天城が倒れ、緊急手術になった。天城を助けられるのはダイレクトアナストモーシスしかない。だが、その手術をできるのは天城だけ。どうする?
その時、なんと渡海が手術室に入ってきた。渡海は天城を助けるために来たのか?
渡海が天城を助けるのか
佐伯「渡海、お前はダイレクトアナストモーシスができるか?」
渡海「できませんよ。あんな、ギャンブルみたいな手術」
そのとき、エルカノ・ダーウィンが入ってきた。上杉会長の計らいで、実験用のエルカノ・ダーウィンの使用を許可してもらったのだ。
渡海「ダイレクトアナストモーシスなら、エルカノ・ダーウィンにサポートしてもらってやればいいだろ」
佐伯がダイレクトアナストモーシス。
渡海が佐伯式。両方の手術が同時に行われる。
渡海と世良のコンビは相変わらず良好だ。すごい速さで手術を行っている。スムーズだ。
固唾をのんで見守る高階たち。「始まった。」
警告音がなっている。血圧低下。心配停止。しかし、渡海はあわてない。
佐伯のほうは、ダイレクトアナストモーシスが完了した。
相変わらず心停止は続いている。
「戻ってこい、天城!天城!」佐伯教授が心臓マッサージを続けながら叫ぶ。
心臓が、動き始めた。拍動再開。天城の脈が戻った。
佐伯教授が涙を浮かべる。「よかった」
手術室が歓喜の輪に包まれた。
世良「ありがとうございました」
渡海「別に、お前を助けたわけじゃないよ」
世良「6年間 頑張ってきました。何か言ってください」
渡海「お前、1円も振り込まないからもう辞めたのかと思ってたよ」
そう言い残して、あっさりと渡海は出ていった。
相変わらずだな、そう思いながら、世良は笑った。
え?渡海先生せっかく出てきたのに、もう帰っちゃったの?
天城、目を覚ます
渡海「どうして僕はここに?」
世良「佐伯教授がエルカノ・ダーウィンでオペをされて、その後渡海先生が来てくださいました」
天城「そっか」
世良「それと、これ…渡海先生から預かりました」そう言って、世良は渡海のそばに青いミニカーを置いた。
世良「その、なんて言ったらいいか…」
天城「ジュノが何を知ろうと、僕たちの関係は変わらない。そうだろ?これからも素直な中堅として主人に尽くしてくれ」
世良「僕は犬じゃないですよ」と言いながら、笑いがこみあげてきた。
天城「パティスリー『ルブラン』のカヌレを買ってきてくれ」
世良「ホントに無事でよかったです」
世良は笑いながら、そしてホッとして病室を出た。
世良「じゃあ、買ってきます」
天城は青いミニカーを見ていた。
渡海は弟、天城は兄。天城は小さい頃のことを思い出していた。
「ずっと一緒にいようね、征四郎」「ずっと一緒にいようね、お兄ちゃん」
ふと気が付いて、天城はロッカーに隠しておいた紙を探し始めた。その紙は、天城が実家で見つけた、父が残したカルテだった。患者は「徳永栄一」術者は「天城司」。
だが、その紙は無くなっていた。佐伯が持ち去ったのだった。
一方、高階は先ほどのオペの録画画像を真剣に観ていた。そこへ藤原看護師長がやってきた。
「実は私も。ちょっと気になることがあって。検査室で、これを」
佐伯のカルテだった。
佐伯と天城
天城「ムッシュ、目の具合はどうですか?」天城は病室を訪れた佐伯に尋ねた。
佐伯「やはり気づいていたか」
天城「さすがです、そんな目でオペをするなんて。弟が来ていたそうですね。ありがとうございます。この御恩は必ずお返しします」
佐伯「実は、やってもらいたいことがある。国際心臓外科学会の公開オペだ。いよいよ、新病院の人事が本格的に始動する。公開オペが成功すれば、優秀な人材を各国から確保できる。頼んだぞ」
渡海一郎への懺悔?
