エンジェルフライト(3)キャスト
エンジェルフライトでは、ドラマの舞台となるエンジェルハースのいつものメンバーと、エピソードごとに出演する特別ゲストがいます。
エンジェルハースのメンバーと家族: キャスト
伊沢那美(米倉涼子):エンジェルハースの社長
柏木史郎(遠藤憲一):エンジェルハースの会長
高木凛子(松本穂香):新入社員
柊秀介(城田優):遺体処置担当
矢野雄也(矢本悠馬):若手社員
松山みのり(野呂佳代):手続き担当
田ノ下貢(徳井優):運転手
足立幸人(向井理):那美の恋人(まだ謎に包まれている。行方不明)
伊沢航(織山尚大):那美の息子役・少年忍者/ジャニーズJr.
伊沢海(鎌田英怜奈):那美の娘役
高木塔子(草刈 民代):凛子の母親
第3話の特別ゲスト
KPOPアイドルのコンサートを観るため韓国を訪れた吉崎恵(余貴美子)
吉崎恵の息子(松沢匠)
吉崎恵の娘(大後寿々花)おおご すずか
株式会社ONAMIの総務部長・井村将司(菅原大吉)
ONAMIの社長・大波大介(井上肇)
恵の葬儀に駆け付ける女性:小林綾子
恵の葬儀に娘と一緒に駆け付ける老女:北林谷栄
エピソード1からのあらすじは、下の記事からご覧ください。
ソウルの夜
すべてはソウルで始まった。ある晩、二人の日本人が、ソウルで別々に亡くなったことから、ドラマが始まる。
大企業の社長、ホテルで死す
場所は韓国、ソウル。
ホテルバーで、スーツ姿の男二人。「気に入っていただけましたかね。」「大丈夫部だろ。」
「しっかし、元気ですよねぇ。」
「そりゃあ、一代でこれだけの会社築く人だよ。54歳。おれと同い年。」男は社長の幼馴染だった。総務部長の井村だ。
物思いにふけっている部長のもとへ、バスローブ姿の女性が韓国語で「早く!早く!」と叫んでいる。
大慌てで部屋に向かった二人は、床に倒れている社長を発見した。
幼馴染だった社長と井村部長
時代は1969年にまでさかのぼる。部長と社長は、幼いころからのなじみだった。当時は、井村が「親分」、社長は「チビ」と呼び合っていた。
「俺は、大きくなったら社長になる。お前、部下にしてやってもいいぜ。俺は絶対に成功する。俺の葬式は盛大にやる。総理大臣も呼ぶ!」
こうチビに言ったのは、井村だったのだ。
「はい!親分!」子供だった頃の井村と社長の関係は、切っても切れないものだったのだ。
1週間後:ソウル中央病院内 ハートフル葬儀社にて
伊沢那美は、凛子を連れて韓国に来ていた。韓国での葬儀も練習しておく必要があるからだ。
実は上の写真は、韓国の葬儀の風習で、祭壇の前で「アイゴー」と言いながら大泣きする練習をしているところ。那美が凛子に泣き方を教えているのだが、韓国のスタッフが来て「最近はもうそういうのはあまりやりません、うるさいですから」と言われた。
「早く言えよ」と那美。
韓国のお葬式って、めちゃくちゃ大声で泣いているイメージがあったんですけど、ああいうのってもう古いんですね。なるほど…
そこへ、日本へ運ぶご遺体が一体あるという連絡が入った。
吉崎恵さん。神奈川県三浦市在住。大衆食堂「おかめ」を一人で経営。「推し」のK-POPアイドルNCTのコンサートに韓国で一人で参加。
その夜、ホテルにて死亡。死因は胸部大動脈瘤破裂。喪主は、長男の吉崎まさやさん。
那美は恵さんの顔を見ながら、「日本へ帰ったらきれいにしてあげますね」と約束する。
韓国に台風直撃!
