「紙の月」光太役の池松壮亮が宮沢りえとの「愛と金」におぼれる大学生を好演

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2024年7月スタートの、いわゆる月9ドラマ「海のはじまり」。ドラマで名演技を放っているのが「津野君」こと池松壮亮(いけまつそうすけ)。

先日、ネットのとあるエンタメ系サイトで、「今期ドラマの演技トップ10」の一位に「池松壮亮」の名前が輝いていた。そうだろうと思ったし、心から納得した。ドラマの良しあしは、往々にして「名脇役」で決まるからだ。

この記事では、海のはじまりで池松壮亮の演技に感動した人に、ぜひ観ていただきたい映画「紙の月」を紹介する。もう観た人は、「うんうん」とうなずきながら読んでいただければ幸いだ。

映画『紙の月』は、角田光代の同名小説を原作とした作品で、銀行で契約社員として働く平凡な主婦・梅澤梨花の人生が、次第に大きな転落を迎えていく様子を描いている。

主役の梨花(宮沢りえ)の相手役、大学生の光太に抜擢されたのが池松壮亮。若手の演技派として知られる池松が、ベテラン女優の宮沢りえと迫真の演技を見せる。

この映画から「池松壮亮」ファンになった人も多い。この記事では、普通の大学生だった光太がいかに変貌していったか、そして光太を演じた池松壮亮について解説する。

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目次

映画「紙の月」あらすじ

物語は、梅澤梨花(宮沢りえ)が日々の単調な生活に閉塞感を抱いていることから始まる。夫(田辺誠一)とは冷え切った関係であり、家計を支えるために銀行で働くが、仕事もまた機械的で刺激のないものだった。そんな中、梨花は担当している顧客の一人である大学生・光太と出会う。彼との偶然の接触が、梨花にとって日常の「非日常」を提供するものであり、彼との不倫関係が始まる。

次第に、梨花は光太との関係にのめり込んでいき、彼に貢ぐために銀行の顧客の預金に手を出してしまう。最初は小さな額だったが、そのうち大胆に顧客の資産を横領するようになる。梨花は次々と顧客の口座からお金を引き出し、高級ホテルに泊まったり、贅沢な買い物をしたりすることで、現実から逃避しようとする。

梨花は罪悪感と快楽のはざまで揺れ動きながらも、次第に罪に対する感覚が麻痺していく。そして、その行動は周囲に少しずつ怪しまれるようになり、同僚や顧客からの不信感が募っていく。最終的に、銀行の内部調査が入り、梨花の不正が発覚する。すべてを失った梨花は、逮捕され、社会的な転落を迎えることになる。

『紙の月』は、梨花が心の空虚を埋めるために踏み出した一歩が、取り返しのつかない悲劇へと変わっていく様子を描く。梨花の心理描写を通じて、現代社会の中での孤独や、人間が欲望に引きずられていく脆さを映し出す作品である。

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梨花の相手「光太」とはどのような人物か

光太は現役の大学生。祖父の家にいたときに、銀行の外回りの営業としてきていた梨花を見かける。祖父がいやらしい目つきで梨花を見ていたのを知って、「大丈夫ですか」と声をかけたのが初めての出会いだ。

その後、梨花が銀行から帰るとき、いつもの駅で偶然光太と出会う。お互いのことを何も知らない同士だったが、光太は梨花の女性的な魅力に惹かれ、梨花もつい、女性としての自分を感じてしまう。旦那(田辺誠二)の無神経な態度にほとほと嫌気がさしていたのも理由だろう。

ホテルに直行するという、かなり慣れた感じの大学生という感じ。大学生の光太は、まわりの女子大生と梨花を比べ、大人の女性としての魅力(しかも人妻)がプンプンしている梨花に夢中になってしまう。梨花も同じく。

150万の借金

光太には借金があった。150万ほどだ。学費が払えなくて、サラ金まがいのところから借りている。裕福な祖父は貸してくれないし、奨学金も条件が合わなくて無理だった。

今大学3年の光太は、もう大学を辞めると言い出す。借金も返せないのに、あと1年分の学費を払うなんて無理だ。バイトばっかりで就職活動もできないし、卒業してもしなくても同じだと、投げやりな言い方だ。

梨花は、お金ならなんとかするから、大学は辞めるなと説き伏せる。

梨花には、光太に貸せるお金は60万くらいしかなかった。だが、光太の祖父(平林)から預かってきた定期預金の200万を、「キャンセル」されたと銀行に偽って、その金を着服することにした。

光太の祖父のお金を、孫の学費のために使うのだから、という名目も梨花なりにあったのだろう。これが、梨花の詐欺の始まりである。

梨花は金を光太に渡し、これで借金を返すように言った。光太の祖父から預かった(というか着服した)200万円そっくりそのままだ。

光太はこのとき、これが梨花の金ではなく、梨花の旦那の金だと知っていた。それは嫌だと光太は思った。光太は金を受け取らないと言った。この金を受け取ったら、自分と梨花の関係が変わってしまうのではないかと不安にも思った。

