映画「ヤクザと家族 The Family」は、ただの極道映画ではない。3つの時代を生き抜いた、壮絶な男たちの生きざまを描いた問題作だ。
重要人物として登場する、対立する組の若頭「川山」を演じるのが駿河太郎だ。「地面師たち」でもマイクホームズの社長として「だまされ役」にまわった駿河太郎。
この記事では、「ヤクザと家族」「地面師たち」で、共通する「ある部分」について述べる。さらに、演者の駿河太郎の演技力を解説する。
「ヤクザと家族」川井礼二(若頭)はどんな役?
映画「ヤクザと家族」の主演は「山本賢治」を演じる「綾野剛」。山本は柴咲組(しばさきぐみ)の構成員。のちに若頭補佐まで登りつめる。組長の柴咲は「舘ひろし」が演じる。
極道の話には、「組同士の抗争」が必ずついてくる。シマをめぐって柴咲組に対立するのが、侠葉会(きょうようかい)だ。会長の加藤を演じるのは「豊原功補」。若頭が「川山礼二」(駿河太郎)だ。
まず、会長の加藤はたたずまいすらも「恐怖」を感じる。静かな恐怖だ。侠葉会を束ねる統率力と、一度目をつけられたら逃げられない怖さがある。
一方、写真右の川山は、「ボスにくっついているただのチンピラ」感がある。頭はそれほど良くもなく、思い切りがよいだけで、「喧嘩上等」が服を着て歩いている感がある。
「オラオラ」感だけで生きているような男で、「鉄砲玉」にはなれるかもしれないが、組を束ねる力は未来永劫ないだろう。
対する山本(綾野剛)は一匹狼で十分生きていけるが、川山は到底一人では生きていけない。トップにはなれないが、ナンバー2という重要な立ち位置にもふさわしくない(が、党の川山は自分のことをナンバー2だと思っている)。
川山は女癖も悪く、最後はその「悪い癖」がたたって、殺られてしまう。ヤクザとしては、非常にみっともない最期だったと言えよう。
ドラマ「地面師たち」でも似たような役
なりすましの不動産詐欺事件「地面師たち」には、ヤクザこそ出てこないが(暴対法で締め付けが強くなっているので、ヤクザは登場させたくてもできないだろう)、駿河太郎が演じる「マイクホームズの社長 真木」は、「ヤクザと家族」の「川山」と似たような部分があるので、観ていて驚いた。
新興不動産企業の「マイクホームズ」社長の真木は、投資用マンションの開発と販売を手掛けている。大きな物件を手掛け、早く大手デベロッパーと肩を並べたいと焦っていた。
その「焦り」が10億という大型詐欺に引っかかる理由でもあった。取引相手の後藤(ピエール瀧)に、会社が小さいことをバカにされ、その悔しさと焦りから、ぜひうちに売ってほしいと下手に出てしまったのが運の尽きだった。
この「小物感」がヤクザと家族の川井に重なってならない。さらに、川井同様、真木も女癖が悪い。不動産取引が無事に終了し(実は詐欺なのだが)、ホッとして気持ちが大きくなり、グラビアアイドルと不倫して週刊誌にすっぱ抜かれる。
やることがすべて小さすぎることも、川井と真木の共通点だ。
「地面師たち」の真木も、「ヤクザと家族」の川井も、小物ならではの負け方をする。負け方がみっともないので、哀れとしか言いようがない。
男らしく(というと今の世の中怒られるかな)、正々堂々と戦って負けたのなら本人も観る側も納得がいくだろうが、負けっぷりが哀れなので同情すら覚える。
駿河太郎の演技力は半端ない
さて、ここまで役柄の川井と真木をディスってしまったような形になったが、実はこういう役が一番難しい。組長の親分とか、主役級のヒーロー級などは、思いっきり振り切った演技もできるだろう。
「地面師たち」も「ヤクザと家族」も、偶然ですが、綾野剛が主演ですね。今気づきました。(って、ずいぶん遅いですね)
駿河太郎が「小物」であるとは全く思っていません。ただ、彼はそういう役が非常にうまい。
理由として、やっぱり「顔」かもしれません。彼の人となりは全く知りませんが、隠しきれない人の良さが顔に出ています。鶴瓶の息子さんであることも大きいでしょう。DNAは隠せませんね。
そんなわけで、彼が出てくると「最期は負けるかもな」と思ってしまうのは私だけでしょうか。どうしても、極悪になり切れない、そんな表情が駿河太郎はめっちゃ得意です。
私としては、いつか「組長」や「銀行の頭取」など、誰もが認めるトップの役を演じてほしいなと思っています。
駿河太郎は1978年生まれ、現在46歳です。童顔なんですね!!!
どうしても「かわいい」と思ってしまうのは私だけでしょうか。本人は嫌がるかもしれませんが、彼が悪役をやってもどうしても憎めないんですよね。あなたはどうですか?