7月25日に配信がスタートしたNetflixのドラマ『地面師たち』が大きな話題となっています。配信開始以来、国内の人気番組ランキングで首位を独走しており、世界ランキングでもトップ3に入る快挙を達成しています。
見事に騙される側に回った石洋ハウスの部長青柳。演者は山本耕史さん。青柳のモデルは実在するのでしょうか。この記事では、青柳部長 のモデルは実在したのか、その後どうなったのかを深掘りします。
この記事は、週刊現代8月24日、30日号の記事を基に筆者の意見もまじえて記載しています。
前代未聞の「積水ハウス」地面師詐欺事件
このドラマのモデルとなったのは、2017年に実際に発生した「積水ハウス地面師詐欺事件」です。住宅メーカー大手の積水ハウスが、品川区西五反田にある旅館「海喜館(うみきかん)」の土地約600坪の購入代金、約55億円をだまし取られたという、前例のない実際の詐欺事件となります。
筆者も当時このニュースをしって、大変驚きました。新聞を隅から隅まで読み、なぜ積水が騙されてしまったのか、全容を知ろうとしました。不可解なことばかりだったからです。
この旅館「海喜館」はかねてから大手デベロッパーが目を付けていた案件でした。JR山手線の五反田駅から歩いて3分ほどの好物件です。これまでにも怪しい人物がデベロッパーへ売買を持ち掛けていましたが、本人確認がネックになって、誰も手をつけていない物件でした。
しかしながら、なぜかまんまと騙されてしまったのが積水ハウスです。ドラマでは石洋ハウスとなっていますね。地面師グループは、偽の地主役の女性と、偽造された彼女の身分証を用意し、正規の所有者による取引に見せかけて積水ハウスを欺きました。
青柳のモデルとなったのは、積水ハウスのM氏
劇中では住宅メーカー「石洋ハウス」の開発事業部長・青柳隆史(山本耕史)が、地面師たちに手玉に取られます。絶頂から地獄に落とされた男、青柳のリアルを見事に描いていたと言えましょう。
ドラマで地面師に一杯食わされた部長、青柳のモデルは実在します。積水ハウス側の責任者だったマンション事業本部長・常務執行役員のM氏(肩書は当時のもの)です。
M氏は自ら命を絶ったとされていますが、本当のところは分かりません。おそらく、今後も公にはならないでしょう。
積水ハウスの内紛が原因だった
ドラマでは、社長派と会長派が対立しており、社長派についていたのが青柳です。会長は海外の事業案件を手掛けており、国内の案件は社長に一任していました。
実際の積水ハウスも同じです。つまり、「地面師たち」は積水ハウスの内紛を、かなりリアルに描いていたということになります。
ドラマでは、稟議(りんぎ)を通すために社長が自ら現地を視察しますが、実際でも同じことが行われていました。
積水の社長が自ら現地を訪れ、誰よりも先にハンコを押します。社長のハンコが押されている稟議書が回ってきたら、部下は押さないわけにはいきません。つまり「社長案件」ということになります。
実際の稟議書はこのようなものです。手っ取り早く言うと、「お偉方が次々とハンコを押していく紙」です。
上の稟議書には、社長が視察済みというメモが書いてあり、社長のハンコはまだ押されていません。ですが、実際の積水ハウスでは、すでに社長のハンコが押されていたという驚きの事実があります。
いったい積水ハウスという会社はどうなってるんでしょう
詐欺事件発覚後、社長は解任されたか
積水ハウスが地面師詐欺にあったことが発覚すると、社内は蜂の子をつついたような大騒ぎとなります。
通常ですと、地面師の手中に見事にハマった社長は取締役会で解任される、という運びになりますが、実際は「社長が会長を解任」する案が可決されました。
全く、事実は小説より奇なりとはこのことですね。
会社に正義はあるのでしょうか。結局は、取締役を何人手なずけるかがカギとなります。取締役も、会社のためというよりは、自分の身の可愛さのために決断していると言っても過言ではないでしょう。
トップの失敗を部下がかぶることに
会社の不祥事は、何かにつけ世間を騒がせます。多くの場合、トップがやっている、あるいはトップが黙認していることが多いですね。
結果として、トップは辞任しても「顧問」などに収まり、部下が世間からバッシングをされる最前線に立たされるのはいつものことです。
末端で働く人間は、トップの迷惑を全身で受けなければなりません。この図式は今後も変わることはないでしょう。
知りたいのは、積水ハウスの現在はどうなのか、ということです。この事件を自ら反省して、お客様のために生まれ変わってくれていることを願うばかりです。(あまり期待はできないですが)