Netflix独占配信「timeleszオーディションプロジェクト」、略してタイプロ。3次審査で残った15名が、いよいよ4次審査に入る。
10月某日、朝7時半、東京駅集合。出迎えのバスに乗り、到着場所は知らされていないようだ。みんな、1か月ぶりに会うので「久しぶり!」と遠足気分だ。
だが、遠足気分はバスまでだった。到着した場所は緑に囲まれた、まさに「合宿」にふさわしい環境の建物。オーディション参加者の3日間の合宿が始まる場所だ。
はたして、4次審査はどんなものなのだろうか。そして、残るのは何人?
3チームに分かれ、さらに3人ジュニアから加入
4次審査では、15人が5人ずつの3チームに分かれ、「合宿特訓ミッション」を課される。それぞれ課題曲も与えられる。さらに、それぞれのチームに一人ずつ、新たに加入するメンバーがいる。、いずれもジュニア出身の強敵だ。歌、ダンスともに申し分がない。
3次審査を合格した15人と、ジュニア出身の3人、合計18人から、5次審査に残るのは12名だ。
さっそく、3人の新参加メンバーをご紹介しよう。
一人目:寺西拓人。29歳。
二人目:今江大地。29歳。
三人目:原嘉孝(よしたか)。29歳。
3人ともスタートエンターテイメント社の「俳優部」に属する。
俳優部と言っても、全員がジュニア出身。現在はそれぞれが舞台やミュージカルで役者として活躍している。歌とダンスはジュニア時代に鍛えられているので、文句なしの実力だ。
4次審査のスケジュール
4次審査のスケジュールは以下のとおり。
三日間の合宿(フィジカルトレーニング、全体練習(anthem)、歌、ダンス、自主練、中間発表
2週間 個人練習の期間
2週間後 パフォーマンス 本番
4次審査ではtimeleszの曲が課題になる
3次審査では、SMAPのSHAKE、嵐のMonsterが課題曲だった。だが、4次審査ではtimeleszの曲が課題曲として与えられる。
初めて自分たちの楽曲で歌とダンスを審査されることになる。timeleszのメンバーの思い入れも相当なものだろう。
team Aの課題曲:「人生遊戯」
「人生遊戯は、エネルギッシュでパワーが必要になる曲ですね。特に感情表現が苦手な子は、難しいかもしえない。やっぱり感情をむき出しにしないと伝わらない曲になっているので、そこの表現力が求められる楽曲になっています」by 松島聡
team Bの課題曲:RIGHT NEXT TO YOU
「われわれにとって、当時、初めての挑戦だと言っても過言ではないほどの、新しいダンス曲でした。すごく苦戦していたのを覚えています。なのですごく思い入れもありますし、相当しごかれたのも覚えてますし、曲の理解度、どう自分を表現するか、ボクはそこも注目していきたいなと思っています」by 菊池風磨
team Cの課題曲:Purple Rain
「Purple Rainの面白いところは、ダンスナンバーでもありながら、歌詞の中身としても、はかなさだったりとか、切なさだったりとか、哀愁みたいなものが表現できたら、Purple Rainのパフォーマンスは1個上のステージに上がると思ってます」 by 佐藤勝利
候補生全員:Anthem(アンセム)
さらに、候補生全員でtimeleszの曲Anthemをパフォーマンスしてもらうと、松島から発表があった。
各チームごとの、今与えられた課題曲、そして全員でのAnthem、そのパフォーマンスを見て5次審査へ進む人間を決める。
合宿の中身
合宿の中身はかなり過酷だ。
フィジカルトレーニング(1000メートルダッシュ、腹筋、腕立て伏せなど筋力トレーニング)
全体練習(Anthem)
ボーカルレッスン
ダンスレッスン
自主練
ただ、timeleszのメンバー3人も、この合宿の前に、同じトレーニングを受けている。プロの生きざまを見たような気がした。
timeleszクラスになると、ライブで1時間半から2時間は踊りっぱなし、歌いっぱなしだ。体力がなければとてもこなせることはできない。疲れた様子を一切ファンに見せず、絶えず笑顔でパフォーマンスをすることが求められるのだ。
1000メートルダッシュで一位になった今江大地
スタート社の今江が、1000メートルダッシュで堂々の一位となった。さすがに、いつも人前でプロとしてのパフォーマンスを披露している人間のパワーはすごいなと感じた。
