前回の話:
祐子は湖でソラと落ちあい、自分の取り分の1000万を渡してもらった。だがそのとき、祐子を追ってきた坂本と長田につかまり、3000万は彼らの手に渡った。ソラは長田に殴られ、車でどこかに連れていかれた。
金もない。坂本にも住所を知られている。おまけに、警察に金を返していないことを純一に知られてしまった。一巻の終わりの祐子と義光。さて、どうなる?
1000万のノルマ
祐子は、コールセンターの仕事を辞めた。先日の顧客対応で暴言を吐いてしまったために、実質的には「辞めさせられた」形である。祐子は無職になった。
坂本は、3000万取り返したからと言って佐々木夫婦を逃したわけではなかった。佐々木家に来て、「1000万用意しろ」と迫る。坂本には、佐々木家の住所は知られていたのだ。
坂本たちが3000万取り返したと言っても、実は義光たちは250万使ってしまっていた。ソラが入院していた病院のトイレにばらまいた札が50万、ピアノで200万。
250万返せばいいと思った義光だが、甘かったようだ。坂本から要求された金は「1000万」だ。1000万を3日で用意できるわけがない。そう義光が言うと、坂本が祐子に向かって言う。
「あんた、コールセンターで仕事してるんだっけ?」坂本のひと言で祐子の仕事が決まった。
祐子は1000万の返済(というのもおかしいが)のために、「かけ子」として働くことになった。(働くというのもおかしいが)
祐子、かけ子になる
祐子は、かけ子の集まる場所へ案内された。ここでは、末次という男がかけ子の指導役だ。(こういう男が一番怖いかもしれない、という雰囲気を醸し出している。)
祐子は、「たたき」の情報集めを担当することになった。「たたき」とは「強盗」を意味する。つまり、リストの電話番号に片っ端から電話をかけて、相手の家にどれくらいお金があるかを聞き出す仕事だ。
コールセンターで働いていた経験が役に立った。祐子はこの仕事に向いていた。
末次から「声がいい」とほめられる始末だ。
祐子は悪いこととは思いつつ、やるしかないと覚悟を決め、渡された電場番号のリストに、淡々と電話をかけ続けた。
佐々木家、親子断絶
祐子は毎日かけ子の仕事を続けていた。義光は交通整理の仕事に戻ったが、家では夫婦のいさかいが絶えなかった。純一は親の前ではピアノを弾かなくなり、部屋にこもりきりだ。自分の部屋から出てくるのは食事の時だけだが、両親から何を話しかけられてもしゃべらなくなった。
信頼していた親にだまされたわけだ。そんな親とは口もききたくないだろう。
一方、野崎と奥島は、レンタカー店の防犯カメラに坂本と長田が映っているのを確認した。おそらくは、ソラも蒲池も組織を裏切って坂本に捕まったのだろう、それが刑事の見立てだった。
長田、ワルに染まる
長田は坂本の指示を受け、強盗に入ろうとしていた。待ち合わせ場所に立っている男は、こういう仕事が初めてである。
この前まで坊ちゃん狩りでおどおどしていた長田が、少しの間にすっかり変わってしまった。髪型も前で分け、服装も変わってしまった。もうオドオドすることもない。ワルも回数を重ねるとこうなるのだろう。長田は今日、実行犯のリーダーだ。
(長田が変わってしまって寂しい気がする。)
祐子、初めての「お手柄」
祐子がかけ子をしている部屋は、こんなマンションの一室だ。雑居ビルの暗い部屋ではない。列記とした「住居専用マンション」だ。しかもなかなか豪華だ。
祐子がいつものように電話をかけていると、突然クラッカーがパン、パン!と鳴った。
「ハシモトさん(祐子はここではハシモトと呼ばれている)、おめでとうございます!ハシモトさんの案件、昨日一件成功しました!」
おそらく、祐子が聞き出した情報を元に、昨日長田が強盗に入ったのだろう。みんなが拍手している。
