【極悪女王】はなぜ海外でもヒットしたのか?「地面師たち」との違いは何?

当ページのリンクには広告が含まれています。
スポンサーリンク

Netflixで配信と同時に話題をさらった「地面師たち」。2か月後に配信された「極悪女王」も世界的なヒットとなった。

日本にいる限り、海外からはどう評価されているのは分かりにくいが、英語のレビューサイトをじっくりと読んだところ、思いがけない事実がわかった。

この記事では、「極悪女王」と「地面師たち」の海外の評判の違いと、その理由について解説する。

スポンサーリンク
目次

「極悪女王」の一貫した安定性

「極悪女王」は最初から最後まで、視聴者をくぎ付けにする。私たちはドラマを観ながら、登場人物に安心して感情移入できる。これは、視聴者として大事なことだ。

登場人物に感情を預けられるということは、その人物が良い人だからではない。その人物がどういう人間なのか、理解しているからである。だから、松本香の時も、悪役に徹したダンプ松本の時も、私たちは彼女を応援し続ける。私たちの心もブレることがない。

名作と呼ばれるドラマや映画には共通点がある。主人公や、まわりの登場人物と一緒に、見ている私たちも泣いたり、笑ったり、悔しがったり、怒ったり、喜んだりする。視聴者の心をいかに揺さぶるか。名作ドラマや映画は、私たちを大いに揺さぶってくる。私たちは揺さぶられて大満足だ。「極悪女王」も然り。

私たちは、ダンプ松本のみならず、長与千種、ライオネス飛鳥、ジャガー横田、ブル中野など、多くの登場人物を応援し、一緒に戦った。最後は、すがすがしい気分になった。そして、努力は報われるのだと自分たちの人生に灯りがともされるような気がした。

このような感情は、世界共通だ。「強くなる」「貧乏から脱出したい」「家族との葛藤」「成功する」「未来への希望」など、誰の心にもある共通認識。極悪女王はこれらすべての要素を兼ね備えている。

余計な要素はすべてこそげ取り、彼女たちの時間を丁寧に描くために全力を注いだ作品。それが「極悪女王」だ。

「観てよかった」と心の底から思える作品だ。

どちらかと言えば、NHKの朝ドラ「おしん」と共通しているかもしれない。おしんも、極貧の生活から大変な努力をして成功したドラマだ。ドラマを観ながら、視聴者はおしんと共に、喜んだり、悔しい思いをしたり、負けるもんかと歯を食いしばったりした。どこか極悪女王と似ていると思う。

「おしん」が世界各国で絶賛されたのは有名は話だ。

スポンサーリンク

ぐらついてしまった「地面師たち」のストーリー

「地面師たち」も最初から最後まで一気見するほど面白いドラマだ。スリルに富んだエンターテインメント性の高い作品である。

まず、一般人には聞きなれないし馴染みもない「地面師」という詐欺グループと、彼らが犯す「人の土地を勝手に売って、金が入り次第高跳びする」というとんでもない詐欺行為に、度肝を抜かれながらも感嘆する。

日本独特の印鑑や書類の数々を偽装し、なりすましの人間を訓練し、最後は本人確認と書類確認、印鑑確認でいつバレるかもしれない場面にドキドキする。完全に、視聴者が地面師側の気持ちになっているのも面白い。

不動産取引は、リアルな取引でも緊張感があるものだ。土地を売る側、買う側で、不動産会社や銀行、司法書士などが登場し、土地の価格が高ければ高いほど、双方が不安になる。買うほうは「本当にこの土地は大丈夫だろうか」、売るほうは「本当に最終金額が振り込まれるだろうか」と考える。

まっとうな取引でも緊張するのだから、地面師の詐欺行為となれば、緊張感はマックスだ。何しろ金額がバカでかい。ミスったら一生の終わりだ。

地面師詐欺の話は、それだけで最高に面白い。だから、本当はそれ以外の部分はそぎ落としてもよかった。そのほうが、視聴者も集中できる。

だが、「地面師たち」のドラマでは、余計なシーンが多かった。ハリソン山中のサイコパスな殺人はやりすぎだ。原作がそうなっているのだろうが、ドラマではドラマらしくそぎ落としてもよかったと思う。

視聴者は、地面師たちの詐欺行為を見ているだけで十分満足するし、逆に、それ以外のシーンは余計だ。また、エロティックなシーンもやりすぎだ。

ここまでやると、作品がとたんにB級作品とみなされても仕方ないだろう。「男が作った男のための作品」と揶揄されても当然だ。もっと視聴者に敬意を示したほうがいい。

「この作品は、何を言いたいのか」が分からない。観ていて単純に面白いと思ったが、次の作品も似たようなものなら、おそらくがっかりするだろう。

次は「地面師たち ファイナル・ベッツ」という原作がすでに販売されているので、おそらくドラマも制作されるだろう。編集者は「暴力とエロを入れれば売れる」と思っているのだとしたら、それは間違いだ。いや、暴力とエロを歓迎する読者も多いだろうが、グローバルな評価を目指すならば、地面師の話に特化すべきだ。どこの出版社かと思ったら、集英社か。エンタメの方向に傾きがちな集英社だが、もう少し上を目指してもよいのでは?と思う。

現に、残虐な場面、エロティックな場面を毛嫌いするレビューも多かった。

まあ、どこの層に向けて作品を作るかを見極めることだ。グロとエロが好きな男性をターゲットとしているならば、次の作品は、女性はもちろん、一作目でうんざりした層には届かないだろう。

もっと高次元なレベルでの「ウケ」を狙ってほしい。グロとエロに頼らなくても高評価は得られるのだ。

スポンサーリンク

どちらも実話を基にしているが

「極悪女王」と「地面師たち」はどちらも実話を基にしている。

「極悪女王」は1980年代の日本女子プロレスの時代を忠実に描いた作品だ。

「地面師たち」も2017年に実際に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」を基にした作品だ。

どちらも実際の話だが、「極悪女王」のほうは、余計な話をほとんど入れていない。もちろん、脚色はあるが、大きな幹に枝葉をつけたようなものだ。

だが、地面師たちは実在の事件に脚色しすぎた。大きな幹に、さらに太い枝を何本も無理矢理つけて、どれが本筋だか分からなくしている。

物語には、大きくてどっしりした幹が一本あれば十分だ。視聴者は、枝分かれした太い枝を見るたびに、この木はどこへ向かおうとしているのか混乱する。

実話を基にしているなら、なるべく大げさな脚色はするべきではない。なぜなら、「事実は小説よりも奇なり」だからである。事実を忠実に再現するのが、実は一番面白い。NHKのドキュメンタリーが、どんなドラマよりも面白いのはそのためである。

映画の制作者は、もしも袋小路に迷いこんだら、NHKの骨太のドキュメンタリーを見るがよい。本質が見えてくるだろうし、一視聴者として多くのヒントを得られることだろう。

スポンサーリンク
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次