【宙わたる教室】第9話:恐竜少年の仮説 あらすじ・どこよりも分かりやすく

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あと少しで成功が見えていた、科学部の火星クレーター再現実験は、暗礁に乗り上げていた。岳人の昔の悪仲間の登場、アンジェラのケガと実験の頓挫で、科学部は空中分解寸前だった。

どうなるか、科学部。学会への提出まで、あと少しだ。

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目次

プロローグ

科学部の実験室で、藤竹は壊れた実験部品を拾い上げて一人考えていた。長嶺から言われた言葉が頭から離れなかった。

「本当にいいのかね、これで。あの子を本気にさせて。この次に挫折したら、這い上がれないぞ」

藤竹は、岳人に期待しすぎていたのだろうか。自分が岳人を助けるつもりが、逆に彼を苦しめることになっていたのか。

藤竹の前に、初めて壁が現れていた。

バラバラになった科学部

岳人はずっと学校に来ていなかった。「私のせいよ」とアンジェラ。アンジェラが脚を実験用具にぶつけてしまったせいで、器具が壊れてしまったからだ。長嶺が「それは違うよ」と言うが、アンジェラはあきらめ顔で帰宅する。

佳純も、また保健室登校に戻ってしまった。「また元に戻ってしまった」とつぶやく佳純に、看護教師の佐久間(木村文乃)は「いいんだよ、戻ったって。急がなくていいの。私はいつもここにいるから」と寄り添っていた。

藤竹は、木内先生に誘われて一杯飲みに行った。

木内「柳田、また来なくなりましたね。でも、藤竹先生はよくやりましたよ」

藤竹「いえ、ボクは別に何も」

木内「藤竹先生は、ここへ来る前に研究者として働いていたんですよね」

藤竹「はい、少しだけアリゾナに。その前は、日本で助教をしてました。そこを辞めることになって、アメリカに」

木内「より高みを目指したわけですか?」

藤竹「いや、そうじゃないです。自分のいた場所に失望したんです」

藤竹はは少しずつ話を始めた。

藤竹の過去

藤竹のいた研究室は、太陽系の惑星探査が専門だった。当時は、新しいタイプの中間赤外カメラの開発に取り組んでいた。

教授の共同研究者に、地元の高専の准教授がいて、その高専から一人の学生が卒業研究として開発に参加していた。

その学生は金井君と言って、毎日徹夜をするほど研究に没頭していた。

金井は、研究開発をとても楽しそうに取り組んでいた。「これ見てください!」と、朝から藤竹をつかまえて試験結果を見てもらっている。

「お、これいいね!」と金井の見せてくれたデータに喜びの声を上げる藤竹。「こんだけ試験データそろってたら、こっちも分析やりがいあるよ」

「本当ですか?よかったー」

「石神先生も、これで論文の執筆にとりかかれると思うよ」と藤竹。

金井に、卒業後の進路は決まっているのかと聞くと、彼は「実は、名京大への3年次編入を目指してて」と答えた。

名京大は藤竹の通う大学だ。

小さい頃から惑星の探査に関わることが夢だったという金井。できれば、石神先生の研究室に入りたいと言う。

「石神先生の論文に、ボクの名前も載りますかね」

「載るよ、当たり前でしょ」と藤竹。それを聞いて、金井はあふれんばかりの笑顔になった。

だが、石神教授の論文には、金井の名前はなかった。

藤竹は石神教授に直談判に行った。金井の名前はなぜないのか。金井の試験データが無ければ、実験は成功していなかった。

石神は言った。「大学院生ならともかく、高専の学生の名前など入れたら、論文の格が下がります」

高専とは

技術系の専門家を養成する特別な国立高校。5年制であり、大学への編入も可能。

「科学の前では誰でも平等のはずです」と抗議する藤竹に、石神は「あなたにもそのうち分かりますよ」と言い捨てて立ち去った。

高専の准教授にも抗議したが、準教授は「金井は研究者は無理だ。あまり彼をその気にさせないでほしい。論文に名前など載ったらその気になってしまう。彼のためにならない」と言うのだった。