体力がないととてもやりきれない仕事。それがtimeleszのパフォーマンスだ。
二日目で合流した原嘉孝
仕事のため、合宿二日目から合流したのが原嘉孝。彼もスタート社の俳優部の人間だ。
もともとはSnow Man目黒蓮(27)やtimelesz佐藤勝利(28)と同期でもあり、16年から20年までジュニア内グループ「宇宙Six」として活動していた。
グループ解散後は役者と6年間ほど、一人で舞台を中心として実力を蓄えてきた。歌唱力、演技力、ダンスのパフォーマンス共に申し分のない実力だ。
原嘉孝の言葉より:
「グループ活動をあきらめた自分て、本当はやりたいことなのに、なんか自分が勝手にフタをしちゃってた。本来の夢に、もう一回だけ素直になって、最後のチャンスとして、本当にボクの人生をかけて、全力でぶつかりたいと思います」
ジュニア出身者と一般応募者の大きな違いとは
原嘉孝が二日目の全体練習を終わって、こう述べていた。
「僕らと、一般から応募してきた人との違いって、(僕らは)何万人の会場に常に立ってて、観られている意識っていうのが、常に備わっている状況なんです。動きひとつにしても、全部見られてる、移動も。顔そらすぐらいで色気を出すとか、自然にやってきたから。ただ、それが(一般からの応募者には)ないので」
経験値の違いは大きな差となって現れる。
SNSでは「4次審査から出てくるって、ずるい」という声があるようだが、それは全く違う。「シード」という意味が分かっていない。
ジュニア出身者はシードである。高校野球や高校サッカーなどの地方大会、全国大会を知ってる人には当然のことだが、強豪校は第2試合目から登場する。もしも第一試合目から参加されたら、弱いチームは圧倒的に不利だからだ。
つまり、シードというシステムは「すべての人間(チーム)に平等に」戦ってもらえるための、公平性を課すためのの方法なのだ。
もしも、第一審査からジュニア出身者が参加していたら、彼らは間違いなく選ばれる。たった3人かもしれないが、どこかの3人が落とされることになる。つまりは、落とされた3人の可能性を奪い取る形になるのだ。
だからこそ、ある程度一般の挑戦者が切磋琢磨して、選ばれ、さらに選ばれ、ようやく3次審査まで到着したときに、一緒のスタートラインにジュニア出身者が立つぐらいでちょうどよい。
まあ、今回3人のAnthemのサビの部分の振りを見ただけでも、彼らのパワーが飛びぬけているのはよくわかった。観ている人たちはドン引きしていたくらいだ。
ダンス指導Nosukeさん:原嘉孝の印象は?
二日目に合流し、全体練習のAnthem、グループ練習のPurple Rainのダンスをじっくり見ていたNosukeさん。タイプロで最初からダンス担当で厳しい指導とアドバイスを挑戦者に投げかけている。
そのNosukeさんが、原のダンスをじっと見ながらこうコメントしている。
「原嘉孝が予想以上によかったっていうのも、ちょっとあります。ていうのも、彼だけ、見えているビジョンがしっかりとこの曲を想像してできていて、シティポップの世界観だったりとか、それを想像できて歌っている、パフォーマンスしている。ちょっと、だからこう、悔しいかな、良いと思わされてしまったな、というのは正直ありますね。
その思いにみんなが乗っかってくれたら、このチームはメチャクチャ強くなると思いました」
はたして、このチームはNosukeさんの言うように、原の思いに乗っかることができるだろうか。
4次審査中間発表
4次審査3日目。最後の中間発表は「Purple Rain」のパフォーマンスだ。
松島聡のコメント:「西山君(このチームのリーダー)と原君が目線を合わせて踊るシーン。すごくいいコンビだと思いました。息がめっちゃ合ってて、もっと観たいなと純粋に思った」
菊池風磨のコメント:「包み隠さず言うと、原がよくまとめたなと。エネルギーがすごくて、熱、熱さ、思いの強さってのがあるので、それがにじみ出てるっていうのは、僕らも好感持ってますし、たぶん観てる人も。分かりやすいんだと思う。そう、分かりやすいんだと思う」
二人のコメントを聞いた後の、原の感想は:
「嬉しかったですね。この事務所に入ったきっかけと言うか、本来やりたかったことが、苦しいながらも…だからこそ、風磨君の『よくまとめたな』っていう言葉が刺さった」
