戸神はアリアケのハヤシライスをパクった。それで大成功した。「戸神のおやじが犯人だよ!」、もどうやって証明する?指紋も遺留品も残っていない。事件解決に向かって一歩も前に進むことのできない功一、泰輔、静奈。
流星の絆:第6話の登場人物
- 功一: 静奈の兄であり、事件の真相を追い求めるリーダー。
- 泰輔: 静奈のもう一人の兄であり、功一と共に事件解決を目指す。
- 静奈: 矢崎信郎の娘であり、行成への感情に揺れる。
- 戸神行成: 戸神政行の息子であり、ハヤシライスの復活に情熱を注ぐ。
- 戸神政行: 初代とがみ亭のハヤシライスの味を盗んだ疑いがある人物。
- 矢崎信郎: 静奈の実父であり、有明夫婦殺人事件に関する秘密を抱える。
- 柏原: 事件を追う刑事。
- 萩村: 柏原の同僚刑事。
ターゲット変更!
ターゲットは変更された。今までのターゲットは戸神行成。目標は1000万。これからのターゲットは戸神政行。目標は、有明夫婦殺人事件の証拠だ。
揺れる心
静奈の心は揺れていた。人柄がよく、誠実で、仕事にも熱心な行成をだましていることに、申し訳なさを感じ始めていた。
「しっかりしろ。あいつはオレたちの敵の息子なんだぞ。」と功一が静奈を諭す。
「同情してどうすんだよ。」「分かってる」と静奈。だが、静奈の表情は暗いままだった。
静奈の本当の父親
静奈は、母の連れ子だった。実際の父親は矢崎信郎だ。母の塔子(りょう)が水商売をしていたときの客で、その時にできた子供だった。
その矢崎信郎に、柏原が呼び出されていた。
「あいつは、私に自首しろと言うんです。」あいつとは、妻の矢崎秀子のことだ。
矢崎は一冊の古いスクラップブックを柏原に差し出した。スクラップブックには、有明夫婦殺人事件の記事がびっしりと貼られていた。
「あいつは知ってたんです、何もかも。私のことを疑ってたんです、14年も。」
1993年11月18日。塔子は矢崎を呼び出し、金に困っているので貸してくれと頼んだ。矢崎は自分の「けじめ」として15万渡した。それを、矢崎の妻は「塔子に脅迫された」と思い込んでいたのだ。
矢崎は、妻と離婚して塔子と一緒になろうと心を決め、金を持って塔子を訪ねた。すると、店の前で塔子の息子たちが出てきた。その時矢崎は初めてしった。塔子には、息子も旦那もいたのだと。
それも知れず、矢崎はずっと塔子に養育費を払い続けていたのだった。
矢崎の妻は、静奈に会ってお詫びがしたいと言う。功一は言った。
「あいつはまだ、知らないんです。」
時効まであと1か月
功一と泰輔は焦っていた。時効まであとわずかなのに、戸神政行と父親(有明幸博)の接点がどうしても見つからなかった。
矢崎の奥さんは夫が犯人だと言う。筋道は通っているような気がするが、どうもしっくりこない。それよりも、彼女が静奈に会いたがっていることが問題だ。
早く静奈に本当のことを話さなければ。功一は「今夜話す」と泰輔に約束した。
元祖ハヤシライス復活のプランが…
戸神行成は、静奈に会っていた。
「麻布店で、初代とがみ亭のハヤシライスの味を復活されるプランが、白紙に戻りました。」
「それは、残念です。とてもおいしかったのに。」
「実は父に、あなたのお友達の店のことを話しました。すると、父は『どこの?なんという店?』と。あんな深刻なオヤジの顔を見たのは初めてでした。その次の日ですよ。ハヤシライスをメインにするプランが覆されたのは。」
「私は納得できないわ。」静奈はきっぱり言った。「それに、お父様だって、その味を誰かに教わったのかもしれないし。」
ハヤシライスはパクられた
行成は、自分でオリジナルのハヤシライスを考案するため、静奈を連れて功一の働くカレー店へやってきた。もう夜中であるが、厨房を貸してほしいと言う。
静奈は功一と初対面という設定だ。上の部屋では、泰輔がやきもきしている。
「とがみ亭のハヤシライスが、アリアケの味に似てるって聞いたら、すぐに政行はハヤシライスの味を変えさせた。」
「ってことは、とがみがアリアケの味をパクったってことだ。それで父ちゃんを殺したんだよ。」
でも、二人が以前から知り合いだという証拠が何もない。証拠がなければ、警察も動きようがない。二人の考えは、右往左往していた。
どうにかして、証拠を警察につかませないと。でも、どうやって?
