ドラマ「アンナチュラル」の舞台は、異状死や犯罪による死体を解剖して死因を解明する研究機関「UDIラボ」である。ここでは所長の神倉保夫、法医解剖医の三澄ミコト、中堂系、臨床検査技師の東海林夕子、そして記録員として働く医学生の久部六郎らが勤務している。
馬場路子(ばば みちこ・35歳)= 山口紗弥加:渡の婚約者
高野島渡(たかのしま わたる・35歳):野村修一:出張から帰国後、2週間後に自宅で突然死した男性。
高野島健一(たかのしま けんいち)= 野添義弘:渡の父
高野島響子(たかのしま きょうこ)= 長野里美:渡の母
敷島由果(しきしま ゆか)= 田中こなつ:渡の同僚
敷島直美(しきしま なおみ)= いしのようこ:由果の母
関谷聡史(せきや さとし・33歳)= 福士誠治:ミコトの恋人
駕籠武(かご たけし)= 村井國夫:「東央医科大学病院」院長
高野島 渡の突然死から始まった
ある日、中年の夫婦がUDIラボを訪れる。彼らの息子である高野島渡が突然死し、警察医からは「虚血性心疾患」(心不全)との診断を受けたが、納得できずに死因究明を依頼したのだ。
高野島渡は自宅で倒れて亡くなっていた。見つけたのは、連絡が取れないことを不審に思ってやってきた恋人の馬場路子。
外傷も争った形跡もなく、室内に不審な点はなかった。その場で簡易検査を行い、「虚血性心疾患」と判定された。だが、息子の死を不審に思い、解剖をUDIに依頼してきたのが、渡の両親だというわけだ。
ミコトたちが高野島を解剖したところ、心臓には異常は見られず、「虚血性疾患」ではないことがわかった。ミコトたちの解剖結果、「急性腎不全」の症状が確認される。問題は、なぜ急性腎不全になったのか、ということだ。毒物が原因の可能性を考え、さらに詳しい検査を行うが、特定の毒物は検出できなかった。
渡の同僚 敷島由果(ゆかりん)も突然死
そんな中、高野島の同僚である女性、敷島由果(通称ゆかりん)が原因不明の突然死を遂げていたことが発覚する。偶然にしてはあまりにもおかしい。
ミコトたちはゆかりんの母に会いに行く。ゆかりんの遺体は、すでに火葬された後だった。がっかりするミコトたち。
ミコトの恋人・聡史(さとし)
ミコトには3年付き合っている恋人がいる。関谷聡史(福士誠治)。仕事が長引いていつも約束の時間に遅れるミコトを、温かく迎えて見守る優しい男だ。
「この間の話、考えてくれた?」聡史はミコトに問う。結婚の前段階、お互いの両親に会わせるという話だった。
ミコトは珍しく実家に帰った(普段は一人暮らし)。買ってきたビールを出しながら、母(薬師丸ひろ子)と弟(小笠原海)に「こんど、付き合ってる人を連れてくる」と言う。
「おめでとう!」と母は大喜びだ。
母は大喜びだが、弟は少し違った。
「姉ちゃんのこと、その男本当に知ってるの?」
「私の家はここだけ」ミコトがポツンと言った。
渡の死因、薬毒物は不明
渡の死因を究明するため、スクリーニングテストを行ったが、役毒物は出てこなかった。だが、スクリーニングテストで判明できる薬毒物は200種類まで。たとえば、フグの毒はこの中に含まれていない。
つまり、あとは疑われる毒物をひとつひとつ調べていくしかない。ミコトたちは高野島渡のアパートに向かい、疑わしい食べ物や物品をしらみつぶしに調査した。
ミコトたちは高野島のアパートで調査を行い、彼の婚約者である馬場路子と出会う。驚くことに、彼女の仕事は劇薬や毒物製品の開発であった。
もし彼女が「名前のない毒」という、まだ誰も知らない毒物を作っていたとすれば、これまでの毒物鑑定システムでは検出できず、完全犯罪が成立してしまう可能性がある。
渡の死亡時、馬場路子は一人で在宅しており、アリバイはない。
馬場路子がお菓子にエチレングリコールを入れた?