研究室が実験成功で拍手と喝采に湧く外で、金井は一人ぼっちで座っていた。結局金井は名京大の編入試験を受けることなく、学校が斡旋する会社に就職したそうだ。

藤竹は、論文から自分の名前を外してもらって、研究室を辞めた。それは研究者のキャリアを捨てることと同じだったが、藤竹にはどうしても許せなかったのだ。

藤竹は木内に話ながら、岳人のことを考えていた。「あきらめるのって、つれえんだよな」という彼の言葉を思い出していた。

科学部の実験室へ

佳純の足は、科学部へ向かっていた。ドアを開けると長嶺が佳純の書いたノートを見返していた。

「それなりに、やってきたんだな、われわれも」

そこへ、アンジェラもやって来た。みんな、家に帰っても頭は実験のことばかり考えていたのだ。

「あとは、部長ですね」

それは岳人も同じだった。家で実験データを見たり、部屋に飾ってある火星の写真を眺めたりしていた。岳人もずっと実験のことを考えていたのだ。

藤竹は井之瀬に会いに

藤竹は、井之瀬先生に会いに来ていた。

藤竹は井之瀬先生に、教師を辞めようかと思っている、研究も続けていくかどうか、迷っていると打ち明けた。

藤竹は、石神教授の考え方にどうしても納得がいかなかったことを打ち明けた。アリゾナでは、日本とは真逆だった。まだ何者でもない若者が、研究者と同等に研究に没頭していた。

日本でも同じことができれば、それを証明できれば、まだ科学の力を信じられると思った。

だが、じっさいに自分がやったことと言えば、傷つくことに人一倍敏感な生徒を、もっと傷つけることだった。

彼の情熱と好奇心をもてあそんで…結果的に科学部も壊れた。何ひとつ証明できなかった自分は、教師としても研究者としても失格だ。

「本当にそれでいいのか?」と井之瀬先生は藤竹に問うた。

岳人の決意

岳人は空に浮かんだ虹を見ていた。科学部に入ったときのことを思いだしていた。

「がっくん!」と呼ぶ声。友達の朴だった。朴はばあちゃんの店を手伝っていた。岳人を見て、やりたいことがあるっていいなと思っていた朴は、もう一度がんばってみると心に決めていた。

科学部の部員は、岳人のアパートを訪ねてみた。ブザーを押しても応答がない。

その時、岳人は昔の悪仲間、三浦のいるたまり場を訪れていた。

「おかえり、ガッくん」と酒を飲みながら岳人を迎える三浦。

三浦と対峙する岳人。

科学実験室に集合

藤竹は、科学部員に連絡し、実験室への集合をかけていた。岳人以外は全員そろっている。藤竹は、彼らに話さなければならないことがあった。

岳人はもう来ないのか。岳人が不在のまま、藤竹は話し始めた。

「この科学部を作ったのは、ボクの実験のためでした」

どういうことかと、いぶかる部員たち。

子どものころから科学に興味を持っていたこと。科学の前では皆平等だと思っていたが、現実は違った。どれだけ優秀でも、上が切り捨てたらそれで終わりの世界。

そんな世界が嫌でアメリカに行った。もう一度、研究者としての自分を見つめなおすために。そんなときに出会ったのが、ロビンという少年だった。

ロビンは、ナバホ族というアメリカ先住民の居住地に、家族と暮らしていた。

ロビンの住むトレーラーハウスはすき間だらけで、冬は寒い。ロビンは、廃材で作ったものを組み合わせて暖房装置を作った。作りはシンプルだったが、太陽エネルギーとラジエーターを用いた装置は、うなるほど素晴らしいものだった。

