ついに始まってしまった、面白すぎるNHKの土曜ドラマ「3000万」。毎回脚本家が違うと聞いたときから、かなり面白い試みだと思い、ドラマが始まるのを楽しみに待ってた。
始まったドラマは予想を裏切ることなく、息をつくこともできぬ展開。
この記事では、ドラマに出てくる重要人物のチンピラ二人組の一人、長田という男と、長田を演じる萩原護について解説する。
3000万を追うが、どこかのんきな長田
NHKは、「今まさに起きている事件」を題材にした、タイムリーなドラマを制作することが多い。「相棒」もそうだが、なぜ今ニュースになっていることを、少し前から制作しなければならないドラマとして仕込むことができるのか、不思議でならない。
それだけ、ドラマ陣は今という時代を読み込み、ドラマの放映時と今というリアルの時代が「同時」になるように、ドラマを制作している。
急いで制作している感じは全くせず、緻密に、繊細に、丁寧にドラマを作りこんでいる姿は見事というしかない。
そんなドラマの「ちょっとのんきな」チンピラ二人組。のんきに見えるが、もしかしたら実際の「雇われ強盗」はこんな感じなのかもしれない。
いわゆる「オレオレ」詐欺の進化系で、最近は電話をすると警官に待ち伏せされるリスクがあるので、金があると知ったら直接強盗に押し入るケースが多い。ドラマの蒲池と長田も、間違いなくアプリで応募して知らないうちにどっぷりつかってしまったタイプの強盗犯だ。
いや、ドラマでは蒲池と長田は強盗犯ではなく、金を持ってとんずらしようとしたソラを、坂本から命令されて追いかける役目だ。長田はまだ大学生で、「簡単に儲かるバイト」とでもうたったSNSの募集に引っかかった口だろう。
この世界から抜け出せないと感じた長田
坂本からソラを病院から連れてこいと命令された蒲池と長田は、どうすればソラを病院の外に連れ出せるかと、無い頭をひねりながら思案していた。
まず、(おそらく)ドン・キホーテに行って医者になりすますための白衣でも買おうかと思ったが、どう見ても医者には見えないことに気づく。
結果考えたのが、長田が清掃業者になりすまして病院に潜り込むという作戦だ。この方法はバレずにうまくいった。確かに清掃員に見える。しかし、これから先はどうすればいいか、超えるべきハードルは高かった。
車の中で作戦を立てる蒲池と長田。蒲池が言う。
「オレもいろいろ経験してるけどよ、この仕事はやべえよ。ろくなことになんねえ」
「抜けられるんですかね。逮捕されるぐらいしか、抜けられる道ないと思うんですけど。オレたちも逃げますか?」
長田がつぶやくように言った。
長田には自分の行く末が見えているようだった。
病院での作戦失敗
蒲池と長田は作戦を立てた。まず、病院の非常ベルを鳴らす。病院がパニックになっているときに、どさくさに紛れてソラを連れ出すという作戦だ。
確かに、非常ベルを鳴らすと病院のスタッフや看護師たちはパニックになっていた。だが同時に作戦を立てている者がいた。祐子と義光だ。義光がお札を病院のトイレにまき散らし、血(のようなペンキ)を飛ばして警備の警官を誘導する作戦だ。
祐子は病室に入り、3000万を安全に管理する代わりに、手数料として1000万を要求した。祐子と義光の作戦はそれだけだったのだが、ソラが病院の外に連れ出すことを条件に出してきたのが想定外だった。祐子は仕方なく、ケガしているソラを連れ出して自分の車に乗せた。そこから思いも知れぬ、さらなる事件につながることは想像もしていなかったに違いない。
車の中で長田を待っていた蒲池は、ソラが車に乗って出ていくのを発見し、急いで追いかけた。後から出てきた長田が間抜けに見えて仕方がなかった。さらに、同じように置いていかれた義光も、車が無いことに気づき、途方にくれる。二人でスマホをかけている様子は、ギャグでもある。
この後に起きる恐ろしい出来事を、この二人は全く知らない。
長田役は萩原護(はぎわらまもる)
このドラマで、大学生の雇われチンピラの長田を演じているのは、俳優の萩原護(はぎわらまもる)である。
萩原は最近のドラマに引っ張りだこで、次から次へとドラマ出演が続き、休む間もないだろう。
7月はじまりのドラマ「新宿野戦病院」では看護師役として出演している。
さらに、その前のクール、2024年1月始まりの月9「君が心をくれたから」で、花火工場で働く飛岡雄星の役を演じている。
萩原護は2003年生まれ、現在(2024年)まだ21歳。この若さで、これだけの幅の役を演じているのだから、すごい俳優さんという他ない。
自分の色を消して、見事にそのドラマの役になりきっている。プロとは言え、ここまで「ドラマの人」になりきるのは努力と才能、そして他の役者さんとのコンビネーションのうまさも絶妙なのだろう。
3000万では、大金をネコババしてしまった佐々木家の今後が大いに気になるところだが、同時に「雇われチンピラ」の長田もどうなるか、ドキドキしてしまう。21歳ということは、リアルの長田と同い年か。まさに適役だ。
おそらく、萩原は「自分だったらどうするか」という気持ちを長田に重ね合わせ、彼自身もドキドキしながら展開を楽しんでいることだろう。
ドラマの進行とともに、この記事もどんどん追記していきます。