高野島渡と馬場路子は同じ会社で働いている。路子は薬毒物の研究者であり、毒物を手に入れられる立場だ。
一方、会社では、渡とゆかりんはつきあっていたという噂があった。それを知った馬場路子が、二人にエチレングリコールを何かに忍ばせて毒殺したのでは?という推察が立った。
エチレングリコールは甘みがあるので、お菓子に入れたのではないかと思ったミコト。渡の家にあったお菓子を思い出し、薬物検査にかけた。
だが、お菓子からエチレングリコールは採取されなかった。さらに、高野島からの検体からもエチレングリコールは出てこなかった。
死因究明はゼロから出発だ。いくら調べても手がかりは無し。ミコトたちは袋小路に入ってしまった。
死因は高野島の出張先にあり
どれだけ調べても死因が見つからないミコトは、3000件の解剖経験がある相棒の中堂(井浦新)に相談に行った。中堂は「聞くならこいつに聞け」とパソコンを指さした。パソコンには、世界中の医学に関する情報が検索できるシステムが入っている。
高野島のお菓子は、出張先のサウジアラビアで購入したものだったことが分かった。ミコトがPCで調べると、サウジアラビアでMERSコロナウイルスが流行していることが判明した。
高野島は取引先のゆかりんと商談をしているとき、すでに咳をしていた。ゆかりんが高野島とつきあっていたのは、単なるデマだった。高野島はMERSに感染していたことが、PCR検査で分かった。とすると、高野島がサウジアラビアでMERSに感染したのではないか?
高野島が商談で咳をしており、ゆかりんにも感染したと考えられた。
高嶋渡、MERSを海外から持ち込んだと日本中から非難される
その事態に気づいたメディアは蜂の子をつついたように大騒ぎとなった。高嶋渡が日本にMERSを持ち込んだ張本人と特定され、高嶋の両親まで非難されることとなった。
帰国して3日後に東央医大で検診を受けていた高野島
高野島の恋人路子が、ミコトに「高野島は帰国して3日後に、東央医大で健康診断を受けていて、健康状態は良好だった」と打ち明けた。
だが、MERSウイルスは通常の健康診断では見つからない。
高野島が接触した可能性のある職場の人間とともに、東央医大で接触した患者や医者も感染の疑いがあることが判明した。PCR検査の結果、すでに大勢の人間がMERSコロナウイルスに感染していることが分かった。
MERSはサウジアラビアから持ち込んだものではなかった
路子はミコトに、高野島とは帰国翌日に会ったことを話した。ピン!ときたミコトは、その時の二人の状況を細かく尋ねた。
結果、路子は高野島との濃厚接触があったにも関わらず、MERSウイルスに感染していないことがわかった。
ということは、高野島がMERSに感染したのは、その後のことだ。高野島は帰国3日目に、東央医大で健康診断を受けている。東央医大にはコロナウイルスの研究チームがある。
高野島が感染させたのではない。高野島は東央医大で感染したのだ。
取引先のゆかりんと高野島が接触したのは、東央医大で検診を受けた後だった。
東央医大では入院患者の死亡数が倍増していた
だが、東央医大でMERSに感染したという証拠がない。どうやって調べれば…と思っていると、中堂が一枚の紙を差し出した。
葬儀屋の木林(きばやし)に調べさせた、東央医大のここ最近の死亡データだった。葬儀屋の間ですでに話題になていた。東央医大では最近死者が多いと。
実際、先月の頭から、東央医大での入院患者の死亡人数が倍増している。先月と言えば、高野島が検診に行く1か月前である。死因も、MERSウイルス感染を疑わせるものばかりである。
火葬ギリギリで患者の死因を特定
東央医大で不審な死を遂げた19人目の患者が、その日に葬儀の予定があると知ったミコトは、大至急葬儀場へ向かい、遺族に頼み込んで火葬を緊急停止した。
怒り出す遺族に頭を下げて理由を話し、解剖の許可を取る。解剖結果、男性の死因はMERSだった。
駕籠武(かご たけし・村井國夫)「東央医科大学病院」院長は、ようやくコロナウイルス感染の隠ぺいを認めた。
それと同時に、高野島渡は最初の感染者ではなく、彼もまた被害者であったことを公表し、人権を取り戻すところとなった。
約束に遅れたミコトは恋人から別れを告げられる
その日は、ミコトが恋人・聡史の両親と会う約束をしていた。大幅に遅刻して待ち合わせ場所に来てみると、聡史が一人で座っていた。両親はとうに帰ったという。
「今日ぐらいは、こっちを優先してほしかった」という聡史。「これまで3年付き合ってきたけれど、君とはなぜか距離がある気がする」
聡史は、そう言ってミコトから去っていった。二人は別れたのである。
聡史が感じていた距離感とは、何が理由だったのだろうか。