ドラマ【燕は戻ってこない】最終回:あらすじ・考察(どこよりも詳しく)

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基が訪ねてきたとき、リクは身体の異変に気付いた。シャーっと水が身体からこぼれ落ちている。床が濡れている。「破水」だ。破水は誰にでも起こり得る。ただちに出産だ。

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目次

命との出会い

出産は女性にとって人生の一大事。リクは出産を甘くみていた。

双子を出産

緊急帝王切開になった。自然分娩で産むはずだったが、想定外の出来事だ。リクは無力だった。「なぜこんなことに…」手術室に運ばれながら、リクは今起きていることを理解することができなかった。

目が覚めたときは、ベッドの中。リクは、そばにいた看護師さんに「子供は」と尋ねた。

「大丈夫ですよ、元気な赤ちゃんですよ。NICUにいます。」

NICUとは、新生児集中治療室のことです。早く生まれた赤ちゃん、小さく生まれた赤ちゃん、呼吸の助けが必要な赤ちゃん、心臓などに病気がある赤ちゃんたちが治療を受けたり、元気に大きく育つための部屋です。

「赤ちゃんは、大丈夫なんです?」

「はい、体重は少し少ないですが、大丈夫ですよ。お腹を縫合したばかりなので、安静にしていてくださいね。」

そう言って、看護師は立ち去った。

リクは赤ちゃんのことを心配していた。真っ先に、赤ちゃんのことを考えていたのだ。お腹にはも何もいない。安心感半分、喪失感半分だ。

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検査はしたんですか?

基と悠子がやってきた。二人とも、赤ちゃんがとてもかわいい、ありがとう、本当にありがとう、お疲れ様でしたと語りかけた。

「検査は、したんですか?」

基と悠子は顔を見合わせて、「はい、検査しました。正真正銘、オレの子でした。」

「そうですか、よかったですね。」

「じゃあ、僕たちは赤ちゃんを見てますから」そう言って、二人は病室を出ていった。喜びに満ち溢れている二人だった。

高熱と痛み

リクは、猛烈な痛みと高熱にうなされていた。

「大丈夫ですよ、よくあることですからね」と看護師さんは言ってくれるが、出産後にこれほどの苦痛をともなうとは、正直想像もしていなかった。

安堵感と喪失感。リクは一人残されたベッドで、泣いた。

帝王切開の傷跡

出産から三日が経った。

リリコがシュークリームを持って訪ねてきた。「傷口、どんな具合?」

「自分ではまだ見てないのでわかりません。ケロイド状態になって消えないこともあるって言ってました。」

「まるで捨て駒だね。悠子、赤ちゃんを見て、どうしても欲しくなったんだってさ。だから悠子、もっくん(基)と復縁するらしいよ。」

出産直前に、悠子はリキに「基とは復縁しない。だから、リキさんに基の妻でいてほしい。1年間は赤ちゃんの面倒を見てほしい。」と言っていたのに。なぜこうも言うことが変わるのだろう。

「あんたさ、腹立たないの?あの二人、いいとこ取りだよ。」

リキはまだ、自分の子という実感がわかなかった。まだ一度も赤ちゃんを見てもいなかったのだ。

「それは当たり前だよ。代理出産で、帝王切開でいきなり取り上げられたんだからさ。でも、実際に抱っこしてお乳あげたら、また違うんじゃないの?」

なんとなく投げやりな気持ちになっているリクに、リリコはカツを入れた。

「搾取されるだけ搾取されて。これから先、好きな人ができて、あんた、そのお腹どう説明すんの?あんた、これから自分の人生、どう生きていくつもり?」

リキはつぶやいた。「私、ただ人並みの生活がしたかっただけなのに。」

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搾乳

出産から5日目。

リクは授乳室に入っていった。搾乳の時間だ。赤ちゃんに直接お乳をあげられないので、搾乳機で絞るのだ。まるで牛だ。この作業は非常に痛くて、辛いものだ。搾り取ったお乳は哺乳瓶で赤ちゃんにあげてもらう。

帰りがけに、看護師さんが「草桶さん、赤ちゃん」と、赤ん坊のいる部屋を指さしたが、リクは赤ちゃんに会わずに病室へ戻った。あえて顔を見ないようにしたのだ。見ると、自分の感情がどうなってしまうのか、リクにもわからなかった。

悠子、書類を持参する

悠子は再度病室を訪ねてきた。リクは帝王切開のキズの激しい痛みに耐えかねていた。

悠子は、リクの身体を気遣ってはいるが、それ以上に赤ちゃんが生まれたことが嬉しくてたまらないようだった。喜びを隠しきれず、笑顔がはじけんばかりだった。美しいクリームイエローのニットが、彼女の表情をさらに柔らかく見せている。

悠子は、二人の名前が決まったと報告した。「男の子は悠人(ゆうじん)」「女の子は愛磨(えま)」

どちらも海外で活躍できるように配慮した名前だ。

リキが口を開いた。「悠子さん、結局どうするんですか?裕子さんが母親になるんですか?」

悠子は、口が重かった。いろいろ振り回して悪かったこと、あの子たちを見たら、これまで考えていたことなど全部吹っ飛んでしまったこと、だから基とは復縁するし、リキに1年間面倒見てほしいとお願いしたことは忘れてほしい、と。