さっそくご遺体を日本へ戻す手配をするが、なんと韓国に台風が直撃し、フライトはすべて欠航。
凛子は東京の事務所へ電話し、東京へ飛ぶのは早くて今日の夜、あるいは明日になると報告した。
ところが。「吉崎恵さんのご葬儀、本日5時からになっています。」と、スタッフの声。さて、どうなりますか。
葬儀の準備は着々と
恵みの家では、葬儀の準備がすでに始まっていた。長男、長女が遺影になる写真を選んでいた。
「あっけないね。」
「でもさ、母さん、あんなに喜んでたんだからさ。幸せな最期だったんじゃないか?」
コンサートの夜、「本当によかった、生で見られて、こんな幸せ初めて。ありがとね、二人のおかげ。」と、母親から電話があったのだった。
「明日帰るからね」と言った直後、恵は亡くなったのだった。
金浦空港にて交渉を始める
なんとしてもご遺体を日本へ運ばなければならない。台風の中、那美は空港スタッフに直接交渉した。
「日本ならどこでもいいから、飛ぶ便が出たら貨物のスペースを優先的にちょうだい!」
「日本で超有名な外食産業の社長よ。もし間に合わなかったら、大変なことになる!」
そういって、なんとか一便の枠を確保した那美だった。さっそく東京の事務所へ連絡。会長(遠藤憲一)は大喜び。
なんとか17時の葬儀には間に合う運びとなった。
これで一件落着と思いきや、本当のトラブルはこれからだったのだ。
井村総務部長からエンジェルハースへ依頼が
エンジェルハースのスタッフたちが、17時からの恵さんの葬儀の準備に取り掛かろうとしたそのときだった。
井村総務部長からエンジェルハースに、社長の遺体を日本へ搬送してほしいとの依頼が飛び込んできた。
エンジェルハースの事務所を直々に訪ねてきた井村は、「本日社葬なので、なんとしても社長の遺体を日本へ届けてほしい」と頼み込んだ。
大急ぎでソウルの那美へ、大波社長のご遺体を日本へ本日中に送り届けるよう、連絡した。亡くなった社長は、大手企業「大波」の社長だったのだ。
ふたつ返事で引き受けた那美だったが…
大波社長の遺体返還に時間がかかった理由は、死亡理由に不審な点があったため、韓国警察が調べていたのでこれほど遅くなったのだ。
「女がらみで亡くなった」ことは、暗黙の事実としてすでに知れ渡っていた。
大波社長の遺体を優先しろとの命令が下ったが
順調にいくはずだった社長の送還だが、なんと貨物がいっぱいで空きがないと知らされた。
だが、すでに社葬の準備は着々と進んでいる。葬儀には各界有名人をはじめ、内閣総理大臣まで弔問予定だ。
あわてたエンジェルハースの会長は、恵の遺体の搬送を後回しにし、社長の遺体を先にしてくれと頼んだ、というより、命令した。
恵の葬儀を本日キャンセルし、キャンセル料など、発生した費用はすべて大波が負担するという提案だった。要するに、「金で解決しろ」ということだ。
金で解決って、実際によくある話ですよね、まったく。
そうこうしているうちに、大波社長の遺体が空港へ到着した。
吉崎家の長男は了承したが
大波の社員が、「社長のご遺体の搬送をよろしくお願いします」と那美に言いに来たが、那美はまだ吉崎家に葬儀延期の連絡を入れていなかった。
それを聞いた社員は「時間がないから早く電話しろ」と、顔を真っ赤にして那美に詰め寄った。
那美はしぶしぶ吉崎家の長男に電話を入れ、事情を正直に説明した。長男は言った。
「いいんですよ、大波社長のほうを優先してください。うちは後回しでいいです。うちの葬儀は、本当に恥ずかしいくらい小さな葬儀ですから。葬儀は延期せず、棺が空のまま行いますから。」
長男に了承をもらい、大波の社員は「じゃあ、さっさと積んでください」と去っていった。
那美はどうにも納得できない様子だった。
棺は無事に日本へ到着した。待ち構えていたスタッフたちは、すぐにご遺体の清拭(きよめ、お化粧)を行った。
葬儀は誰のためにあるのか?
