両親の惨殺死体そ見てしまった功一と泰輔。果たして犯人は現れるのか。
犯行当時
1993年11月にさかのぼる。
功一、刑事に状況を話す
有明家から通報を受け、一番に到着した柏原。相棒の萩村が車で、傘でゴルフの真似事をしていた。萩原到着。
柏原と萩村は、事件直後に有明家へ行き、当時の状況を功一から聞いた。
流星群を見に行ったこと、親は反対していたこと、それは12時ころだったこと。その前に、両親が居間で話していて、母親が泣いていたようだったこと。
家を抜け出して流星を見て、家に戻ったのは夜中の2時頃だったこと。鍵が開いていて、居間が明るかったので、両親が起きていて怒っているんだろうと思ったこと。
まずいなと思ったが、居間から母親の足が見えたこと。さらに見ると、両親が血だらけで倒れていたこと。
柏原は、功一の話をじっと聞いていた。
泰輔はショックのあまり、何もしゃべることができなかった。二階のベッドでは、何も知らない静奈がすやすやと眠っていた。
就職活動をする静奈
会社を辞めた静奈は、就職活動をしていた。なかなか採用してくれる会社が見つからない。
静奈は、元上司の「高山」をどうしても許せなかった。自分を「地味」と決めつけられ、顔にポストイットまで貼られたのだ。
どうしても高山に復讐したい静奈は、功一にまた何かシナリオを書いてほしいと頼む。変装すれば気が付かれないから、何かだます手口を教えてほしいと。
実は静奈は、面接に行った化粧品会社でド派手なメイクをされた。泰輔の働くDVD店でバッタリと高山に出くわしたのだが、高山は全く静奈に気づかなかったのだ。それどころか、功一も言われるまで静奈とは気づかなかった。
功一は、「ちゃんと働いて、いい人を結婚して幸せな生活をすることが、彼への一番の復讐になるよ」と言ったが、静奈は彼の優等生的な答えに憤慨し、帰ってしまう。
謎の女登場
静奈と泰輔が帰ると、店の客の女が突然、「あんた、間違ってないよ!」と客席から声をかけた、「正しいよ、あんた!」と功一の近くに寄って来た。「誰ですか?」
この女はサギ(中島美嘉)。また出てくるので乞うご期待。今のところは謎多き女。
静奈には言わないでおこう
両親が殺された翌朝、警察の人たちが功一に「静奈ちゃんにはご両親のことを正直に言うのはあまりにもかわいそうだから、言わないほうがいいのでは?」と相談があり、功一もうなずいた。
その時、泰輔が二階から降りてきた。ショックのあまり口がきけなかったのだが、しゃべることができるようになったのだ。
さっそく、泰輔から男の顔を聞き、似顔絵を作り始めた。あの夜、家から走って逃げた男を見たのは泰輔しかいなかったからだ。
バケツにささった傘
「どこか、変わったところはない?なんでもいいから、気づいたことがあれば。」刑事が功一と泰輔に聞いた。
見ると、バケツに傘がささっている。「あの傘は、うちのじゃない。」
どこにでもあるビニール傘だった。
「あのバケツは、よく使うんだ。前に、泰輔があそこに傘を入れたらすごく怒られたんだ。だから、うちの人間はあそこに傘なんか入れない。」
似顔絵に似た男
話は現在に戻る。時効まで残り3か月。柏原はじっと男の似顔絵を見ていた。そのとき、萩原が走ってきた。
「実は、この男に関する有力な情報が上がってきたんです。有明功一に連絡取れますか?」
二人は功一の働くカレー店へ向かった。
「だから弟とは連絡も取ってないし、会っていません。」功一はそっけなく答えた。
警察をあてにしていない功一は、犯人を自分たちの手で探すつもりだったのだ。
「複数の情報があったんだ。川崎の馬券売り場と、パチンコ屋。」
「もう14年も前ですよ。顔も変わっちゃってるでしょう。」功一は全く乗ってこない。
「事件の前後は、横須賀に住んでた。なんとかなんない?顔見て違うって言われれば、僕たちもあきらめつくんだけど。」
横須賀と聞いて一瞬功一の動きが止まったように見えたが、やはり首を縦にふらなかった。
自分たちで探しに行くんだ
功一は静奈と泰輔のアパートに寄り、似た男の情報を話した。
功一は、犯人はどうしても自分たちの手で捕まえたいと言う。泰輔は、もう早く忘れたい、いつまで遺族でいなきゃならないのか、自分たちは遺族だから笑うこともできないのかと言う。
「静香はどう思う?」静香は答えた。「私たちがこんなに苦しんでいるのに、犯人がのうのうと暮らしているのは許せない。」
それを聞いて、彼らは行動することにした。
川崎の馬券売り場やパチンコ屋で、犯人の似顔絵を見せながら聞き込みをしたが、まったく手がかりはない。
「あのスナックでバーテンやってるわよ」という情報を聞きつけ、行ってみたらただの別人だった。
疲れた3人は、ファミレスで夕食タイムだ。テーブルのナプキンで鶴を折る静奈を見て、功一は昔のことを思い出していた。
折り紙で鶴を折る(思い出)
静奈は、折り紙で鶴を折っていた。「これ、病院のお父さんとお母さんにあげるの。」
功一も泰輔も返事ができなかった。
「しー、よく聞け。ママとお父さん、死んじゃったんだ。もう会えないんだ。悪いやつに殺されたんだ。」
「うそだ、うそだ、お兄ちゃんなんて嫌いだ!」そう言って、号泣する静奈だった。
ドル建て債券
ふと、ファミレスの後ろの席から、男が夫婦らしい男女に金融商品の説明をしているのが聞こえてきた。
「ドル建て債券」
功一は、あることを思いついた。
またシナリオでしょうか?
