2024年10月スタート、NHKの土曜ドラマ「3000万」で、大人たちが欲を出してパニックになっている中、一人だけ冷静で正しく生きているのが佐々木家の長男・純一だ。純一を演じているのは味元耀大(みもとようた)。
両親があたふたしている中、一人静かに、一心不乱にピアノを弾いている純一の心の中はいかなるものだろうか。
この記事では、佐々木家の長男・純一と、純一を演じる味元耀大にスポットをあてて解説する。
ドラマで弾いているピアノは、すべて純一(味元)が弾いています。本番で弾いているのをそのまま流しているそうです。
ピアノの才能がある純一
ドラマの初頭は、純一のピアノの発表会から始まる。
父・義光(青木崇高)が以前バンドを組んでいた影響を受けているかどうかは分からないが、純一には音楽の才能がある。ピアノの先生も、純一には一目置いている。
今回発表会で純一はバッハを弾いたが、これからのことを考えると、ホンモノのピアノを買ってはどうかと、母・祐子(安達祐実)は先生に提案される。純一が今家で弾いているのは、電子ピアノなのだ。
「50万くらいからありますよ」と言われたが、その50万はなかなか簡単に手が出せる金額ではない。
純一はそれをよく分かっている。ピアノの発表会の帰り道、佐々木家の夫婦は車を走らせながらそのことについて話していた。後ろの座席では、純一が耳栓をしてスマホをいじっている。
祐子が「本物のピアノを買ってやりたい」と言うと、義光は「金がかかるし、ホンモノのミュージシャンていうのは、どんな楽器だってすごい演奏ができるもんだ」と、ピアノ購入に反対だ。
だが、純一は両親の会話を聞いていたのだった。
正直な気持ちが勝った純一
純一は、接触事故を起こした女性(ソラ)が持っていたバッグの中に大金があることを見てしまう。思わずそのバッグを家に持ち帰ってしまった純一。
後で祐子に見つかり、「こんなことをしてはいけない!一度でも失敗すると、今はどんどんインターネットで拡散されて、二度と取り返しのつかないことになる」と、こんこんと説教される。
泣きながらごめんなさいという純一。お金は奥島さん(懇意にしている刑事)に父から渡しておくから安心するようにと、祐子は言った。
純一は素直にその言葉に従ったが、実は義光(父)は警察に行ったことは行ったが、奥島にバッグを渡しそびれてしまい、再度家に持ち帰ったのだった。
純一は、帰ってきた父親に「お金は返してくれたか」と聞き、義光は「もちろん、返してきた、もう大丈夫だよ」と純一を安心させる。
純一の罪は、お金を持ち帰ってしまったことだ。だが、両親に正直に話し、お金を返したことで罪は終わりだ。まさか自分の両親がウソとついているとは夢にも思わなかっただろう。
家の経済をよく知っている純一
純一は、家の経済がそれほど豊かでないことは承知している。一軒家に住んでおり、食べるのに事欠かないが、ゼイタクな暮らしは望めないということは、小学生の純一もよく分かっている。
だから、朝食にシャインマスカットが出てきたときは驚いていたし、父親が朝からコーヒー豆を挽いて本格的なコーヒーを楽しんでいることも不思議だと思っていた。
親が何気にしている行動を、子どもはちゃんと見抜いているのだ。「いつもと違う」と。
ピアノにお金がかかることも知っている。ピアノ教室のお母さん同士でランチ会をするときも、自分の母だけが呼ばれない理由もなんとなく分かっている。お金がないからだ。
また、電子ピアノの調子が悪くて「ソ」の音が出なくても、文句ひとつ言わずに一生懸命練習している。「大丈夫だよ」と言いながら。ホンモノのピアノなんて我が家にはゼイタク品だと、子ども心に分かっていたのだ。
奥島さんに「ごめんなさい」と謝った純一
夜、佐々木家に奥島刑事が来て、前から約束していたギターを義光にもらいにきたときのこと。
奥島が帰ろうと玄関に立ったとき、二階から純一が駆け下りてきて、「奥島さん、ごめんなさい」と泣きながら謝ったのだった。
純一は、まさか父がお金を返していないなどとは想像もしていなかったので、単純に「あの時はお金を持って帰ってしまってごめんなさい」というつもりで謝ったのだった。
あわてふためく両親を前に、奥島は「大丈夫だよ、あの時は驚いて何も考えられなかったんだよね、心配しなくていいよ」と優しく慰めた。奥島も、気持ちが動転していて何も思い出せないだろうという思いだった。まさか、純一がお金を持ち帰ったことなど、夢にも思わなかっただろう。
子どもは素直で純粋だ。それを捻じ曲げてしまうのは、哀しいかな、両親だった。
両親の喧嘩を聞いていた純一
純一は、ゲームをするとき必ずヘッドフォンをしている。ゲームを集中して楽しむためでもあるが、もっと大きな理由がある。両親の喧嘩を聞きたくないからだ。
ヘッドフォンを外すと、両親の寝室から言い争う声が聞こえてくる。純一はそれが嫌だった。
両親は何かを隠していることを、純一はおぼろげながら知っていた。具体的なことは分からないが、いつもごまかしている。両親は何かを隠し、ウソをついている。
まっすぐな眼差しの味元 耀大
そんな素直な純一を演じるのは、味元耀大(みもとようた)だ。味元はTBSの日曜劇場で大人気を博したドラマ「VIVANT」で、乃木憂助(堺雅人の)幼少期を演じている。乞食のような路上生活をしていた、あの少年だ。
味元はまだ何色にも染まっていない、純粋な少年なのだろう。だから、どんな役にでも染まることができる。色が無いようで、色がある。
純一は決して陽気な性格ではないが、どちらかというとポジティブで、のんきでドジな両親を見ながらしっかりと育っている。そんな役にドはまりしているのが味元耀大だ。
味元には底知れぬ才能を感じる。まだドラマは始まったばかり。これから味元がどのような純一を見せてくれるのか、追記しながら実況中継していきたい。