2024年7月、Netflixで配信スタート直後から絶賛の嵐が吹き荒れているドラマ「地面師たち」。綾野剛、豊川悦治、ピエール瀧など、豪華キャストを配する中で、異彩を放っているのがチンピラの「オロチ」を演じている芸人アントニーです。
オロチはどんな役なのか、そしてアントニーはなぜこの世界的なドラマに出演することになったのか、解説していきます。
チンピラの「オロチ」はどんな役か
地面師の一人、竹下(北村一輝)は、基本的に「地上げ屋」と言ってもよいでしょう。主な仕事としては、土地や物件の情報を仕入れ、地主の情報のリサーチ・土地価格の評定などをする情報屋です。
重度の薬物中毒者で、ハリソンルームで情報交換をしているときもハイな状態の時があり、仲間を不安がらせます。そんな竹下が子分として使っているのがオロチ(アントニー)です。
オロチは「何でも屋」的な立ち位置で竹下からこき使われ、荒っぽく扱われています。根は優しいオロチですが、いかんせん頭が悪く、やることなすことミスしがちで、仲間の足を引っ張ります。
「オレも地面師になりたいんっすよね」と拓海(綾野剛)に相談するが、「やめておいたほうがいい」とアドバイスされます。
オロチは重要な場面にたびたび登場し、そのたびに存在感を増していきます。
なぜアントニーがオロチ役に抜擢されたのか
ここからは、大根仁監督と、元テレビ東京プロデューサーの佐久間さん、そして綾野剛さんの「地面師アフタートーク」での発言から、アントニーに関するコメントをまとめます。
大根監督のコメント:
「作品を作っていく中で、馴染みの俳優さんたちを入れつつ、初めての人との楽しみもあるんですよ。ここでこういう人を入れたいなっていう。
そういう意味では、オロチを演じたアントニーってね。まあ、芸人だからそっちのイメージなんだけれども、アントニーはこういった役でいつか絶対に使いたいな、と思っていた。
まあ、正直に言うと、半ばちょっと反対されたキャスティングではありました。みんな、アントニーは芸人として見慣れているので、『できますかね?』という感じだった。
でも、そこはチャレンジというか、自分の中で『絶対いけるな』と思ったんですね。
昔から、芸人キャパ、コントですからね、芝居は絶対にできるんですよ。しかも独特の「間」とかセリフの言い回しとか、声のトーンとか、一般の役者とはちょっと違う感じで来てくれるんで、そういう意味で、アントニーはすごくフレッシュでしたね。
演技のスキルで言えば、正直そんなにうまくはないんですよ。でも、それを超える存在感というかね。だってあんなやつ、いないもんね。」
佐久間プロデューサーのコメント:
アントニー扮するオロチは、信用できないんだけれども、ちょっと愛らしいというか、ああいったキャラクターって、なかなか芸人じゃないと出せないかもしれないですね。
綾野剛はアントニーをどう見ていたのか
綾野剛のコメント:
アントニーさんは、間合いがすごく面白かったですね。僕はけっこう一緒にアントニーさんとやることが多かったんで。
芝居って、たいがい「つばぜり合い」ができている状態が気持ちいいって思いがちなんですけど、僕もアントニーさんも思いっきり大きな空振りをしまくっているっていう。決してかみ合ってはいないけれど、なぜか空振りだけはかみあってるっていう、そういう面白さがあって。
あ、この間でくるのかって。一瞬「セリフ忘れたのかな?」と思ったら飛んでくるとか。「最高!」と思いながらやってましたね。」
佐久間プロデューサー「じゃあ、やっぱり役者さんをずっとやってこられた方とは、間が違うんですね。」
綾野剛「違いますね。もちろん、役者さんひとり一人みんな違うんですけれども、特にアントニーさんは違って。最高に(血が)たぎりましたね。ワクワクしました。
アントニーさんとやるときは、むしろ楽しんでできるシーンだと思ってたのに、一番集中しなきゃいけないかもしれないっていう。」
佐久間プロデューサー「ボールのこぼれ球がどこに来るかわかんないっていう…(笑)なるほど、そういう感じですね。」
大根監督「アントニーはね、『豊川さんと絡めるのはほんと嬉しい』っていうことだったんだけど、ひと言やりとりしただけで、あっという間に(笑)」
佐久間プロデューサー「でも、僕は何も知らないで見てたんですけど、アントニーがあんなに大事な役だとは知らなくて。あれ、まだ出てくるんだって。それはびっくりしました」
芸人アントニーは、「地面師たち」で役者としての第一歩を大成功で収めました。バラエティでは自身の面白ネタで笑いをふりまいているアントニーですが、今後は芸人と役者、二足の草鞋でますます私たちを楽しませてくれるでしょう。