ」と言いますが、お人柄が出る亡くなり方だったのだろうと推察いたします。
最期に、こんな素晴らしいドラマを私たちに届けてくださって、ありがとうございました。私も一生の宝物にします。
ご冥福をお祈りいたします。
ドラマ制作の皆様も、ご苦労様でした。そして、心よりありがとうございました。