2024年7月、Netflixで配信と同時に世間をあっと言わせた驚愕のドラマ「地面師たち」。豪華なキャスティングもさることながら、実際の事件「積水ハウス地面師詐欺事件」を基に描かれたストーリーだからこその、緊迫感と恐怖が観る者を刺激する。
地面師は複数のメンバーで構成されるが、紅一点の稲葉麗子(小池栄子)の役どころは共感できる部分もある。物語の最後、麗子はどうなったのか?がネットで話題になっているが、この記事では「麗子の最後」について解説していきたい。
稲葉麗子とはどういう役割なのか
地面師は、他人の土地を地主になりすまして売り抜ける、不動産の詐欺集団だ。もちろん、実際に土地は売買されないので、買主はただお金をだまし取られて泣きを見るだけだ。
もちろん、本当の地主はまさか自分の土地が架空で売買されていることなど知る由もない。
だが問題は、「土地の持ち主」無しで売買が成立するはずがなく、どこかの誰かが「土地の持ち主」、すなわち「地主」として登場する必要がある。
架空の書類や身分証などは技術の発達により偽造できても、人間だけは偽造することができない。
そこで登場するのが、「地主のなりすまし役」だ。ここが一番リスクをはらんでいるとも言える。
「地面師たち」に登場する稲葉麗子は、なりすまし役をキャスティングする担当の手配師だ。なりすまし役に適しているのは、まず第一に「身寄りがないこと」。さらに、ある程度の社会的対応はできるが、それでいて何かしらの負い目を持ち、目先の金に困っている老人たち。そんな「地面師候補たち」を、麗子は常に数十人ストックしている。
実際の地主に似ているかどうかも大事だ。オーディションを行い、面接テストを繰り返し、想定問答集も用意する。地主の氏名はもちろん、住所、生年月日、干支、土地にまつわる様々な事柄を覚えさせる教育担当でもある。
地面師とハリソン山中の関係
麗子は、地面師の「キャスティング担当」として、大変優秀な仕事をしていた。地主は男性、女性、どちらでもあり得る。この人と決めたら、その人に「なりすまし」をしてもらうよう、話を持ち掛ける必要もある。彼女にとってもリスクの高い仕事だ。
地面師はそれぞれ専門を持ち、誰一人欠けても不動産詐欺を行うのは困難だ。地面師詐欺は、非常に高度なプロの詐欺集団である。
それらを束ねるのが、ハリソン山中(豊川悦治)だ。ハリソンは自分で手を下すことはしない。一切表に出ることはない。計画を立て、シナリオを書き、シナリオどおりに詐欺を働かせる。動くのは地面師となりすまし役だけだ。
ハリソンにとって、地面師は仲間ではなかった。ただの「捨て駒」だ。利用できるときは利用し、いらなくなったら切る。別の人材はまた見つければよい、そういう冷酷な男だ。
ドラマでも、地面師たちはつるむことなく、仕事を終えたらそれぞれバラバラに帰るし、お互いのプライベートも一切話さない。
麗子は最後どうなったか
ネットでは、麗子は最後にどうなったのか?という話で持ち切りである。というのも、麗子の最後の場面は、謎を持って終わるからである。
上の場面が、麗子が登場した最終のシーンである。麗子が夜道を一人で歩いていると、木陰から男が二人現れ、麗子の後を追う。ドラマではここまでしか放映されていない。
ちなみに、原作でも麗子の最後は詳細に描かれていない。
だが、麗子と後藤(ピエール瀧)が地面師の仕事から手を引きたがっていることは、ハリソンには伝わっている。
麗子は、おそらくこの二人の男に葬られているだろう。もちろん、ハリソンの命令で。残念ながら、あれほど仕事のできた稲葉麗子は、もうこの世に存在していないと思われる。
これ以上はさらにネタバレになるので書くことはやめておく。だが、ハリソンは地面師を仲間として見ていないことだけは確かだ。
一度でも悪の世界に身を寄せると、そこから抜け出すのは難しい。入るのはたやすく、出るのは至難の業だ。
まだ、暴力団のほうが「暴対法」で守られているからマシと言えるだろう。組から抜けるには「破門」もあるし、「脱退届」も存在する。また、脱退する場合は国(警察)や弁護士に相談することもできるし、相談窓口も設けられている。大したものだ。
まかり間違って、麗子が「地面師たち」の次回作に出てきたとしたら、それはそれで大歓迎だ。