祐子はコールセンターで働いた経験が活きていた。思わぬところで力を発揮している。なんとも言えないが。
祐子と一緒に入った小太りで眼鏡の男・江藤はまだ一件も取れていない。電話のかけ方のコツを祐子に教えてもらえと、末次に言われていた。
かけ子に支払われる報酬は1割。末次は、祐子に142万円を渡した。つまり、強盗で1420万を手にしたということだ。だが、祐子に渡した金は単なる見せ金だった。祐子のノルマである1000万の返済分として、すべて末次が取り上げてしまった。
義光と祐子の戦略
義光は、組織のボスを捕まえればいいんじゃないか?と祐子に提案した。ボスが捕まったらかけ子も終わる。奥島さんに匿名で通報するのはどうだろう。
思い出したように祐子はスマホを出して義光に見せた。3000万の入ったバッグにGPSを仕掛けていたことを思い出したのだ。これを追えば、バッグの場所が分かる。
二人はバッグの追跡をしながら、ひとつのビルにたどりついた。そこが組織のアジトかもしれない。さらに、義光は近くのレストランに坂本がいるのを目撃した。おそらくは、このレストランが金の受け渡し場所だろう。
祐子が金の受け渡し日を探り出し、それを奥島に電話で伝えた。「音声読み上げアプリ」を使って。
奥島への電話は、公衆電話から警察へかけたものだった。いよいよ明日が決行日だ。
金の受け渡し
当日、義光と祐子はボスらしき男(大津)を車で追ったが、大津はレストランではなく、ショッピングセンターのベンチに腰掛けて誰かを待っていた。おそらく坂本を待っているのだろう。
大急ぎで、場所の変更を奥島へ伝える義光(また音声読み上げアプリで)。だが、義光はあわてていた。警察に電話しては間に合わないので、直接奥島のスマホに電話することになる。このことは後々問題になってくる。
音声読み上げアプリなんて初めて知りました。私が遅れているだけなんだろうか。電化製品のお店でGPSが売ってることも知らなかったし。
すると、向こうから坂本が歩いてきた。反対側から、奥島と野崎も近づいてきた。金の受け渡しが行われるのだ。
坂本と奥島・野崎の目があった。坂本は以前、蒲池(赤池)のアパートで奥島と野崎に会っていた。瞬間的に固まる坂本。坂本に気づいた大津はベンチから立ち上がったが…
坂本の様子がおかしいと感じた大津は、振り向いたその先に刑事が立っていることに気づいた。
ヤバいと思った坂本は一目散に逃げる。自体に気づいた大津もあわてて走る。坂本を追う野崎。大津を追う奥島。
坂本には逃げられたが、大津は捕まえた。奥島さん、やりました!
マンションはもぬけの殻
大津が逮捕されたことを知った義光と祐子は大喜び。逮捕された瞬間を動画に撮影していた誰かがネットにアップしていたのだった。
坂本の行方は知れないが、大津が捕まったことでひと安心だ。だが、祐子の免許証のコピーを連中が持っている。取り戻す必要がある。
次の日、祐子がマンションに行くと、マンションはきれいさっぱり、何もなくなっていた。
奥島刑事、退職の日
ついに、奥島が退職する日が来てしまった。退職する前にどうしてもソラを捕まえたかったが、かなわなかった。奥島を見送りながら、「最後に何か言い残したことは?」と野崎が訪ねる。
奥島は少し黙って考えた末に、「後をよろしく」と言い残して去っていった。
ソラ、再び佐々木家へ
純一は相変わらず親とは口をきこうとしなかった。祐子を追い払うようにして学校へ向かう純一。
祐子はゴミを捨てるためにドアを開けると、そこに立っていたのはソラだった。
「久しぶり」
ソラが生きていた。祐子は、坂本たちに連れて行かれたソラがどうしていたか、とても心配していたのだ。ただ、なぜまた家に現れたのだろう?逃げる場所がないからだろうか?
次回も波乱の展開が予想される。
まだ蒲池(赤池)の遺体は池から上がってきていない。そちらも気になる。