【柚木さんちの四兄弟。】第30話:祖父の家

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淡々と日記を書いていた岳ちゃんんでしたが、柚木家に突然、思いもよらない電話がかかってきました。

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目次

突然の呼び出し

「今度の連休どこ行きたい?」

そんな話で盛り上がっていたある朝のこと。隼は叔父さんから電話を受けた。

「今度の連休、うちに来てくれ。おやじが来いって言っているが、理由は分からない」

叔父は父の弟だ。両親の葬儀のとき、小さい岳を引き取ると言ってきた人だった。何だろう、何の用事だろう。

父の実家は豪邸

祖父の家、つまり父の実家は地方の名士だ。父は高校を卒業するとすぐに家を出て、そのまま帰らなかった。

立派な門の呼び鈴を押すと、がーっと木の扉が開いて家政婦の女性が出てきた。

「はい、伺っております。春一お坊ちゃまのところの。」

父はお坊ちゃまと呼ばれていたのだ。

四兄弟は離れに案内された。

「どうぞ、こちらの部屋をお使いください」と通された部屋をみて、全員面食らった。

「すごい!高級旅館みたいだ!」

長い廊下を、湊は徒競走のように走っていた。それをたしなめる岳ちゃん。

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無口な叔父さん

そこへ、叔父さんがやってきた。父は会合で町に行っていて、夕方には戻るそうだ。

叔父さんはお父さんと違って、無口なタイプ。でも、湊は物おじせず、叔父さんに話かける。隼は冷や冷やモノだ。

祖父登場

やがて食事の時間になった。案内されると、すでに食事が並んでいる。豪勢だ。「うわー、刺身もある!」と湊はおお喜び。

4兄弟の隣に別の座卓があり、叔父、叔母はそちらへ座っている。全員が座っていると、ようやく祖父が入ってきた。厳格そうな人だ。

4人が自己紹介をしたが、ひと言も何も言わない。食卓に座り、黙って食べ始めた。それが「いただきます」の合図のようだ。誰も何も言わず、食べ始めた。

いったいどうなってるんだ、この家は。先が思いやられる隼だった。

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跡取り候補

隼が風呂から戻ってくると、部屋で家政婦さんたちがおしゃべりしているのが聞こえてきた。

「夏次郎さんたち、もう子供は難しいから、あの子たちから跡取りを探してるんじゃない?」

「それ、ほんとですか?」隼はあわてて聞くと、家政婦たちはお茶を濁しながらあわてて出て行ってしまった。

その夜、寝床の中で隼は考えていた。

「早く帰らないと。そうしないと、弟たちが取られてしまう」

湊、夜中にトイレへ行く

湊は、夜中にトイレに行った。ついて行こうかと聞く隼に「オレはもう中学生だぞ!」と反発する湊。

ところが、家が広すぎてトイレの場所がどこだかわからない。いろいろなモノにぶつかったりしているうちに、祖父に見つかってしまった。

これ幸いと、湊は祖父にトイレの場所を教えてもらい、自分が用を足すまでそこにいてもらった。さらに、手をつないで部屋まで連れていってくれ、そして、このことは兄弟には内緒だぞと祖父に言ったのだった。祖父は分かったとうなずいた。

湊には、天性の人懐っこさがあるのだ。

朝食の手伝いをする尊

翌朝、少し寝坊してしまった隼が起きると、すでに誰もいなかった。あわててキッチンへ出向くと、湊が叔母と朝食を作っていた。

湊は、家でもやっている食事作りの手伝いを、同じようにこの家でもやっていたのだ。叔母さんも機嫌がよさそうだ。

岳と叔父さん

岳はと言うと、庭で盆栽を見ていた。「盆栽に興味があるのか」と尋ねる叔父に、「日本の伝統には興味がある」と答える岳。

「父親に全く似ていない」と叔父さん。

「子供のころの父は、どんなでしたか?」

「木に登っては落ち、蜂の巣をつついては刺される。簡単に言うと、問題児だ」

「父のことが、お嫌いでしたか?」

「好きでも嫌いでもない。兄弟とはそういうものだ」

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湊の竹馬

向こうのほうでは、湊が竹馬から落ちる音がした。あわてて駆け付ける叔父に、湊は「全然できない。教えてよ」とせがむ。

その様子を廊下から見ている隼のそばに、祖父がいつのまに来てこう言った。

「あの三男坊。」

「湊ですか」

「父親に似てるな」

隼、一時帰宅

そのとき、隼に一本の電話がかかってきた。学校からで、至急の用事ができてしまい、隼はすぐに戻らなければならなくなった。

「すみません、なるべく早く戻ります」

湊は「ちょっと家に寄って、オレの着替え取ってきてくれよ」と頼んだ。

それでは、と大急ぎで走っていく隼の後ろでは、「じゃあ、かくれんぼしようぜ。誰が鬼やる?」と湊の楽しそうな声が聞こえる。

なんだか胸騒ぎがする隼だった。早く用事をすませて、叔父の家へ戻らないと。

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