天城は佐伯に尋ねた。
「ボクを気にかけてくれるのは、天城司の息子だからですか?それとも、渡海一郎の息子だからですか?」
佐伯「なんの話だ?」
天城「ブラックペアンに隠された過去の話ですよ。渡海一郎への懺悔があったんじゃないんですか?」
天城は続けた。
「佐伯先生が患者の体内に残したペアンのせいで、渡海一郎が医療過誤を疑われ、東城大を出ていく羽目になった。それは、余命いくばくもない渡海一郎が、あなたの未来を思って、自らが選び、決断をした。そして6年前、それとブラックペアンを交換することに成功したあなたは、この真実を永遠に封印することに成功された。」
「レントゲンにも映らない。火葬した場合、一緒に燃えて灰となって消えていく、カーボン製のブラックペアン。これはよくお考えになりました」
佐伯「患者の命を救う、唯一の方法だった」
渡海「だが、渡海一郎が失脚したおかげで、あなたは教授というポストにたどりつけたという考えもできる」
佐伯「何が言いたい?」
渡海「実は、うちの父がこれを持っていました」
渡海が小さな箱を開けて佐伯に見せた。中には、ブラックペアンが入っていた。
天城は続ける。
「父の危篤の知らせを受け、僕はオーストラリアのゴールドコーストからフランスの病院へ急いで戻りました。父は死のふちで僕に言ったのです。『雪彦、ブラックペアンの約束は破られた』と。
「そして、父は僕にこのブラックペアンを預けました。佐伯先生、なぜうちの父がこれを持っていたのでしょう」
「何を言ってるのかわからんな。少し休め」そういって、佐伯は病室を出ていった。
復帰した天城
その後、天城は無事復帰。天城が公開オペの患者に選んだのは、以前天城が執刀した繁野さんの孫の結衣ちゃんだ。
覚えてる!おじいちゃんが洋菓子屋さんで、結衣ちゃんがアップルパイを引き継いだんだよね!(海老蔵の娘さんの牡丹ちゃんだよね)
なんと、結衣ちゃんの心臓の冠動脈に、瘤(りゅう)が見つかったのだ。
繁野さんとお母さんは、結衣を助けてくださいと天城に頼み込んだ。
いいですよ、と天城。「ただし、僕のオペを受けるには、ひとつだけ条件があるんですよ。今回は…」
今回は、なんだろう?
東城大のカンファレンスで発表
天城は、東城大のカンファレンスで公開オペについて発表した。
「小児期の冠動脈瘤ですが、ダイレクトアナストモーシスなら問題ない。子どもに対してのダイレクトアナストモーシスは世界初めてなので、アピールするにはいいチャンスですよ」と、天城は佐伯に述べた。佐伯も満足そうな表情を浮かべている。
天城は、今回のオペは垣谷先生と関川先生にお願いしたいと述べた。
本当の同意書
世良は不服だった。「どういうことなんですか?結衣ちゃんは僕の患者です。納得いきません」
天城「本当の同意書はこれだよ」
え?確かに結衣ちゃんの手術の同意書だが、手術予定日が公開オペの翌日になっている。どういうことか?
天城、佐伯にあのことを問いただす
佐伯は黒川と話していた。
「病院長選挙だが、国際心臓外科学会と日程がダブっている。海外勢へのアピールのためにも、オレは欠席するわけにはいかんからな」
そういって、選挙演説を垣谷に任せることにした。
そこへ、天城がやってきた。天城は佐伯を書庫へ連れていった。
「8年前にオペした患者の居場所を教えていただけますか?天城司が東城大でオペをした患者、と言ったら思い出していただけますか?」
8年前にオペした患者は今どこに?
