いろいろお騒がせの平野レミさん。最近では、NHKの「早わざレシピ」という番組で、自分の本の宣伝をしてしまったり(NHKは公共放送なので、特定のモノの宣伝は禁じられています)、スタッフがやったプチトマトの皮むきが気に入らなくてテーブルに投げつけたり、あの方は料理研究家では一番炎上する人ですね。
そんなレミさんですが、若い頃はシャンソン歌手だったことをご存じの方は少ないのではないでしょうか。この記事では、シャンソン歌手から料理研究家になったころのレミさんの若い頃のエピソードを、写真をまじえてご紹介します。
最初はシャンソン歌手だった平野レミ
レミさんのお父様は、詩人でフランス文学者の平野威馬雄さん。その道では超有名な方です。そんな影響から、レミさんはシャンソンを得意とするようになりました。
そのうちに、テレビにも出演してシャンソンを歌うようになり、ラジオ番組にも出演しました。レミさんが結婚したのはそのころです。お相手は、イラストレーターの和田誠さん。和田さんがレミさんのラジオを聞いて、すごく気に入っていたそうです。
NHK「きょうの料理」に初出演の平野レミさん
平野レミさんがなぜ料理研究家になったかと言うと、ご主人の和田誠さんの友人が「料理の本」にコラムを持たせてくれたんですね。
料理のプロでもない平野さんが書く「料理のコラム」は、逆に新鮮で面白いと評判になり、ついにNHKの「きょうの料理」から出演依頼がきたのです。1985年のことです。
もっとも、彼女に白羽の矢が立ったのは、ひとえに「和田誠さんの奥さん」だということもあるでしょう。最初からネームバリューが望めますからね。
当時の「きょうの料理」は今と比べると信じられないくらい格式が高いものでした。日本料理の巨匠と呼ばれる「土井勝(まさる)」さんが普通に出てましたからね。土井勝さんは、現在人気の料理研究家「土井善晴(どいよしはる)」さんのお父様です。
その他、「きょうの料理」に出ていた料理人は錚々たるメンバーで、知らない人はいないぐらい有名な人ばかり出ていました。
そんな番組に、よく出たなあ、そして、よく出したなあ、と今になってみれば思います。当時の「きょうの料理」は本当にお上品で、「それでは、こちらが材料になります」「切ったものがこちらです」「煮たものがこちらになります」といった進行が普通だったので、見るほうは「すごく早くできるように感じてしまうけれど、実際はできたものが用意されてるのよね」と、いつも思っていたものです。
それが、平野レミさんの料理は、「ほぼ同時進行」で、生放送か?と思うほどちゃっちゃと作っていたのが印象的です。
しゃべり方も、甲高い声も、今と変わりません。なので、昔からレミさんを見ている私からすると「レミさんて、ほんと、変わらないなあ」と思いますね。
あの調子で「きょうの料理」に出ていたのですから、NHKもかなり冒険したと思います。
最初に作った料理で非難ごうごう!
しつこいようですが、平野レミさんが初めてNHKの「今日の料理」に出演したとき、他の料理研究家の日とは全然違って「ラフすぎる」感じだったので、非常に驚きました。
「気取っていない」と言えば聞こえがいいのですが、「やたらキーキーうるさい」と言ったところが正解でしょうか。
よくも悪くも「画期的」な人材でした。
レミさんが初めて作った料理は「トマトと牛肉の炒め物」でした。トマトと牛肉を炒めるという簡単なものでしたが、そのやり方が強烈でした。
トマトをフライパンの上で、いきなりムンズと手づかみし、トマトをギュっと握ってぐちゃぐちゃにしたものをフライパンで調理したのです。
それを見た視聴者からは、放映後に「あのやり方は汚らしい」と電話が殺到したそうです。当時はインターネットなどありませんから、クレームは電話という手段のみでしたね。あと、ハガキとか。
今だったらSNSですぐに炎上してしまいます。怖い時代になりました。
ただ、私は見ていて「面白いな、簡単でいいな」と思ったのを覚えています。なぜ覚えているのかと言うと、レミさんがきょうの料理に初出演したのが1985年で、私が結婚した年なのです。私はあまり料理が得意ではありませんでしたので、毎日のようにきょうの料理を見て勉強していました。
ですので、土井勝さんの「卵焼き」も覚えていますし、同時期の平野レミさんのレシピも覚えています。
表現が面白かったレミさん
私が特に記憶していて今でもレシピを作り続けているのが、「平野レミさんのチャーハン」です。これは強烈に覚えています。義母と、義母の妹さんと3人で見ていました。
平野レミさんのチャーハンは、いたって簡単でした。
材料は、ニンニク、万能ねぎ、シソの葉(1袋)。それだけです。
みじん切りにしたニンニクをフライパンで炒め、香りがたってきたらすぐに、同じくみじん切りにした万能ねぎとシソの葉を投入します。ちなみに、万能ねぎはひと袋全部使います。
使いすぎかと思いきや、万能ねぎとシソはあっという間に少なくなるので、全部使ってちょうどいいくらいです。
そこにご飯を投入し、塩コショウとお醤油で味付け。これで終わり。すごくシンプルだけど、これが超絶美味しいんです!
1985年以来、今でも我が家ではこのチャーハンが定番になっていて、みんなのお気に入りなんです。
この時面白かったのは、レミさんの表現方法です。
シソと万能ねぎを炒めるとき、これまでの料理研究家は「中火の弱火くらいで」と表現していたでしょう。
でも、レミさんは「あんまり火を強くしないでね。ネギとシソが、アチチ!アチチ!と言ってたらダメよ。熱いわ、熱いわ、ぐらいにしておいてね」と言ってたんですよね。
なんか、すごーくわかるような気がすると思いませんか?ネギとシソに対する愛情すら感じますし、「熱いわ、熱いわ」のほうが火加減が分かります。
こんな火加減の表現をする人は初めてだったので、非常に感動したことを覚えています。義母も、義母の妹さんも「この人、すごく面白いわね。それに、このチャーハン美味しそう!と言っていたのです。もちろん、さっそく作って食べました。
もう亡くなってしまった義母と義母の妹さん(つまりおばさん)。懐かしい想い出は、レミさんと共にあります。
若い頃から高い声で早口で、面白い人だった
レミさんは若い頃から、いつも早口で、高い声でまくしたて、最初から最後までハイテンション。今と変わらないですよね!NHKの「きょうの料理」に出演したときも、全然緊張したそぶりはありませんでした。本当に面白い人です。
おまけに舌足らずで、何を言っているのか分からないこともあり、面白さが先行してすぐに人気になりました。おまけに、可愛い女性ですから、民放にもよく出るようになりました。
今でこそ、平野レミさんのレシピは突拍子もないものが多いですが(例えば下のようなブロッコリーの料理)、昔はもっと普通に作れるものを作っていた印象があります。
最近は、「うるさい」「汚い」などと評判が芳しくないときもありますが、彼女が出ると画面がパーっと明るくなるのは誰もが認めるところ。
「歩く放送事故」とも言われて恐れられている平野レミさんですが、私たち視聴者をいつまでも楽しませてくれることを期待しましょう。
でも、食材を投げつけたりしないでね!とお願いします。