その発明を知った藤竹の友人は、ロビンの技術を月の友人基地の蓄熱技術に応用できないかと考えた。

そして藤竹は考えた。科学とは無縁の皆さんにチャンスを与えて、どんな結果が出るのか見ていたのだ。だが、科学部の部員は藤竹の予想を大きく超えて素晴らしい結果を見せてくれた。

「ボクは、君たちに夢中になっていた。君たちがくじけそうになるたびに、『もっともっと』と言ってその気にさせた。そのせいで柳田君を傷つけて…僕の責任です。本当に、申し訳ありません」

藤竹が深々と頭を下げたそのとき、勢いよく扉が開いて岳人が飛び込んできた。

「ふざけんなよ!さっきから聞いてりゃなんなんだよ!実験しただの利用しただのって」

岳人は藤竹につかみかかって行った。岳人の顔は赤く腫れていた。

「おれたちを利用して失敗だったって言うのかよ?勝手に終わらせてんじゃねえよ!」と叫ぶ岳人。

岳人は、アンジェラに「この前はひどいことを言って悪かった」と頭を下げた。佳純にも怖い目に遭わせて悪かったと謝った。

アンジェラは、岳人の傷ついた顔を心配する。「大丈夫だ。あいつらはもう来ねえから」

「そうか」と長嶺。長嶺は、岳人が昔の悪い仲間と決別してきたことを感じ取っていた。

岳人は藤竹に向かった。「科学部があんたの実験かどうかなんてどうでもいい。俺たちは、クレーターの実験をやりたい。それだけだ」

「あんたはどうなんだよ?ここはあきらめたものを取り戻す場所じゃねえのかよ?あんたの本当の気持ちを聞かせてくれよ!」

皆の気持ちは、岳人と同じだった。藤竹の本当の気持ちを聞きたかった。

藤竹は、声を絞り出しながら言った。「あきらめたくない」

皆といるのが楽しかった。科学がこんなにも楽しいものだと、感じさせてもらえた。

「君たちと、もっともっと、新しい景色が見たい」

「だったらやるしかねえじゃん!」という岳人に、他の部員たちもうなずく。

「先生のやろうとしていたのは、今まで誰もやったことのない実験ですよね。だから、失敗なんてないんです」と佳純。

みんな「そうだそうだ」とうなずく。全員笑顔になっていた。

「あんたの仮説、オレたちが証明してやるよ、だから俺たちをもっとその気にさせろ」と岳人。

藤竹を含め、全員もう一度やる気になった科学部。締め切りまであと10日もなかった。

三浦の手

三浦は、自分のこぶしをじっと眺めていた。赤く傷ついていた。

「気が済むまで殴れ。そのかわり、もう科学部には関わるな」と岳人は三浦に言った。

岳人は三浦に殴られても、決して殴り返さなかった。

三浦は悔しかった。いつも三浦と朴、岳人は3人一緒だったのに、なぜ岳人だけ先に行ってしまうのか。自分だけ置いて行かれる気になった三浦は寂しかったのだ。

岳人は、「オレは変わってねえよ。だとしても、一緒に過ごした時間がなくなるわけじゃねえだろ?それがダチってもんだろ?」と三浦に問いかけた。

三浦は岳人を殴った自分の手を、じっと見つめていた。

「違うところで生きていても、それを認め合いながら生きていくのがダチってもんじゃねえのかよ」という岳人の言葉が鋭く三浦の心に刺さっていた。

想定外の結果が出てからが本番だ

科学部には、元の活気が戻っていた。実験は着々と進み、岳人と長嶺は実験装置の改良を重ね、アンジェラと佳純は火星の土をさらに研究していた。

彼らを見ながら、藤竹は最後に井之瀬先生に言われたことを思い出していた。

「それにね、私にはまだ終わったようには思えないんだよ。実験ていうのはね、想定外の結果が出てからが、本番だよ」

アンジェラ「行くよ!3,2,1!」箱が勢いよく落下した。

早速、今の様子を画像で見てみる藤竹と部員たち。

果たして、結果は?

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