海外で亡くなった方のご遺体を、国境を越えて遺族に送り届けるスペシャリスト、それが「国際霊柩送還士」。エンジェルフライトはそんな人たちが働く「エンジェルハース」が舞台だ。
エンジェルフライト:キャスト
結婚するならあなたの仕事のことを家族に言えない、と告げられた矢野。結婚生活が倦怠期のみのり。幸人のことをいまだに待ち続けている那美。そして、母との長い確執に悩む凛子。
エンジェルハースでは、人間模様の織りなす重厚なストーリーが繰り広げられている。
エンジェルハースのメンバーと家族: キャスト
伊沢那美(米倉涼子):エンジェルハースの社長
柏木史郎(遠藤憲一):エンジェルハースの会長
高木凛子(松本穂香):新入社員
柊秀介(城田優):遺体処置担当
矢野雄也(矢本悠馬):若手社員
松山みのり(野呂佳代):手続き担当
田ノ下貢(徳井優):運転手
足立幸人(向井理):那美の恋人(まだ謎に包まれている。行方不明)
伊沢航(織山尚大):那美の息子役・少年忍者/ジャニーズJr.
伊沢海(鎌田英怜奈):那美の娘役
高木塔子(草刈 民代):凛子の母親
エピソード6の特別キャスト
野間口徹:ボリビアの日本大使館員
宇佐美(飯田基祐):ボリビアで医師をしている
凛子の母、死す
凛子の母の訃報が届く
凛子に、母の訃報が届いた。エンジェルハースの事務所に直接連絡があったのだ。
「早くお母様のところへ行ってあげなさい」と那美。
急いで出かけようとする凛子に、柏木は言った。
「どこ行くんじゃい。お母さんはな、モコモコにいるんじゃ。チチカカ湖の近く。ボリビアじゃ。」
え?どこ?なんでそこに?
那美も凛子について行くことになった。ボリビアへ。
2か月前
2か月前、凛子は手術した母の元へ看病に行っていた。医者から、「持って、あと半年から3か月です。」と告げられた。
医者が「私からお母さんに話しますか?」と言われた凛子は、「いえ、私から伝えます」と答えた。
凛子は母に余命を告げないまま、病室を後にした。しかし、母は医者と凛子の会話を聞いていたのだった。
居酒屋「たまき」にて
エンゼルハースのみんなは、居酒屋「たまき」で帰ってきた凛子を囲んで酒を呑んでいた。
母の余命が半年から3か月と告げられたこと、それを母に言えないで帰ってきてしまったことを話した。
「最後に自宅で、親孝行してあげなさいよ。うまくやりなさいよ。」那美が言うと
「母は私を嫌ってるんです。私の出来が悪いから。」
「母は東大を出て、一流商社に入ったんです。離婚して、女でひとつで私を育てました。私は何をやってもダメなので、母にとっては失敗作。恥なんです。」
みんな神妙に聞いている。
「やることなすこと否定され、一度も認めてもらったことなんて無いんです。」
柏木が凛子に言葉をかけた。「おっかさんの家族はお前しかおらんのじゃけん、思う存分甘えさせてやるこっちゃ。」
「そうよ、きっと感謝するはずよ」とみのり。
「うん、愛されてないわけないんだから!」と矢田。
凛子は皆の言葉を聞きながら、どうも納得できないと感じていた。自分の母親には、それらの言葉は当てはまらないのではと感じていた。
凛子、実家に戻る
凛子は皆に押されて、母の看病のために実家に戻ってきた。母は自ら「ヨーロッパ家具輸入販売」の会社を経営していた。
「ぼーっと立ってないで座ったら。何か言いに来たんでしょ。」
母(塔子)は凛子の顔を見ることもなく、パソコンの前で仕事をしながら言った。
部屋は趣味のいいアンティーク調の家具がしつらわれ、落ち着いた上品な雰囲気だ。
何か口を開けばお互いに言い合いになり、「何も言うことなければ早く帰りなさい」と言われる凛子。
だが、塔子に発作がおき、苦しそうに薬を口に入れたのだった。凛子はただオロオロするばかりだった。