涙を浮かべながら、言葉に詰まりながらの原の言葉に、逆にこちらも胸を打たれた。
ここまでの原の苦しさ、辛さがここにきて報われた、そんなシーンだった。
華やかな世界の裏側ほど影が濃いのだろう。そんな当たり前のことが、今更ながら私たちの胸にも突き刺さった。
原嘉孝のコミュニケーション能力の高さ
この合宿は3日間の勝負だ。その大事な初日を、原は欠席している。二日目からの登場ということもあり、出遅れるはずなのだが、原はとんでもないパワーで、まるで最初からいるような存在感を見せる。
二日目、1000メートルダッシュが終わると、ゴール直後にフラフラになって起き上がれないメンバーにいち早く駆け寄り、「大丈夫?」と声をかける。
自己紹介をしながら、相手の名前も聞いて覚える。まわりにPurple Rainチームのメンバーも駆け寄ってくる。すぐさま、全員の名前を聞いて覚える原。チームに早く溶け込みたい、このチームで力を合わせながら良いものを作るぞ、そういう意気込みと相手への敬意すら感じられた。
原嘉孝という人間のコミュニケーション力の高さが如実に表れたシーンだった。
ああ、こんな人間が一人でも職場にいたら、どれほどみんなのやる気が上がることだろう。同僚に一人いたら楽しいし、頼もしい。上司に一人いたら、マジでみんなの尊敬の的だし、この上司の言うことなら間違いないと、信頼感も生まれるだろう。
ところが現実は残酷で、一般社会には原のような存在は稀有であり、会社に原のような人間が一人でも、いたら、それは「奇跡」である。
Purple Rainチーム 4次審査パフォーマンス 本番
Purple Rainチームは、良い意味でも悪い意味でも「優しい人間が多い」チームと言われていた。
優しさは、パフォーマンスとしては弱い部分が現れてしまう。もちろん、チームとして「個」を出しすぎないのは当然だが、「個性」をある程度出していかないと、つまらないものに見えてしまう。つまりは「普通」のレッテルを貼られてしまう。
Purple Rainチームの中間発表は、「弱いな」という印象だった。その「可もなく不可もなく」という印象を取っ払っていきたいというのが、チームリーダー西山の言葉だった。
本番のパフォーマンスが始まった。観ているほうも、中間発表の「普通にうまい」パフォーマンスを知っているので、どれほど変わったか、ドキドキしていた。
Purple Rainチームは全く別のチームに成り代わっていた。
猪俣は「If everything comes in the morning」という歌詞の部分を全く言えずに「英語、本当にダメなんです」と泣きごとを言っていたのだが、本番では見事にモノにしていた。
一人ひとりが輝いていた。(特に原嘉孝)
パフォーマンスを終えた後の、timeleszの評価は?
中間発表のパフォーマンスの時は、それを観ているtimeleszのメンバーの表情が冴えなかった。「ああ、これはイマイチだな」と私たちも、彼らの表情から観てとれた。
だが、本番のパフォーマンスを観ているtimeleszのメンバーたちの表情には、自然と笑顔があふれていた。心からPurple Rainチームのパフォーマンスを楽しんでいるのが感じられた。
では、timeleszのメンバーの感想をどうぞ。
松島聡「技術力が格段に上がりましたね。それは、北林くん、くらいついたね。この2週間で、すごく完成度の高いものに近づけていったんだなあと感じました。それから、猪俣君。メチャクチャかっこよかったよ。化けたなと感じました。でも、それは原君や西山くん、その他のメンバーが引っ張ってくれたから。それを忘れちゃいけない、感謝してほしいと思いました」
佐藤勝利「すごくいいパフォーマンスをしてくれた。すごく良かったです。原ちゃんが映ったときに、このPurple Rainの主役というか、もちろん、それぞれが主役なんだけれども、原ちゃんの歌なんだなあと存在感を感じる、そういう部分が素敵なんだなあと感じました」
菊池風磨「やられました、正直。すげえグッときちゃって。個人的なことなんだけど、初めてドームに立ったときのことを思い出しました。それはみんなのパフォーマンスの熱量という意味で。なんか、入りすぎた気合。気合が入りすぎて、ずっとちょっと上ずってる感じ。でもオレは、それでいいと思ってて、この6人でパフォーマンスすることって、もうこの先はないから。だからこそ、そのぐらいの気合で入りすぎてて全然いいと思ってて。そこがボクはすごくグッときました」