行成、ハヤシライスを自分で作る
厨房では、行成がハヤシライスの研究に余念がなかった。
「どれもすごいおいしいけどな。」と功一は行成に言った。行成は、4種類のハヤシライスを功一に試食してもらっていた。功一は心の中で「早く終わってくれ」と叫んでいた。
「高峰さんは、どれがいいですか?」と行成。「私はこれがいいわ。」
「これは魚介のスープです。僕もこれが一番好きです。」
これで決まりだなと、喜ぶ功一。だが…
「ダメです!彼女が泣いてない!彼女が泣くまで、僕、あきらめませんから。」
なんとかウソ泣きをした静奈。行成は素材を探しに市場へ出かけていった。
功一と泰輔は、静奈の気持ちが徐々に行成に傾きかけていることに気づいていた。
功一はその夜、静奈に本当のことを言うことができなかった。
真実
真実を知った静奈
翌朝、二人は外で言い合いになっていた。静奈への気持ちは兄としてなのか、それとも…。もしも真実を言ったら、これまでの関係が壊れてしまうのではないか。そんな心配を功一はしていた。
「お前、覚えてんだろうな、親殺されてんの。3人で星なんか見に行ってる間にさ。両親殺されてんだよ!」功一は言った。
「静奈のおやじは生きてるよ。」
「おやじじゃねえよ。責任取れねえくせに子供産ませて、金だけ送ってきて。そんなやつがおやじだって言えるかよ!」
「どういうこと?」静香が言った。静かはそばに立っていた。二人の会話を聞いていたのだ。
「ねえ、説明してよ!ちゃんと説明して!」
「ああ、今話したとおりだ。オレらはお前の、本当の兄貴じゃない。お前は母ちゃんの連れ子で、オレらは父ちゃんの連れ子だ。お前のおやじは矢崎っていう人で、その奥さんは昨日オレんとこに来た。お前に会いたいって。もちろん、会う必要はないし、戸籍の上ではお前はオレの妹だ。」
静奈は歩きだした。あとを追う泰輔。
「ついてこないで。一人で考えたいの。」そう言って、静奈は歩いて行ってしまった。
柏木と萩村、矢崎を訪ねる
柏木と萩村は事件を洗い出すため、再度矢崎家を訪ねていた。
「じゃあ、最後に。事件の日にアリアケを訪ねたとき、傘は持っていましたか?折り畳み傘?ジャンプ傘ですか。それとも、ビニール傘?」
「ビニール傘でないことは確かですよ。」と、矢崎。「嫌いなんですよ、だって貧乏くさいでしょ。」
柏木と萩村は、帰るときに矢崎をわざと外に誘い出した。車で待機している泰輔に顔を確認させるためだ。
「違うと思います。なんとも言えないけれど。」
矢崎秀子、金を渡す
矢崎の妻は、刑事が自宅を訪ねてきたことを知っていた。夫がもうすぐ逮捕されると信じ込んでいた。
彼女なりの気遣いで、泰輔に大金を渡した。「静奈ちゃんに渡して。功一君は、受け取ってくれなかったから。」
泰輔はお金を彼女に返した。「これ、直接本人に渡してください。今は無理だけど、そのうち、会いたいっていうかもしれないし。」
新生ハヤシライス、試食
行成は、新しく開発したハヤシライスを静奈に試食してもらっていた。静奈はおいしいと感想を言った。
さらに行成は、以前静奈から聞いた、友達の店の場所と名前を知りたいという。父が知りたがっていると。
静奈は答えた。「場所は、横須賀です。お店の名前は思い出せないけれど、友達の名前なら憶えています。矢崎さんです。矢崎静奈ちゃん。」