大企業の社長さんの社葬。片や、大衆食堂を営む女性の葬儀。この二人の葬儀に、優劣をつけられるだろうか。
なんと、ご遺体は恵さんのものだった
きれいにされたご遺体は、さっそく葬儀の場へ運ばれた。なんとそこは、大波の社葬ではなく、吉崎家だった。恵さんのご遺体を先に届けたのだった。
「かあさん、こんなにきれいにお化粧してもらって。」
「ほんと、こんなきれいな母さん、初めてみたよ。」
恵は生きているときは、子育てと食堂の仕事で手一杯で、自分のために化粧などすることもなかった。いつも「自分は後回し」の人だったのだ。
幸せそうに眠っているような母の顔を見て、二人の気持ちも安らかになっていった。
怒鳴り込んできた井村部長
「いったいどういうことだ!」
井村部長がすごい剣幕でエンジェルハースに怒鳴り込んできた。頭を下げる会長。「どこでどうやってこんな手違いになったのか…」
エンジェルハースのスタッフが、口をはさむ。
「まま、ミスは誰にでもあることですから」
「もとはと言えば部長がいけないんじゃないですか、あ、今のは独り言です。」
「棺が空のままご葬儀をやるのは、よくあることです。」と、秀介。
この運び、胸がスカッとしました。
怒り狂った井村は、秀介の胸ぐらにつかみかかって、さらに怒鳴った。
「そのへんのおばちゃんの、ちっぽけな葬式のために、大波大輔の葬儀をつぶしたんだぞ!」
その言葉に我慢できなかったのは、会長だ。
「じゃかあしいわ!なあ、ご葬儀ってのはな、大きいも小さいもないんじゃ、わかるか!」
この運び、先ほど以上にスカッとし、感激しました!
大勢の弔問客でごった返す、恵の葬儀
吉崎家は大忙しだった。
恵を弔うため、それまでのお客さんたちが大勢詰めかけ、店はごった返していた。
お店は、恵さんのご主人が亡くなって20年、一人でやってきたのだった。常連さんもたくさんいて、皆から愛されていたお店だった。
「最後に親孝行の真似事ができて、よかったです。」
母親の「推し」のコンサートチケットをプレゼントしたのは、子供たちだったのだ。1か月前の話だ。だがそのときすでに、恵の身体は異変をきたしていた。
恵は、一刻も早く精密検査を受けたほうがいいという医者の提言に逆らって、韓国へと旅立ったのだった。
ソウルでの恵は、ファンの仲間とともに、大はしゃぎだった。
「ドヨン」の大ファンの恵。この嬉しそうな顔をご覧ください。
大波社長の社葬にて
「遺体は間に合わない。仕方がない、棺は空でやるぞ。」
そういって、井村は祭壇へ向かった。大波社長の遺影に向かって、「すまない。」と一言。手には退職届を握りしめていた。
井村は社長の顔を見ながら、昔を思い出していた。
井村が警備員として働いていたとき、すでに成功していた大波とバッタリ会ったのだった。立場の違いはあれど、二人は昔を懐かしみ、飲み明かした。
「俺が今あるのは、しょうちゃん(井村のこと)のおかげだよ。だって、しょうちゃん、よく言ってたじゃないか。絶対に成功するって。死ぬ気でやれば何でもできるって。だから、俺も負けないでがんばろうと思ったんだよ。」
大波の言葉を聞きながら、気まずそうに酒を呑む井村。そうか、そんなこともあったか。でも、今の俺とお前は全く逆転しているな。心の中で、そう思っていたに違いない。
「会社が大きくなると、心から信頼できる人間がいなくてな。もし、しょうちゃんが会社に来てくれたら、心強いんだけどな。」
それが、井村が大村の元で働くきっかけになったのだった。
実は、ソウルで商談のとき、大波に女を用意したのはほかでもない、井村だった。それが、こんなことになってしまうとは。
井村は悔やんでも悔やみきれなかった。社長の祭壇の前で、泣き崩れる井村だった。
と、そのとき、「社長!早く来てください!」
話が急展開するのはこれからだ。
葬儀にまにあった遺体
何があったのかと走って外に出ると、そこにはエンジェルハースのトラックとともに、那美が立っていた。
「井村部長ですね。エンジェルハースの伊沢と申します。20分だけ時間をください。それから、大波社長にお着せするものを御願いします。」
「いったいどういうことだろう…」
なぜ、ここに、大波社長のご遺体が?
