3000万と共に佐々木家から姿を消したソラ。だが、祐子はソラのバッグにGPSを仕込んでいた。
一方、チンピラと警察はどちらもソラの行方をたどっていた。少しずつ佐々木家に近づきつつあるチンピラと警察。はたして祐子と義光はどうなる?
プロローグ:坂本のアンガーマネジメント
坂本がパソコンに向かっている。パソコンの画面からは、女の声が聞こえてくる。もしかして、坂本の上司か?いや、上司は大津のはずだが、もっと上か?
女の声「あなたに統率力がないってことなんじゃないですか?そうやって失敗をいつも人のせいにしてますけど」
坂本「俺はただ、きちんと仕事がしたいし、下にもそうしてほしいだけです。」
女の声「だから、それができていないから失態続きなんですよね?もっとやり方を考えないと。仕事で一番大事なのはきちんとした信頼関係を築くこと。あなた きっと 誰からも…」
坂本は女の話を最後まで聞かずに、怒りのあまり席を立った。坂本は、自分の高ぶった感情を抑えるために顔を洗った。洗いながらも、大津に降格を告げられたときのことを思い出した。パソコンに戻った坂本は、思い切りこぶしをガンガンとキーボードにたたきつけた。
坂本は、パソコンの向こうの女に怒鳴り続けた。怒りをぶちまけていた。
女は黙って坂本を見ていたが、次の瞬間手を叩いて笑った。
「はーい、お疲れ様でした!最初のころより断然良くなっています。だから あとは もう一回 基本に戻って6秒数える。怒りにとらわれすぎてはいけません。どうか、怒りを手放してください。では今日のカウンセリングは終了します」
坂本は「アンガーマネジメントのカウンセリング」を受けていたのだった。
このカウンセリングも、なんだか怪しすぎますねー
佐々木家の節約と純一のピアノ
佐々木家の祐子は、節約の鬼になっていた。3000万はもう無いし、家の貯金は義光が使い果たしてしまった。家にお金は残っていないのだ。
おまけに、義光は仕事を辞めてしまい、毎日ギターを弾いて音楽に明け暮れている。「仕事をしてよ」と頼む祐子。「これだって立派な仕事だ」と義光も負けてはいない。
「ピアノ、弾いていい?」と純一が部屋にやってきた。今年の合唱コンクールで、ピアノをどうしても弾きたいという純一。そのために毎日課題曲の伴奏を一生懸命練習しているようだ。
張り込み
野崎と奥島は張り込みをしていた。少しでも、逃げた女(ソラ)の行方を追うために行動しなければならない。
車の中で、「例えば」と野崎が話し始めた。
「事故にあったとき、佐々木夫妻が金を見つけ持ち逃げした」
そんなバカなと笑う奥島に、「これは刑事の勘です」と答える野崎。
二人は、お屋敷に入った強盗のグループを追っていた。その一人を張り込んでいる。本人が出てきたところを、刑事たちが捕まえた。
取り調べを受ける男。最初は野崎の厳しい取り調べに「知らない」と答えるばかりだったが、野崎が彼の心をほぐすように問いかけをする。犯人の男も、ついに白状することを決めた。
まるで「北風と太陽」ですね。北風の野崎さんと、太陽の奥島さん。この二人、いいコンビですね。
男は、奥島に見せられた写真を指差し、「この人、知ってます」と答えた。この人とはソラのことだった。
男は、ソラとの会話を思い出していた。男が「ソラさんはいつまでこの仕事をするつもりなんですか」と聞いたとき、ソラは「取られたものを取り返すまで」と答えたのだった。
はたして、この意味は?
ソラ、実家へ戻る
ソラは実家へ帰ってきた。迷惑そうな母にの前でバッグを開けて、中の札束を見せた。
ソラは、母が喜んでくれると思ったのだが、母は「いらない」とそっけなく答えた。正攻法じゃ手に入らない、だから仕方なかったんだと言うソラに、「一度でいいから正しいことをしてくれ」と母は願った。
母が金をどうしても受け取らないことが分かったので、ソラはまたバッグを抱えて家を出ることになった。
見つかった蒲池の車
ついに長田が蒲池の車を発見した。車には木の枝がかけられ、隠されていた。
蒲池はどこへ行ってしまったんだろう。この車はレンタカーだ。返しにいったほうがよい。蒲池は最後まで裏切るようなそぶりはなかった。坂本はそれを聞いて、どうにも解せないものがあった。
長田「見つけたらどうするんですか?」
坂本「あそこに沈める」
坂本は目の前に広がる湖をじっと見つめた。
車の中で、長田はくしゃくしゃになった紙を見つけた。その紙を見て仰天した。
「ボク、この人、会いました」
坂本は、事件と祐子の接点を見つけてしまった。そして、佐々木家の住所が坂本の知るところとなった。
湖から上がった遺体は?
湖から遺体が上がった。警察が出動する。刑事がシートを開けて顔を見てみる。「だいぶひどい状態です」と鑑識班。
ド座衛門の顔は「蒲池」だった。
ハッと目覚めるソラ。ソラは悪夢を見ていた。
果たして、池から上がった蒲池は、現実だったのか?はたまた、ソラの夢だったのか?