しばらくソファで横になっていた塔子は、「もう大丈夫よ、帰って。あなたじゃ何の役にも立たないから。」
凛子はムっとした。出ていくとき、塔子に言った。「半年から3か月だって。お医者さんが言ってた。」
「そう、意外と長いのね。」
塔子の強気な言葉を聞き、凛子は実家を出た。「また来る。」
まだまだ二人の間はこじれているのだ。
ボリビアにて
現地に行くことになった凛子と那美
「このままじゃ搬送もままならないし、現地に行かないと難しいでしょう。」
「私行きます」と凛子。「よし!行ってこい!」と那美。
柏木が口をはさむ。「ちょっと待て。ジャングルの奥地に一人で行かせるわけいかんじゃろが!」
「で、どうすんのよ?」
全員が那美を見ている。
「お前しかおらんじゃろが。」
こうして、那美と凛子のモコモコ行きが決定した。
ボリビア到着
乗り継ぎを入れて28時間。ようやくボリビアに到着した。那美はフラフラだ。
空港へ、日本大使館の戸部(とべ)が案内役として二人を迎えに来た。運転手も一緒だ。
ここからモコモコへは、さらに車で10時間かかると言う。
まさに「辺境」という言葉がぴったりの、異国の田舎道を車は延々と走っていた。
道中、凛子の頭の中に走馬灯のように小さい頃の記憶がよみがえる。
テストで97点をとっても成績が悪いと怒られたこと。なんであんな事もできないのかとなじられたこと。
そして、あの踏切。なぜ、私の自転車が線路に挟まったとき、あんな冷めた目で私を見ていたのだろうか。
最悪の別れ方
道中、凛子は那美に、母と最後に会ったときのことを話した。
塔子は、家の権利証を凛子に渡して「この家は売りなさい、大したお金にならないかもしれないけど」と言った。さらに、「せっかく大学に入れて、外資にも入れてあげたのに。勝手にやめて、わけもわからない葬儀屋なんかに。」
「葬儀屋じゃない!」
「死体を洗う仕事でしょ!どうしてそんなことやらなきゃいけないの?」
那美は自分の仕事をバカにされて我慢ならなかった。そこからはもう、お互い言いたい放題の、激しい口喧嘩に発展していった。こうなると、もうどうしようもない。お互いの関係が修復するどころではない。」
これが、生きている母と会う最後となったのだった。
一度始まると止まらない口喧嘩って、あるよね。
塔子の場合
塔子は、自分の人生を振り返っていた。結婚し、子供が生まれた。凛子である。
塔子は有名大学を出て、商社でバリバリ働いていた。夫とはうまくいかず、慰謝料も求めずに離婚した。娘を連れて出ていくとき、「泣きついてくるなよ」とまで言われた。
塔子は女手ひとつで立派に凛子を育てようと思った。だが、育休から会社に戻ると、「女ひとりで育てながら働くのは無理だろう。商社は厳しいからな。関連会社なら紹介するよ。」と言われ、退職を迫られた。
世の中は女にはまだまだ厳しい時代だった。塔子は必死にがんばり、恥ずかしくない子供に育てようと、無我夢中で生きてきたのだ。
塔子は一人、部屋でアルバムを見ていた。自分と凛子の思い出のアルバムだ。最後の一枚を、そっと手に取った。
母との再会
やっとモコモコに到着した。案内されたのは、小さな診療所だった。外国人の医者が一人いた。凛子は、ベッドに寝かされている母親と対面した。眠っているような死に顔だった。
しかし、なぜこんなところまで来たのだろう。
そこへ、もう一人の医者が戻ってきた。「お待たせしてすみません。」日本人だった。
「宇佐美と言います」と名乗った男を見て、凛子と那美は顔を見合わせた。「この人に会いに来たんだ。」
話をいろいろ聞くうちに、母がなぜここまで来たのか理解できた。
宇佐美とは飛行機の中で知り合い、二人とも話が合った。それから何回か食事をしたり、メールのやりとりをしたり。そんな仲だった。もう10年くらいの付き合いだろうか。