天城司が亡くなる5年前、天城は父の論文を見つけてしまった。
「僕がその論文を読んでいるのを見た父は、ひどく怒って取り上げてしまいました。危険な術式のダイレクトアナストモーシスを封印しておきたかったのでしょう。」
「ですが、父が亡くなった後、この論文をまた見つけました。父は捨てていなかったのです。
それから僕は、オーストラリアに帰って、徳永さんのオペを調べ始めました。驚きましたね、ジュノに会ったのはその時です。まさかブラックペアンで有名な佐伯正剛からスカウトが来るなんて。
僕は東城大で、徳永さんという方のオペ記録を書庫で調べていました。ところが、その手術記録はなんと父の実家で見つけました。ただ、その後僕は意識を失ってしまった。同時に、あの手術記録も紛失してしまったんです。
佐伯教授、あなたが持っているのでしょう?」
佐伯「そんなものは知らん。第一、オレが天城教授のオペ記録を隠す必要などない」
佐伯が出ていこうとすると、渡海はスマホを見せた。スマホには、あらかじめ撮影しておいた、紛失したオペ記録が残っていた。動かぬ証拠というわけだ。
「8年前の徳永さんのこのオペ、失敗してるんでしょ。その失敗したオペをあなたは天城司一人に押し付けた。だから、ブラックペアンの約束は破られた、そういうことなんでしょう。徳永さんはどこにいるんですか?」
「それだけは言えん。徳永さんの管理はすべて私に任されている」
「なら勝手に探させていただきます。公開手術の後、徳永さんを必ず探しだし、父の遺言通り手術します。あなたの悪事を、世に知らしめるために」
様々な思惑
病院では、藤原師長が何やら不穏な動きをしていた。
さらに、維新大の菅井教授、東城大の江尻副院長と高階教授がバーで何やらひそひそ話。
「ありがとうございます。いよいよ明日です」と江尻が言った。
この3人、何か悪だくみをしているのだろう(いつものことだが)
国際外科学会
佐伯の目はかなり悪くなっていた。これから公開オペだ。
天城が入ってきた。
「今回の患者さんですが、突然来られなくなりました。でも、安心してください。かわりの患者さんはもう見つけてあります。その人の名前は、徳永栄一さんです」
実は、天城に指示された世良が、徳永の病室に駆け付けていた。
天城は、昨日藤原師長が転院を佐伯から頼まれた様子を聞いていたのだ。「富士見診療所の患者ですね」という言葉を。
佐伯「この手術は無理だ。へたをすると、公開手術の場で術死がおきるぞ。」
天城は、徳永さんの手術同意書を佐伯に差し出し、サインするように言った。
「この同意書にさいんしてもらわないと、佐伯教授、一大スキャンダルになりますよ」
佐伯は観念したようにサインし、徳永をドクターヘリで搬送するよう指示した。
徳永さん到着
手術の準備が整い始めている。徳永さんが到着した。
スタッフ全員、徳永さんのカルテを見て驚いた。
「かなり難しい手術。あり得ない!」
高階「天城先生、まさか3本ともダイレクトアナストモーシスなんて言わないでくださいよ。2か所はバイパス手術でお行いましょう」
だが、この患者の場合、以前に行った手術のため、バイパス手術は無理だということが分かった。
つまり、ダイレクトアナストモーシスを3本やる、その方法しかなかった。
天城が成功を約束した。
天城がダイレクトアナストモーシスを始めた理由
天城は、世良に話始めた。
「なぜ僕がダイレクトアナストモーシスをやるようになったか。それは、母のオペだ。(母はフランス人)
母の手術の最中に、心筋梗塞がおきた。バイパスが詰まってしまい、あとは死を待つのみとなった。
だがその時、父の論文のことを思い出したんだ。その論文の術式で、僕は手術を行った。
それがダイレクトアナストモーシスの誕生だ。母の心臓は動きだした。だが、いきなり警告音が鳴り、母は亡くなってしまったんだ。悪性高熱だった。急に高熱が出たんだ。
僕がダイレクトアナストモーシスを失敗したのは、後にも先にも、その1回きりだ。
僕はそれ以来、患者にシャンス・サンプルをするようになった。そんな不幸な事故に、もう立ち合いたくないからね」
いよいよ徳永さんの手術開始
結衣の状態が悪いと連絡があった。「必ずオペを成功して戻ってきてください。結衣ちゃんと待ってます」そう言って、世良は結衣のもとへ戻った。
さあ、これから公開手術だ。
公開手術患者の変更が、会場にアナウンスされた。
真行寺(石坂浩二)は徳永を知っていた。驚いていた。「あの患者、どうして、ここへ?」
公開オペが始まった。天城が手術室に入ってきた。
ここで、江尻教授が登壇する。オペの解説をするのだ。
と思いきや、おかしなことが壇上でおきている。なぜか、藤原師長も登壇している。
なんと、江尻教授と藤原師長が、佐伯教授の緑内障を公表して、クーデターを起こそうとしていた。
いったいどうなっているのか。騒然とする場内。女性二人は、病院長交代を提案していた。
悪性高熱
手術が始まった。開けてみると、癒着がかなり激しい。だが、このまま手術を続行しよう。
医師の一人が言葉をはさんだ。「患者の体温が急に上がっています」
高階「これって、まさか、悪性高熱?」
天城の頭の中で、母の手術の場面がよみがえってきた。天城は焦った。
高階「落ち着くんだ。すぐにダントロレンを静注(じょうちゅう)してくれ」
助手「すみません、ダントロレンはありません」
これも、天城の母の時と同じだ。あの時も、ダントロレンがなかった。
全員なすすべがなかった。はたして手術はどうなるのか?
さらに、結衣ちゃんの手術は?今回は何を賭けたのか?
来週は最終回だ。