高山に仕掛けられるか?
功一は、静奈の敵、元上司の高山への復讐を考えていた。静奈が近づき、泰輔が営業マンになって高山から金をだまし取るという作戦だ。
静奈は「私、自信ない。どうしても高山じゃなきゃダメ?」と聞くと、功一が答えた。
「当たり前だろ。見ず知らずの人から金をだまし取るなんて、有明スリーのポリシーに反するだろ。」
「有明スリー?なにそれ?」「ダサい名前。」「まさか、私たちのことじゃないよね?」
功一はあわてて「まさか、まさか」と否定したが…その時高山から静奈にメールが。
静奈は探りを入れるために、高山に「ドル建て債券って知ってる?」と尋ねたのだが、高山からの返事は「どうせ詐欺だろ」だった。
やっぱりダメか。高山は投資マニアだから。
部屋を後にした功一は、道端のゴミバケツにある物を捨てた。それは…
「アリアケ3」ってなに??
ハヤシライス男の話
功一が店に行くと、例のハヤシライス男がいた。彼は毎日ハヤシライスを食べ歩いていた。なかなか本物のハヤシライスに出会ないと、ハヤシライス談義を始めた。
功一は、男の話を聞きながら、自分の心が少しずつハヤシライスに傾いていくのを感じていた。
功一、ハヤシライスを復活させる
功一は家に帰って、一冊のノートを取り出した。父が書いたハヤシライスのレシピが書いてあるノートである。
このノートは、父の渾身の力作である。生前、このノートとともに、父からハヤシライスの作り方を一から十まで教わったことがあった。野菜の切り方からソースの作り方まで。最後はとろ火で5時間煮込むのだ。誰も真似ができない、秘伝のハヤシライス。
功一は、これまで心の奥底にしまっておいたハヤシライスを、また作ることにした。丁寧に、丁寧に。
翌日、できあがったハヤシライスを泰輔と静奈に食べてもらった。
3人とも、昔功一が初めて作ったオムライスを食べたときのことを思い出していた。
懐かしく、悲しく、ほろにがい思い出のハヤシライスだ。だが、父の作ったハヤシライスと同じ味だ。
「おいしい!お父さんの味だ。」「うん、うまい。また作ってくれ」
功一は満足そうに「うん、また作る」と二人に約束した。
その時だった。静奈の携帯が鳴った。
「うっそ!高山入院したって。」
新しいシナリオの始まりである。
妄想係長「高山久伸」の話
妄想係長(またの名をポストイット)高山の話、はじまりはじまり。
高山係長、自分を語る
私は高山久伸。一流企業係長2年目だ。だが、それだけではない。オレの目は、常に世界に向いている。先月辞めたOLからも、最近メールが頻繁に来る。だが、オレはすぐ返すことはしない。なぜなら、俺はドSだからだ。
有明静奈に変身。地味ながら、割とタイプだ。何度か映画や食事に誘ったが、乗ってこなかった。
ドル建て債券を聞いてきた。オレは「どうせ詐欺だろ」と返信した。あの女がドMなら、きっと悶絶するだろう。だが、いつになってもあの女からメールが来ない。
なぜだ?なぜだ?なぜメールが来ない?こっちから送ってみるか?いや、要件がない。
そんなことを考えていたら、オレとしたことが!ジムで重い円盤を足の上に落としてしまった!
足の甲を骨折。全治2か月。1週間入院。
静奈からはメールも来ない。見舞いにも来ない。どういうことだ。
「高山さん、病室では携帯電話は禁止ですよ。」
看護婦に言われた。なんと!有明静奈に超似ている!しかし、彼女ほど地味ではない。「南田」と書いてある。やっぱり別人だ。超タイプだ!あのひんやりとした眼差し。たまらん!
それ以来ドSな私は、南田さんの前ではドMになり、妄想に取りつかれた。
すごい妄想だ…
こうして私は南田志保と連絡をとり、退院してからも映画や食事に行く間柄になった。今日もまた…
南田さんが微笑んでこちらに向かって手を振っている。と思ったら…前に座っているこの男は誰だ?
「学生時代の先輩でね、高山さんのことを話したら、ぜひ話が聞きたいって。」
銀行員に扮する泰輔は、高山に名刺を渡した。
「投資にお詳しいとお聞きしまして、ぜひお話を伺いたいと。」
「ご存じでしょうか。今話題の、ドル建て債券。」
え?という表情の高山だった。
第3話に続く…