7時間前、ソウルにて
ことは、7時間前にさかのぼる。
ソウルの空港で、那美は凛子に尋ねた。
「韓流スターが大好きなおばさんと、大企業の社長、どっちが優先されると思う?」
凛子は答えた。
「現実的には、大企業の社長を優先するのは当然だと思います。」
那美「バカヤロー!両方優先するに決まってんだろ!両方に!」
那美は東京の事務所に電話をかけた。
「仁川から上海行きが飛ぶって。うまくいけば、上海から乗り継いで、間に合うかもしれない。うまくトランジットできるように手配しな。」
こうして、凛子は吉崎さんを、那美は大波社長を、無事に日本へ帰国させたということだ。
大波社長の棺、ついに到着
日本に着いた大波社長を、那美と秀介は丁寧に生前の顔に戻してあげた。
表情も柔らかく、肌はまるで生きているようだ。戻ってきた棺を、社員たち自ら祭壇に運んだ。
祭壇に飾ってある遺影と見比べても、まったく変わったところのない、自分たちが見てきた社長の顔だった。
井村は社長に「こんなオレを拾ってくれて、ありがとうございました。」と最期の感謝の言葉を述べた。
やすらかなお顔だね。天国に旅立ったんだね。いや、まだそのへんにいるかも。
恵さんに会いに、ソウルからご婦人が来日
恵さんの葬儀が終わったあと、二人の女性が訪ねてきた。「ソウルでお世話になったものです。」
「母が、どうしても、お詫びをしたいと。」
理由はこういうことだった。
母娘も恵と同じツアーに参加したのだが、ソウルでこのお母さん(老女)がチケットを無くしてしまったと嘆いていた。
それをたまたま聞いた恵が、「このチケット、どうぞ」と、自分の持っていたチケットを老女へ差し出した。「私はまたいつでも来られますから」と、そう言ったそうだ。
とてもそんなチケットは受け取れないと言う娘に、恵は「いいんです、いいんです」と言い張り、母娘は結局譲ってもらったというのだ。
恵は、つまり、コンサートには行っていない。それだけなく、子供たちに「とってもよかった」と優しいウソを言って、亡くなったのだ。
「お母さん、最期まで自分のことは後回しだったわね。」
「本当にバカね。」「本当にバカだな。」
だけど…
「お母さんらしい!」
息子と娘は、泣きながら、最後は笑顔になった。涙でくしゃくしゃになった笑顔。母親をどんなに誇らしく思ったことだろう。
こんな素敵なお母さんに少しでも近づけるように、私もこれから毎日を大切に生きていこうと思いました。
こじれにこじれた凛子と母親の関係は
帰途に向かう凛子。車の中で、スタッフの矢野と語り合っていた。
矢野「いるんだねえ。自分を犠牲にしてまで家族に尽くす、そんな素晴らしい母親が。」
凛子は突き放すように答えた。「うちの母親は真逆で、自分のことしか考えない人間ですから。」
彼女にはどうしても忘れられない記憶があった。
幼い頃、自転車のタイヤが線路にはさまって動かなくなった。迫ってくる電車。踏切の向こうには母親がいるのに。
あの時の母親の目を、凛子は今でも忘れることができなかった。思えば、あの頃から母娘の確執があったのかもしれない。でも、それはなぜ?
母は、なぜあんな目で私を見ていたのだろう。今でもどうしても分からない凛子だった。
凛子と母親の関係は、こじれにこじれていた。
そして、同じく帰途に着く那美。車の中で眠りこけている那美を見て、秀介はつぶやく。「まだ待っているんですかね、あの人のことを。」
エンジェルフライトは、複雑な人間関係、さらにそれぞれの過去も絡み合う、人間味のある重厚なドラマである。このようなドラマはもう地上波での放送では無理なのかもしれない。
これからは、ますますネット配信の世の中になっていくのではないだろうか。ドラマの面白さが格段に違う。もう、スポンサーを意識してぼんやりとしたストーリーしか作れない地上波のテレビ局のドラマは、だんだん見られなくなっていくのではないだろうか。
せめて、TBSの日曜劇場ぐらいは意地をはってがんばってもらいたい。