「優しい人の集まり」だったPurple Rainチームは、別の格として生まれま変わった。私は素人目線で言わせてもらうと、一人だけプロがいるな、とも思った。もちろん、プロは原である。6人同じように歌って踊っていても、原は別格だ。
Purple Rainは歌詞に深みがあり、ある程度人生経験がないと歌詞を自分のものにできないのではないかと思う。その点、原は歌を自分のものにしていた。おそらく、Sexy Zoneの歌も踊りもすべて自分のものにしているだろう。
Purple Rainと言う曲は、単なる恋愛を謳ったものではなく、二人の間のどうしようもない悲しさや切なさが歌詞に込められている。それでも、今を大切にしたい、君の痛みをすべて受け止める、そういう大人の歌である。
最後の「溶けてく into the dark」で、夜の深みを見ているのは原嘉孝ただ一人だったように感じる。大人の男の色気を感じた部分でもある。
ジュニア出身ってみんなこんなにすごいの?後の二人にも期待しよう。(今はまだ原君しか見ていないから)
厳しいことを言うようだが、4次審査の前には1か月ほど時間があったのだから、Sexy Zoneの楽曲はすべて歌えるぐらい練習してきてほしかった。歌詞の英語を言えないなんて論外だし、その時点で、歌詞の内容も入っていないんだろうと思った。そういう意味では、2週間で英語の歌詞を言えるようになった猪俣君は努力したんだなあと感じた。
原嘉孝の空気感に圧倒される
二日目からの合流だったが、正直言って、原が出てきた時から合宿の空気がガラっと変わった。
空気が引き締まり、ポジティブになり、強くなり、突破力が出てきた。原は不思議なパワーを秘めており、リーダーとしての素質も兼ね備えている。
原は決して出しゃばるタイプではないが、リーダーとして誰もが認める圧倒的な存在感がある。
決して上からモノを言う人間ではなく、逆に、「一緒にやろうよ、オレでよければ手伝うよ」と、相手との距離を縮めるのがすごくうまい。
言われた本人は、「言われた感」が無く、自然と原の意識に同調していく。そして、原のポジションの高さまで引き上げられるような感覚になるから不思議だ。
原はPurple Rainのチームだった。
このチームは、全員が「性格が良い」「おとなしい」感じのメンバーばかり。卒なくこなすが、個人としての良さが埋まってしまっている。
その「埋まってしまっている個性」を引き出したのが、原だ。
合宿最終日の中間発表で、Purple Rainチームは素晴らしいパフォーマンスを発揮した。
リーダーの西山も良い役目を果たした。このチームは、原と西山に引っ張られて、実力以上の力を中間発表で発揮することができた。
原は、人に教えることが多かったが、もちろん中間発表では「一人抜けている」印象があった。原が主人公の「Purple Rain」だった。
Purple Rainチームは素晴らしいダンスと歌を披露したが、初日の彼らを見ている限りでは、「これはダメだろう」とさじを投げていた人も多かったのではないだろうか。
原に引っ張られてここまで来たことに感謝しなくてはいけないよ、とPurple Rainチームはtimeleszメンバーからも言われていた。
私はこれまで、オーディションの出演者の誰にも加担せずにフラットに見てきたつもりだが、ここにきて、がぜん「原」推しになった自分がいる。
原に残ってほしい気持ちは強いが、これからも全員に対して平等に見ていくことにする。
また、原に関して言わせてもらえば、彼はどの業界にいてもやっていけるだろう。あれほどの人間力があれば、会社でトップまで登り詰めることができるだろうし、どこにいてもひときわ光った存在としてすぐに頭角を現すだろう。
「出る杭は打たれる」と言うが、「出すぎる杭は打たれない」ので、ぜひ、出すぎる杭になってもらいたいと思う。
日本に、まだこのような逸材が存在することに驚きを持ってこの番組を観ていたことで、この記事のまとめにしたいと思う。
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