なんて自分勝手なの?腹が立ってきた

さらに悠子は、2冊のファイルを取り出した。

1冊目は、離婚届。

2冊目は、誓約書だ。

「草桶家の子ども、草桶悠人と草桶愛磨には会いません。どうしても会いたい場合は、保護者に一報を入れると約束します」というものだった。

リキは困惑していた。話がどんどん変わり、自分の意志とは関係なく進んでいく。自分は何なんだろう。この人たちは、お腹を切ることもなく、痛みも伝わらない。リキはサインしなかった。

悠子は、基が遺伝子検査をしなかった事実を告白した。子供が誰の子であれ、自分たちの子として育てる決意をしてくれた。その基と、また家族になる。そう決意した悠子だった。

母になるということ

母になるとは、どういうことだろう。リクはまだわからなかった。

退院前夜

明日はいよいよ退院という前夜。二人の子どもたちがリキの部屋に連れてこられた。最後の夜は、親子として絆を深めるという意味だ。(赤ちゃんが退院するまでにはもう少しかかりそうだ。)

リキは初めて自分の子どもを見た。初めて触る、自分の子ども。

リクは、お腹の中にいる時からふたりに名前をつけていた。男の子は「ぐり」女の子は「ぐら」だ。

ぐり、ぐら。ぐり、ぐら。一人ずつ優しく触りながら、リクはポロポロと涙をこぼした。明日、この子たちは草桶家に連れていかれるのだ。

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2か月だけの育児

翌日、退院の日がやってきた。荷物を整理していると、草桶夫婦がやってきた。基は切り出した。

「今、役所に出生届を出してきました。ですが、子供の母親はリキさんということで、これは一生変わりません。それから、ひとつお願いが。あと2か月、大石さんの手元で育児を引き受けていただけないでしょうか。」

そばにいたリリコは反論した。「ちょっと、何それ?最初の2か月は母乳で育てるってことだよね。リキちゃんに乳母になれってこと?リキちゃん、絶対に断りな。」

リリコの怒りはおさまらなかった。

だが、リキは承諾したのだった。

赤ちゃんの成長

家での子育てが始まった。待ち構えていた杉本さんたちも、赤ちゃんの世話に大忙し。そして、喜んでいた。リクも、子供たちの成長を感じていた。赤ちゃんは笑うようになっていた。

別れの日が近づいている。リクは、子供たちに「ぐりとぐら」の絵本を読んであげた。

久しぶりに、テルからメールが来た。まだ貧乏なころ、一緒に働いていた仲間だ。テルにも子供ができた。

「私も生まれたよ」二人は、お互いの子どもの写真を見せあった。こんな他愛もないことが、リキには楽しく、それ以上に悲しかった。別れの日が近づいているから。

この子たちは、まだ知らない。本当の名前は、ぐりとぐらだということを。あんたたちを産んだ、母親がいたということを。私に残るのは、キズあとだけ。腹の傷を見るたびに、あんたたちのことを思い出すだろう。

決心

約束の2か月が近づいてきた。「私は決して、機械にはなれない」リキは思った。

リキは、離婚届にサインした。同意書にもサインした。そして…

リキの心は叫んでいた。私は、私でありたい、と。

準備は整った。リキは、ぐりを抱きかかえて言った。「ぐり、あんたは、草桶のおうちで可愛がられるから、大丈夫。バレエダンサーになったら、見に行くからね。」

次に、ぐらを抱き上げた。

あんたは、私と一緒に行こう。あなたの名前は、大石ぐら。クソみたいな世の中だけど、女同士、助け合って生きていこう。

リクは、同意書の「草桶愛磨」の部分に二重線を引いた。

リキは、ぐらを抱っこ紐にくくりつけた。用意はできた。

「ぐら、どこへ行こうか?沖縄でも行く?それとも、私が生まれた北海道?私たちはどこへでも行ける。もう誰にも縛られない。自由なんだよ。」

部屋を出るとき、振り返ってぐらを見た。この子は愛されて立派に育つだろう。悲しいけど、元気で。さようなら。また会う日まで。

リキは、ともすればこぼれ落ちそうになる涙をこらえて、家を出た。

リキは自由になった。自分は自分。誰のものでもない。誰にも縛られない。ぐらと一緒に生きていく。

【燕は戻ってこない】最終回:感想

この後、リキとぐらはどうなっただろうか。

法的に、リキはぐらの母親だ。そして、同意書の「草桶愛磨」には取り消し線を引いて印鑑まで押したので、草桶愛磨に会わない、という文言は消されている。

つまり、リキは法を犯してぐらをさらったのではなく、引き渡す義務もないということだ。(という解釈であっているだろうか。)

そもそも、日本では代理出産は違法であるから、リキに対して裁判をおこすことは考えられない。

二人の子どもを引き離すのは非常にかわいそうなことだが、結局のところ、人は幸せになるために生まれてくる。それならば、これから二人を幸せにするのは、親の責任だ。ぐら(悠人)の親は草桶夫婦、ぐら(愛磨)の場合はリキということになる。

最初はビジネスだった。貧困で、金のために子宮と卵子を提供したリク。お金を出して、それを買った草桶夫婦。淡々とした契約のはずだった。そのための契約書だった。だが、人間の感情は契約を上回った。

リクも、基も、悠子も、「これはビジネス」と割り切っていた。そのはずだった。だが、人は契約どおりには生きられない。心があるからだ。

そして、人が幸せになるためには、心が自由でなければならない。簡単そうで、実は一番難しい問題だ。

このドラマでは、人並みに生きるとはどういうことか、幸せになる、自由になるとはどういうことか、改めて考えさせられた。

ドラマは最終回を迎えたが、いつまでも心の中に残る名作となった。

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