塔子の母は、ぼんやりと彼に恋心を抱いていた。死ぬ前に、好きな人に会いに行こう。行動的な塔子は、宇佐美がボリビアにいると知り、ついにここにたどり着いたのだ。
さて、二人の仲はどうなったのかというと…
「彼女には悪いことをしました。ちゃんと言ってなかったんです。」
「何を?」と那美
宇佐美は、向こうに座っている外国人を指さして言った。
「私の、今のパートナーです。」
凛子と那美はお礼を言って、母の遺体とともに日本へ戻ってきた。長い道中だった。
3週間前
凛子と気まずい別れ方をした塔子は、ある日東京にやってきた。エンジェルハースに挨拶に来たのだ。凛子は出張中で不在だった。
塔子は、スタッフたちと自己紹介しながら、楽しい職場だとすぐに気づいた。
遺体の処置をする場所も案内してもらった。凛子がどれほど懸命に仕事をしているか、説明された。
「凛子さんは、どんなご遺体も一生懸命やります。」
「ああいう子は、なかなかおりませんよ。」
那美と柏木の言葉を聞いて、自分がこの仕事をいかに誤解していたかを塔子は悟った。
夜は夜で、「居酒屋たまき」で塔子とスタッフたちはとても楽しい話で盛り上がった。
「こんなに笑ったのは久しぶり」と塔子。
最後に、塔子は那美に言った。「やっぱり、死ぬのは怖いです。」
時と場所は変わって、帰りのボリビアの空港。
凛子は何気に母の残したメモの裏側を見た。なんと・・・
母はエンジェルハースを訪ねていたのか。凛子は初めて知った。
塔子、日本へ戻ってくる
那美と凛子は、塔子の遺体とともに日本へ戻ってきた。さあ、これから彼らの仕事だ。
この前、居酒屋で一緒に酒をくみかわした塔子。皆は手を合わせた。
「凛子、あんたの出番だよ」と那美が言った。
凛子は、母を清め始めた。丁寧に、心をこめて、これまでの思い出とともに。
塔子の顔に、みるみる生気が宿ってきた。本当に生きているようだ。娘と母が会話しているようだ。母の魂は、今、ここにいる。
「辛かったのは、あんたのお母さんも一緒だと思うよ」那美はそう言って、一枚の写真を凛子に渡した。塔子がアルバムから抜いた、あの一枚の写真だった。
母はどんな気持ちでこの写真を抜いたのだろう。
凛子が写真を裏返してみると…
「娘に迷惑をかける」とは、塔子の人生最後のやり残したリストだった。塔子の最期の願いは、かなった。
号泣する凛子。
やっとお互いに分かり合えた母娘だった。
「母様。あなたの言うとおり、あなたに反抗したくて、私はここにたどり着きました。あなたのおかげです。ありがとう。」
塔子の棺にふたをし、みんなで手を合わせた。安らかにお眠りください、と。
那美、空港で刑事に声をかけられる
仕事が終わった那美はひとり、空港を歩いていた。そこへ、以前見たことのある刑事が声をかけてきた。
モロッコのサウルが亡くなったときの事案を担当した刑事だった。
刑事は思いもかけないことを言った。足立幸人(向井理)のことだった。
「あの事故で亡くなった二人、どちらもヤクザもんだな。ソタイ(組織犯罪対策課)に聞いたら、足立もなんか仕事をやらされてたんじゃないかと。」
「話それだけ?行くわ」と、歩き出した那美を刑事が止めた。
「足立幸人、ことによると、生きてるかもしれない。」
凛子は、思わず指輪を握りしめた。
エンジェルフライト、シーズン1はこれで終わりです。
シーズン2を期待しましょう!
足立幸人が生きて帰ってくることを信じて。
それまで米倉涼子さん、お身体をお大事に。病気が少しでもよくなりますように。私たちは、いつまでもお待ちしています。
米倉さんが難しい病と闘っておられることは、下の記事に詳細をまとめました。ぜひお読みください。