静奈は、友達のこととして、自分の思い出を話し始めた。
なんとなく、新しい家に来たことを覚えていること。
新しいお父さん、新しい二人のお兄ちゃんを紹介されたこと。二人のお兄ちゃんはとても優しくて、仲がよく、いつも静奈はお兄ちゃんにくっついていたこと。
そのお兄ちゃんたちが実の兄ではないと聞かされ、驚いたが、本当のお兄ちゃんよりもお兄ちゃんだと思ったことなど。
3人で屋上で星を見る
泰輔は、カレー屋の屋上に上がっていった。功一と静奈は寝転んで空を見ていた。泰輔は仲直りのしるしに、ビールを2本買ってきていた。
気が付くと、静奈はすやすや寝ていた。あの時と同じだ。
「静奈はさ、オレたちが思っていたよりずっと大人だったよ。」
「当たり前じゃん!21だよ!」静奈はいきなり起きて言った。3人、顔を見合わせて笑った。
ハヤシライスがまずい
行成は、家に帰って母に店の開店当時の状況を聞いてみた。母が当時のことを思い出しながら、「もう、大変だったわよ」と話し始めた。
店は全然繁盛していなかったので、政行は出前までしていた。スナック、喫茶店、雀荘、工事現場の詰め所など。あるとき喫茶店に出前に行ったとき、どこかのチンピラに、政行のハヤシライスはまずいと言われて、政行はやけくそになっていた。それから政行は別人になったように毎晩厨房に立ち、その時の暮れに元祖ハヤシライスが誕生したのだった。
思い出した、喫茶店の店主
功一と泰輔は、父親がよく通っていたという喫茶店(実はここでノミ行為が行われていた)を訪ねたことがあった。少しでも何か手がかりがあるかと思ったからだ。
その喫茶店の店主から、二人は呼び出されていた。思い出したことがあったという。「これだよ」
そう言って二人に見せたのは。「とがみ亭」のメニュー表だった。
なんでも、とがみ亭のハヤシライスを出前注文した政行が、「こんなまずいハヤシライスは食えねえ」と政行に言ったそうだ。「どこがまずいんだよ!」「まずいもんはまずいんだよ!」大喧嘩になったそうだ。
レシピを金で売ったのか?
功一、泰輔、静奈の3人は、どういうことかと思考をぐるぐる巡らせていた。
「それでレシピを盗んだのか?」「それだけで人を殺すか?」
功一はふと気づいた。「もしかして、二人はそれがきっかけで顔なじみになったのかも。それで、レシピを売った?父ちゃんは金に困っていたから。」
「でも、戸神も金に困っていたから、金は払えない。だから殺した?」
その線でいこう。3人は納得した。
功一は、秘策を思いついた。「泰輔、お前、父ちゃんの形見の腕時計、持ってる?」
戸神政行、メニューに」OKを出す
政行は、麻布店の新メニューのハヤシライスを試食していた。完全オリジナルのハヤシライス。初代のハヤシライスとは違う味だ。
政行はOKを出した。「ありがとうございます!」行成とシェフはホッとした。
店を出た政行は、自分の車のそばに何かが落ちているのを見つけて、拾った。
腕時計だった。
政行はそれを元の場所に置き、走り去った。
功一たちが、すぐに時計を取りに行く。父の時計に政行の指紋が、ついた。
終わりに向けて
真実が明るみに出る日が近づく中、功一たちは最後の決断を迫られる。果たして、彼らの努力は報われるのか、それとも新たな試練が待ち受けているのか。