2024年10月スタートの「ライオンの隠れ家」は、回を増すごとにゾクゾク感とファミリー感が右肩上がりのドラマ。ドラマに出てくる面白刑事が、なんと同クールの「全領域異常解決室」では政府の重要な役として登場している。
わたしはどちらのドラマも観ているのだが、同じ俳優なのに途中まで気づかなかったのは、柿澤勇人という役者の演技力ゆえだろう。
この記事では、「ライオンの隠れ家」「全領域異常解決室」それぞれの役と、演じる柿澤勇人のすごさについて解説する。
「ライオンの隠れ家」の刑事役
山梨県警の刑事・高田快児役で出演しているのが柿澤勇人(かきざわはやと)。山梨県で起きた「行方不明事件」の捜査を担当している。
最初に登場したときは、抜け目のない優秀な刑事が出てきたなと思いきや、なかなか面白いキャラクターだ。警察署の前で、記者の楓(桜井ユキ)の作戦にまんまとハマり、なぜか顔がニヤけている。
とんでもないハメを外す趣味があることを記者の楓(桜井ユキ)に知られることになる。実は高田刑事は、酒を飲むと半裸になり、どんちゃん騒ぎを繰り広げる癖があった。こんな画像を世間にバラまかれたら刑事として終わるに決まっている。
顔もどアップになっている。なぜか憎めない刑事である。優秀だが、ちょっと(というか、かなり)抜けている刑事である。人に騙されないように気を付けたほうがいいですよ、と忠告してあげたくなる存在だ。
高田刑事は楓に「捜査状況を教えないと、この画像バラすよ」と半ば脅されて、結果的にライオンを救うために活躍することになる。
全領域異常解決室の「内閣府の官僚」の役
オカルトとリアルが密接に絡み合う、かなり珍しい分野に踏み込んだ力作が、ドラマ「全領域異常解決室」だ。
オカルトと聞くと「嘘っぽい」イメージがつきまとうが、このドラマ「全域」では日本古来から民間で「不思議な現象」として知られている「狐憑き」「神隠し」「あやかし」などを丁寧に掘り下げて、リアルの人間が犯した事件と複雑に絡めている。
神道についてもかなり研究されており、ドラマに出てくる「ふしぎな絵」の数々は、実在していて有名な絵ばかりである。
「絶対あり得ない」という人から「そんなこともあるだろう」「いや、きっとある」という人まで感想は様々だろうが、主人公の藤原竜也が「人はすべてを知ろうとするが、そんなことは無理だ」と言い切る言葉に妙に説得力がある。
こちらはフジテレビ毎週水曜日10時からの放送だが、なんと前述の「ライオンの隠れ家」と同クールだ。そのドラマに、時を同じくして柿澤勇人が出演している。
そんなドラマ「全域」では、柿澤は「内閣官房国家安全担当審議官」といういかめしい役柄の官僚を務めている。
この官僚は直毘吉道(なおび よしみち)という名前。全域に登場する人物たちは、「神道」をイメージするような難しい漢字と難しい読み方の名前が多く、一度ではとても覚えられない。この男・直毘という漢字も「なおび」とすぐに読める人はそうそういないだろう。
直毘はいつも真面目で、融通がきかないのが欠点でもある。ジョークも言わなければ、ジョークも通じない。だが、「全決」の仕事に対しては全幅の信頼を置いている。
内閣府から派遣されている「全決」担当なので、予算を取ってくるのも直毘の仕事だ。真面目一直線だが、実に重要な役割を果たしている。
全決のトップである宇喜之民生(うきの たみお)-俳優は小日向文世-を信頼し、影ながら全決を支え続ける。
柿澤勇人という役者について
柿澤 勇人(かきざわ はやと)
生年月日:1987年10月12日)現在37歳(2024年現在)
出身地: 神奈川県
柿澤勇人は少年時代はサッカーに夢中だった。将来はプロのサッカー選手になるのが目標だった。
高校1年の時は、劇団四季ミュージカル「ライオンキング」を観劇した。それがきっかけで、柿澤は劇団四季への入団を決意した。
柿澤は日本伝統芸能の家系で育っている。祖父の清元榮三郎は三味線奏者、曾祖父の清元志寿太夫は浄瑠璃の語り手で、ともに人間国宝だ。
芸の厳しさを知る家族たちは、演劇で食べていくのはサッカー代表になるよりも難しいと考えており、柿澤が劇団を目指すことに猛反対した。
柿澤は「2年間だけ時間が欲しい。結果が出せなければあきらめる」と家族を説得し、その後2007年、倍率100倍以上の難関を突破して劇団四季の研究所に入所した。
劇団四季に入所してデビューしてから3年ほどは、とんとん拍子だったという。もちろん、劇団四季の浅利(慶太)先生によく怒られていたそうだが、「もしかして、自分って天才なのかも?」と思ったこともあったそうだ。
ところが、3年を経た後、「ミュージカル以外のこともやりたい」と思い立ち、2009年に劇団を退所する。
ところが、ドラマなどの映像作品のオーディションを受けても全く受からない。舞台だったらいけるだろうと思っていたら、蜷川幸雄さん演出の舞台『海辺のカフカ』(2012年)でボッコボコにされた(笑)。まさに、この場所です。さいたま芸術劇場で何回泣いたことか。泣きながら一人居残り練習をして、それでも全然ダメで、そこでわかったんです。四季は男の役者がそれほどいないから抜擢されただけ、自分の実力でもなんでもなかったんだ、と。自分よりも才能のある人はいくらでもいるということを蜷川さんに教わりました。
女性自身インタビューより
数々の苦難を乗り越え、現在は数々の舞台やドラマ、映画にひっぱりだこの俳優である。
やはり、演劇の血筋というものはDNAとして確かに柿澤が受け継いでいることが分かる。凛としたたたずまい、品のある顔立ちや姿勢。
なおかつ、ライオンの隠れ家で見せるようなハチャメチャな役もこなせる演技力。
なんでもこなせる俳優として、柿澤勇人はこれからも大いなる活躍を見せてくれることだろう。