現実にしてはあまりにリアルだった。大勢の警官たちが出動していたし、見物人もいた。現実と空想は紙一重だ。
湖を見に行った祐子
祐子はどうしても蒲池のことが気になっていた。湖に沈んだ死体は2週間で上がってくるとソラが言っていた。その2週間が経った。祐子は出かけると純一に言うと、純一もついて行きたいということに。
湖は静かだった。ドングリを拾う純一に、なぜ今年は合唱コンクールでピアノの伴奏をしたいのか祐子が訪ねると、純一は答えた。
「お母さんとお父さんのためだよ。ピアノ、高かったんでしょう?ボクのために一生懸命働いて買ってくれたから。だから、ありがとう」
祐子はなんとも言えない気持ちになっていた。
そろそろ帰ろうかというときに、祐子はソラの姿を見かけた。純一に分からないように、祐子はソラを追いかけた。
ソラは「もうお金必要なくなった。明日、またここに来てくれれば、1000万渡す」と祐子に告げた。
蒲池の車がなくなっていることに気づいた二人。「警察かな」「もういい」
奥島刑事の家で、野崎と義光
義光は、奥島刑事の家に呼ばれていた。アンプを運ぶのを手伝ってほしいということだった。そこへ、野崎がやってきた。
義光は、奥島家の仏壇に手を合わせていた。息子の元樹の写真があった。奥島と義光は、何も知らない野崎に昔のことを話し始めた。
写真右の黄色いTシャツの男はシンというやつで、薬物で逮捕されてしまった。
真ん中の赤いTシャツの男が、息子の元樹だ。これから二人でがんばろうというときに、元樹が病気になり、亡くなってしまったのだった。
義光は、最近仕事を辞めて、また音楽の仕事に戻ろうとしていると打ち明けた。「ギターも買っちゃって、もうカミさんはカンカンですよ。毎日もやしばかり食わされてます」
そういって、3人で大笑いした。
コールセンターでキレてしまった祐子
祐子は、コールセンターの電話の相手にイラついていた。いつまでもネチネチと電話をしてくる男に向かって、怒りの声をぶちまけてしまった。決してやってはならないことだった。
上司は「自分に合った仕事を見つけたほうがいいんじゃないか」と言われるが、ひたすら謝る祐子。祐子は仕事を失うわけにはいかなかった。
同僚の舞にも「限界を超えちゃっているのではないですか」と言われる始末。「こんな仕事辞めちゃえば?仕事よりも精神のほうが大事ですよ」
祐子は舞に「こんな時給、このへんではなかなかないよ。私は舞ちゃんみたいに気楽じゃないんだから」と言い捨てて出ていった。
ソラの身元判明
野崎と奥島は行き詰っていた。どうしても、ソラの身元が割り出せなかった。そんな時、別の課の刑事がやってきた。以前、自分が担当していた強盗事件で気になることがあるという。
おばあさん一人暮らしの家に押し入り、3000万を強奪された。そのおばあさんはそれを苦にして自殺した。それ自体、自殺なので問題にはならなかったが、第一発見者が孫娘だった。
そういって、奥島たちに見せた写真がこれだ。孫娘は「ソラ」だった。
役に、立ちました?そういう刑事の顔を唖然と見つめる奥島と野崎。役に立ったなんてものではない。今まで探しに探していたソラの身元がようやく判明したのだ。
奥島と野崎は、さっそくソラの実家を訪ねた。
ソラの母親は、確かに自分の娘が訪ねてきたことは認めた。さらに、別の女性がソラのパスポートを取りに来たことも話した。残念ながら、母親は女の顔(祐子)をはっきりとは覚えていなかった。
1000万を受け取りに行った祐子
祐子は次の日、ソラに会いに湖へ出かけていった。1000万を受け取るために。
その場で、ソラがなぜこんなことをしたのかを初めて聞いた。
ひとしきり話した後、駅まで送ってくれと立ち上がったソラがハッとした顔をした。その先には、長田と坂本がいた。祐子の家を探し出した坂本は、祐子の後をつけていたのだった。
長田はソラを殴って金を取り上げた。
坂本も、祐子が持っていた1000万を無理矢理とりあげた。
ソラは長田に引きずられて連れて行かれた。
坂本は「それじゃあ、また改めてご連絡しますので。佐々木祐子さん、これで終わりじゃないですよ。きっちり落とし前つけてもらうんで」と祐子に言い残して立ち去っていった。
恐怖のあまり何も言葉にできない祐子。
奥島と野崎、純一に質問する
祐子が家にようやくたどりつくと、義光と純一が待ち構えていた。なんと、純一が合唱コンクールのピアノ伴奏に選ばれたそうだ。純一の笑顔ははちきれんばかりだった。
喜ぶ二人を前に、まだ先ほどの恐怖から立ち直れずにいた祐子。そこへ、チャイムが鳴り、奥島と野崎が訪ねてきた。
「今日は純一君に聞きたいことがあって」と言う。
刑事たちは、純一が学校から帰る時間を狙って会いに来たのだった。
野崎「ほんとにごめんね。純一君にとっては、あの事故のことは思い出したくないってことは分かってるんだけど。でももう一度聞かせて。あの日、あの事故の時バイクに乗った女の人は、ほんとに何も持っていなかった?」
純一は、一瞬なんのことか分からなかった。だが、すぐに理解した。両親はあのお金をまだ奥島さんに返していないのだと。
純一の目は涙でいっぱいになった。父と母のことを、両方見た。そして、刑事たちにこう言った。
「あの人は…何も持っていませんでした」
純一の目から、一粒の涙がこぼれ落ちた。
亀裂
家を出た後、奥島の表情は硬いままだった。奥島も、純一の表情と言葉から何かを察したようだった。
そして、純一も自分の部屋に逃げるように入っていった。祐子の「純一、話を聞いて!」という声を振り切って。
もう、この親は信じられない。純一の目はそう語っていた。