「私たちの関係は変わらない」と梨花は言い切った。光太は金を受け取った。

「この金はあげるんじゃない、少しずつ返してくれればいいから、利子無しで」

この時の光太は、金を受け取ることの罪悪感や拒否感、そして梨花に負い目を感じてしまうのではないかという漠然とした気持ちを持っていた。

この時抱いた「初めての不安」が、だんだん光太の中から消えていくのである。

「ありがとう」

ここから、光太と梨花の「偽りの幸せ」が始まることになる。

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フランス料理

梨花と光太が食事をする店は、居酒屋からフランス料理に変わっていた。

光太は、梨花から借りたお金を少しずつ返すようにしていた。「5万円也」という封筒を見て、梨花は嬉しかった。

光太は、時計もプレゼントされた。大学生には似合わない高価な時計だった。

光太が梨花に、5万円の返金分を差し出すと、梨花は「これ、あなたのサークルがやってる震災募金に寄付しといて」と言う。光太はあっさりと受け取る。

このあたりから、光太も梨花も、金銭感覚がなくなっていく。光太の罪悪感、梨花に申し訳ない気持ちもだんだん消えていくようだ。

ホテルのスイートルーム

ホテルのロビーで待ち合わせ。光太のファッションもどんどん高価になっている。もちろん、梨花が買ってあげたものだろう。

ホテルのスイートルームに泊まる二人。人生一度はやってみたい、スイートルーム体験。

このホテルは高台にあり、見晴らしもよい。カーテンを開ける二人。

今日からこのスイートルームに3泊する。3泊だ。なんというゼイタク。

二人はルームサービスで飲んだり食べたり。ホテル内の店舗で高級時計を物色したり。

筆者の意見

また時計ですか?時計好きなんですね。でもいくらだろう…私は時計に興味がないので値段のことはさっぱりわかりません。もちろん、スイートルームに泊まったこともありません。

二人で洋服も山ほど買った。

高級ワインに舌づつみを打つ。

チェックアウト時の請求額に、目を疑う梨花。3泊で146万5360円なり。(驚)快楽の報酬ということですね。

大丈夫?と光太。

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車購入?そしてマンション

梨花が運転するBMWに乗っている光太。行先は海辺のマンションだ。

梨花が光太のために借りてあげたマンション。

「あれ?結局大きいほうにしたんだ」と光太。「うーん、でも結局入りきらなくて」と梨花。

何のことかと思ったら、ワインクーラーだ。完全に金銭感覚がマヒしている。

梨花「買い物行ってなんか作ろうか?」

光太「あー、それ言われてみたかった。やっぱ肉じゃがでしょ」

梨花「ルームサービスにはなかったもんね」

光太「ゼイタクするのもいいけどさ、なんかこれくらいのほうが、やっぱ落ち着くよね」

筆者の意見

「これくらいのほうが」って、何言ってんの光太。このマンション、ずいぶんゼイタクだと思うけど。

注文しておいたパソコンも届いた。「これで大学のレポートとか、書けるでしょ?」

海岸のテラスにて重大な告白

「ちょっと話したいことあってさ」と、海の見えるテラスでお茶をしながら、光太は梨花に語りはじめた。

光太はそばにいたホテルの従業員に、「すいません、これちょっとずらしてくれる?」とパラソルを指刺して言った。

横柄な言い方だ。完全に上からモノを言っている。金を使っている客なんだと言わんばかりに。

「怒らないで聞いてくれる?大学辞めたんだよね。何度も相談しようと思ったんだけどさ。ちょうどよかったよ、梨花さんがパソコン買ってくれて。ホームページ制作の勉強しようと思ってさ。先輩が会社やってて、かなり儲かるんだって。オレもいずれ紹介してもらうつもり。この後、どっか行く?」

毎月の返済

光太は毎月梨花に5万円返済していたが、その額も少なくなっていった。

「今月、これで。先輩全然仕事まわしてくれなくってさ」

二人の関係が、少しずつ壊れていくのがお互いに分かっていた。この後、二人は別れることになる。

光太を演じた池松壮亮

「紙の月」は女子行員の詐欺犯罪を描いた映画だが、光太という存在が梨花の犯罪を増長したのは言うまでもない。

そして、光太の金銭感覚もどんどん麻痺していき、大学を辞めるという暴挙に出る。光太自身も何をしたらよいのか分からず、目標も見えない。ただただ、人妻との愛におぼれ、さらにお金を湯水のように使うことに慣れていく。人に対しても横暴になり、謙虚さが無くなっていく。

お金の恐ろしさを見事に描いたストーリーだが、光太を演じる池松の演技力に胸を打たれる。

このとき池松は24歳。ほぼ同年齢の光太を演じた池松は、梨花の登場によってどんどん自分という人間が悪いほうに変わっていくのを感じていたことだろう。

特に、海辺のテラスで従業員に「これ、ずらして」と言ったシーン。衝撃的なシーンだ。

日が差すのが嫌で、従業員にパラソルを移動させる光太。自分の座る場所を変えればよいだけなのに。それすら面倒になっている光太。大学を辞めた光太(しかもかなり前に)。

このシーンだけで、光太という人間が「ここまで堕ちてしまった」ことを如実に物語っている。

地味で小さな場面だが、「もうだめだな」と観ている者を落胆させる演技力が、池松にはある。

「海のはじまり」でも、小さな場面、ほんのひと言で、それまでの状況をガラっと変えることのできる俳優は、なかなかいないものだ。

最初は梨花からお金を借りることを拒否していた大学生が、最後は人のお金でゼイタクすることに何のためらいもなくなっている。

どこにでもないようで、どこかにはある、そんな話だ。

「紙の月」を見て池松壮亮のファンになった人は少なくないだろう。私もその一人だ。

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